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「スピンオフ」とは、既存の作品(本編)から別の作品が派生することを言います。
具体的には、本編の主人公以外のキャラクターが主人公となって
「外伝的作品」が展開されることを言います。
日本のスピンオフ作品では、『交渉人 真下正義』や『容疑者 室井慎次』など
多数のスピンオフを展開したドラマ『踊る大捜査線』シリーズが有名かと思います。
本編のサブキャラクターが魅力的な場合、その魅力あるサブキャラをそのまま
主人公に据えることで、本編とは一味違った面白さを追求したり、、
本編を含めた作品の世界観に厚みをもたらすなど、さまざまなメリットがあります。
また、サブキャラのみならず、本編の「劇中劇」がスピンオフして
別の作品として成立する場合もあります。
(『げんしけん』⇒『くじびきアンバランス』,『OH!MYコンブ』⇒『へろへろくん』など)
本記事は、この「スピンオフ」作品について言及する記事となりますが、
似たような性質の以下分類の作品はスピンオフとは
分けて考えることとして、本記事ではスピンオフと定義しません。
★「クロスオーバー」
複数の独立したシリーズが一時的に一つのストーリーを共有する
(例:スーパーロボット大戦シリーズ など)
★「スターシステム」
キャラクターを俳優のように扱い、異なる作品中に様々な役柄で登場させる
(例:手塚治虫作品のヒゲオヤジ、タイムボカンシリーズの3人組 など)
★「シェアードワールド」
元作品と同一世界観・時間軸を舞台とするが、主人公は元作品に登場していない新キャラ
(例:『機動戦士ガンダム』に対する『機動戦士Zガンダム』など)
では、本題に入ります
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まずは、今最も勢いのあるスピンオフ作品のコミックを二篇紹介します。
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『魔法陣グルグル』で最も目立っていたオヤジ・「キタキタおやじ」を
主人公にした『舞勇伝キタキタ』です。
グルグル本編で異様な存在感を放ったキタキタおやじが
まさかの主人公化ということで、連載発表当時は衝撃的でした。
コミックスの帯にも、
ギャグファンタジーの金字塔「魔法陣グルグル」から、
よりによって、あのおやじがスピンオフ!
魔王さえも嫌がったあの踊りがここに復活!!
とかボロクソに書かれています。
それもそのはず。
グルグル本編においてのキタキタおやじは、キャラが濃すぎて
下手をするとストーリーをぶち壊しかねないほどの存在感を
示していたキャラなのです。
たまに出てきて、大暴れして帰って行くというのでちょうど良いような
こってりしたこのオヤジを主人公にするなど・・・
始まる前からストーリーが破綻すること間違いなしです。
そして、その予想通り『舞勇伝キタキタ』はおやじ中心の
破天荒ギャグで塗り固められた作品となっています。
ギャグ成分でみたらグルグルよりもはるかにパワーアップしてます。
おそるべし、キタキタおやじ!
その代わり、話の本筋よりおやじの存在感の方がすごすぎて
メインストーリーはあってもなくてもどうでも良い感じに。
濃すぎるキャラも考えものですな・・・。
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続いて紹介するのは、『地獄先生ぬ~べ~』のスピンオフ作品
『霊媒師いずな』です。
ぬ~べ~連載中期に登場し、圧倒的人気を得た女子中学生イタコのいずなが
女子高生となって主人公へ昇格しています。
物語のスタイルはぬ~べ~と同様に一話完結の怪異モノで、
霊との戦闘よりは霊に取り憑かれた人々の人間ドラマが
メインとなるところもぬ~べ~と共通しています。
ただ、ぬ~べ~が小学校で起こる怪異をメインに扱ってきたのに対し、
いずなでは現代社会に生きる大人たちに起こる怪異をメインに扱います。
必然、話はアダルティになり、(掲載誌も青年誌ですしね)
ぬ~べ~のときよりも遥かに過激なお色気シーンも多く挿入されます。
いずなはぬ~べ~登場時は未熟者まる出しの、半分ギャグ要員のような
キャラでしたが、この作品では大人の女性のような落ち着きを
見せています。(まだ少し未熟なところはありますが)
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この二篇に限らずですが、スピンオフで登場する本編のキャラは
なにもスピンオフで主人公となったキャラだけに限りません。
本編で脇を固めた懐かしのキャラが、ゲストや準レギュラーで
スピンオフ作品に登場することはよくあります。
これにはスピンオフ主人公と同様、本編で人気のあったキャラや
スピンオフ主人公と浅からぬ関係性のあるキャラが選ばれることが
多いように思います。
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『舞勇伝キタキタ』では、本編『グルグル』でもひときわ濃い存在感を
かもした風の精霊「ギップル」が、第5巻にて満を持して登場します。
お約束の「ふんどし」のくだりや、「クサァー!」のくだりを
ギップル初見のキタキタオリジナルキャラたちに見せつける様は、
本編登場キャラの重々しい貫禄を感じます。
なお、『キタキタ』にはギップルのほかにも、愛すべきザコキャラ
「タテジワネズミ」が登場しています。
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『霊媒師いずな』では、本編の主人公・ぬ~べ~のライバルキャラだった
「玉藻」が堂々の登場です。
登場巻も第9巻ということで、満を持したサプライズ登場でした。
それも、いずなが作中最大の「下げ」を経験した場面、
どん底の主人公を再び上昇させるような役割で現れるのです。
これは本編読者にとってかなり胸熱な展開だったのではないでしょうか。
このように、本編の重要脇キャラがスピンオフ作品に登場することは
読者を喜ばせ、作品を大いに盛り上げる効果があります。
では、脇キャラでここまで盛り上がるのだから、
いっそ本編の主人公をスピンオフ作品に登場させれば
作品としてさらなる盛り上がりも期待できるし、
最大級の読者サービスになるのでは?と、ちょっと思ってしまいます。
ですが、今や日本中に数あるスピンオフ作品には何故か
本編の主人公が大々的に登場している作品はほとんどありません。
まるで、スピンオフ作品には本編の主人公を登場させてはいけないという
暗黙のルールがあるかのように、各作品示し合わせたように
本編の主人公を登場させてはいないのです。
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上に紹介した二篇で見てみると、必ずしも本編の主人公が
まったく登場していないわけではありません。
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『キタキタ』では冒頭の伝説が語られる場面で、本編の主人公
「ニケ」「ククリ」二人の姿が描かれています。
ただし、「※画像は伝説上のものです」と注釈されており、
ニケ・ククリのビジュアルが出るのはこの場面が最後となります。
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『いずな』では、ぬ~べ~登場!?と思いきや、
テレビで放映されていたアニメの絵でした~というオチだったり、
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劇中のパチンコ「CR・ぬ~べ~」のキャラとして
登場したりはしています。
要は、二篇とも本編の主人公は
登場キャラクターとして物語には参加できていないのです。
これは他のスピンオフ作品でもほぼ共通していて、
たとえばドラマ『踊る大捜査線』シリーズからは多くのスピンオフ作品が
派生していますが、本編の主人公「青島俊作」はスピンオフ作品には
一切登場しません。
一体何故か?
理由はいくつか考えられます。
だいたいぱっと思いつくので、こんな感じでしょうか↓
1.スピンオフ主人公の活躍の場を食われてしまうから
2.本編主人公の物語は、本編ですでに完結しているから
3.スピンオフ作品の物語上、登場させる必要がない
まぁ、おもに1.の理由が大きいでしょうね。
「主人公」という立場は、作品を構成する要素として
読者の印象に占める割合が非常に大きいのです。
どんなに素晴らしいストーリーでも主人公に魅力がなかった場合、
読者にとってその作品は名作にはなり得ません。
そんな作品に占める比重の大きい主人公というキャラが
スピンオフ作品にまで出張ってきては、たとえ「元・主人公」
だとしても、本編の印象を引きずっている読者からすれば
スピンオフ主人公と同等、もしくはそれ以上に心を持っていかれる
ことになるでしょう。
下手をすると、スピンオフ作品の印象そのものも
本編の印象に塗り替えられてしまうかもしれません。
上の二篇にあてはめると、『霊媒師いずな』にぬ~べ~が本格的に
登場しちゃった場合、「怪異を解決する」というキャラの性質が
いずなと丸被りしてしまって、ぬ~べ~にいずなの役割を
持って行かれてしまう様が簡単に想像できます。
『舞勇伝キタキタ』の場合は、ニケ・ククリとキタキタおやじでは
キャラの性質がまったく異なるので、役割を食われる心配はありませんが、
ニケ・ククリの物語はすでに本編で綺麗に完結しているのです。
(ククリはニケに告白までして、グルグルも使えなくなっています)
せっかくの本編の綺麗なエンディングも、キタキタおやじ大暴走の
スピンオフギャグ漫画で後日談が語られることになったとしたら
蛇足もいいとこでしょう。
これは上記の理由2.にあたりますね。
理由3.については、そもそもスピンオフ作品が本編とジャンル違いの
物語だった場合とかですね。
その場合、スピンオフ作品に本編の主人公が登場する必然性はまったくありません。
『サイコメトラーEIJI』(ミステリ)⇒『クニミツの政』(政治)とかそうかな?
あと、『くじびきアンバランス』などの劇中劇モノもこれに当たります。
以上のような理由から、
スピンオフ作品に本編の主人公を登場させることは好ましくない
といえます。
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…なんてことをごちゃごちゃ書いてきましたが、
本編の主人公が堂々と活躍してるスピンオフ作品ありましたね。
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『とある科学の超電磁砲(レールガン)』!
電撃文庫の大人気ライトノベルですね。おなじく電撃文庫の
『とある魔術の禁書目録(インデックス)』のスピンオフとなります。
アニメ版の知識しかありませんが、ちょっと解説してみます。
ぜんぜん見当違いのこと言ってたらスミマセン。
『超電磁砲』には、本編の主人公・上条当麻さんが準主役級扱いで
堂々と登場しています。
これはモロに上の理由1.に抵触しそうなものですが、
なかなかどうして、そうはなっていません。
これは多分主人公の性別の問題で、スピンオフ主人公「御坂 美琴」は
女性の主人公であり、本編主人公・上条当麻さんに惚れています。
なので、上条さんの存在は『超電磁砲』にとっては物語を盛り上げる上で
むしろプラスになるのです。
ヒロイン・ヒーローはお互いの役割を食い合うことはないというわけですね。
このアオリを喰らったのは、本編でメインヒロインを務める「インデックス」で、
『超電磁砲』にはインデックスはほぼ登場しません。
インデックスが登場したら、ヒロイン兼主人公である美琴の立場が
食われかねないですからね。
ちなみに、理由2.についても本編『禁書目録』がまだ完結していないから
ということでクリアできます。
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『ちびまる子ちゃん』のスピンオフ『永沢君』は
本編と同時期に連載されていたスピンオフ作品であり、
『永沢君』初登場のキャラが、のちに本編にも登場するという
スピンオフ⇒本編への逆輸入をやってのけた珍しい例です。
具体的に言うと、
暗くてお笑い好きの野口さん
デブで愚鈍の小杉くん
成績優秀のお嬢様な城ヶ崎さん
などのキャラは、『永沢君』に初登場して本編へ逆輸入された
キャラとなります。
また、「藤木君は卑怯」という今やアニメ版でもすっかり定番となっている
キャラ設定も、『永沢君』で初めて語られた設定なのです。
と、まぁこんな感じで「スピンオフ」についていろいろと考えてみました。
作品をつくる方法論として気を付けなければならないところも多そうですが、
うまく使えば作品世界がどんどん魅力的に広がってくれるはずです。
今回語らなかった「クロスオーバー」や「スターシステム」も
分析してみるとちょっと面白そうですね。
機会があれば、また。
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فوق العاده مدرن و شیک
お前の文章方が評論家様の断定臭いんだが
ブーメラン投げか?
商業的理由っていちいち説明しなくても理解できるだろ
人気作品が終わっても、その作品の登場人物を使えば今まで得たファンをそのまま労力を使わず流れ込ませることが出来る。要はリサイクル
あとお前みたいな奴って文面上は理知的気取ってるけど
賢しらぶってる厨房みたい。無駄にメタとか横文字を使いたがったり硬い文章を無理やり使ってるのが痛々しい
いずなって新規ファンを取り込むより懐古ファン寄りじゃん
と、通りすがりの呟きでした。
もっとメタな視点から商業的理由まで触れて欲しかったです。
あと作者によって演出意図も違えば、作品によって商業的事情も違い、世界観によってスピンオフとの関連の深さも変わるんですから、たった2例を挙げて一般論として断定系で語ると違和感だけが残って説得力が消えてしまいますよ。
仮説を結論にするための論理展開も、単に視野の狭さを露呈しているだけになっています。
『複数の著者が同一の世界設定や登場人物を共有して創作する作品群。』(wikiより)
なので富野監督が作ったZガンダムはシェアードワールドとは言えないのでは?
ガンダムで例えるなら宇宙世紀でありながら富野監督作ではない0080等がシェアードワールドに当たると思います。