なんか新しいシリーズものの記事を書きたくなったので、試験的に書いてみます。
その名も、【元ネタから出発!】
主旨としましては、おおよそ以下のような感じです。
現代において、物語やキャラクターが生み出される上では、多くの場合「元ネタ」が存在します。
その「元ネタ」は、いわば物語の"素材"です。
物語の作者は、その"素材"=「元ネタ」を調理することによって独自の物語を仕上げるのです。
たとえば、80年代に大ヒットした漫画作品【聖闘士星矢(セイントセイヤ)】は、
「ギリシャ神話」が元ネタとしてあり、【聖闘士星矢】の作者はその素材を上手く調理して、
ギリシャ神話の星座型のオブジェが分解して鎧になるという「聖衣(クロス)」をまとった
女神・アテナを守る「聖闘士(セイント)」たちの戦いといった設定が
当時の少年少女たちの心をガッチリキャッチしました。
素材は「神話」という古いものでも、それらを「聖衣(クロス)」「聖闘士(セイント)」
などの調理を加えることで、斬新な作品として昇華させることができたわけです。
本シリーズは、特定の物語の元ネタを探るのではなく、元ネタから出発して、
その元ネタがいろいろな作品でどのように調理されているかを探るシリーズにしようと思います。
「ぬらりひょん」から出発!
前置きが長くなりましたが、さっそく「元ネタから出発!」を始めてみようと思います。
今回取り扱う元ネタは、日本妖怪「ぬらりひょん」です。
まずは、元ネタである「ぬらりひょん」のオリジナル情報のおさらいです。
本記事でのぬらりひょんの元ネタは、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれている絵と、
忙しい夕方時などに、どこからともなく家に入ってきて、お茶を飲んだりするなどして
自分の家のように振舞い、人間が見ても『この人はこの家の主だ』と思ってしまうため、
追い出すことができない。妖怪の総大将ともいわれる。
という解説を元ネタとします。
「妖怪の総大将」という設定は石燕より後世の民俗学者がつけた創作のようですが、
一応、その設定も込みで元ネタとさせてください。
すでにあらゆる作品で取り上げられているこの妖怪。
一体どのような調理をされているのでしょうか・・・。
【ゲゲゲの鬼太郎】でのぬらりひょん
【ゲゲゲの鬼太郎】では、鬼太郎の宿敵として登場します。
自分で直接戦うよりは、強い妖怪を鬼太郎にけしかけて戦わせてるイメージ。
自ら戦っても結構強く、鬼太郎と剣で壮絶なチャンバラを繰り広げることもありました。
妖怪の総大将で、性格は卑怯で狡猾。典型的な悪役です。
なぜか「朱の盆」が子分としてよくつき従ってました。
元ネタでは「勝手に家に上がり込む」や「妖怪の総大将」というなんの根拠もない一文しかなく、
石燕の絵からはどのような性格か、どんな技を使うのかもわからなかったわけですが、
おそらく、鬼太郎の作者・水木しげる先生が「妖怪の総大将」という一文の解説を
ふくらませた結果、このようなキャラクターができあがったのでしょう。
その後、水木先生の手を離れたアニメの脚本家などがアレコレ手を加えして、
【ゲゲゲの鬼太郎】でのぬらりひょん像が形作られていったのでしょう。
鬼太郎以降のぬらりひょん関連のキャラは、少なからず鬼太郎のぬらりひょんの
影響を受けていると思われます。
ここでのキーワードは、「妖怪の総大将」
【ぬらりひょんの孫】でのぬらりひょん
【ぬらりひょんの孫】でも、やはり「妖怪の総大将」として登場します。
【ぬらりひょんの孫】の世界では、妖怪は任侠団体のような"組"をつくっており、
そのひとつの"組"の大将をぬらりひょんが務めています。
普段はぬらりくらりと勝手に他人の家にあがりこんで無銭飲食などをするだけの、
あまり恐ろしいとはいえない妖怪ですが、ひとたび戦闘になると、相手の認識をゆがませて
自分の姿を認識させなくするという、とんでもない能力を発揮しました。
この能力は、元ネタの「(人が気付かないうちに)勝手に家に上がり込む」という解説を
「相手の認識をゆがませる能力を持っている」とぬら孫の作者・椎橋先生が解釈したことによるものでしょう。
椎橋先生は、それを戦闘用の能力に昇華させてぬらりひょんをバトル漫画のキャラクターとして成立させました。
ここでのキーワードは、「認識をゆがませる」
【地獄先生ぬ~べ~】でのぬらりひょん
【地獄先生ぬ~べ~】のぬらりひょんは、「妖怪の総大将」という側面はありませんでしたが、
元ネタの解説通り「他人の家に勝手に上がり込んで飲食をする」妖怪として描かれました。
また、偉そうにふるまうことで、「この人はこの家の主だ」と相手に思わせてしまう能力も
持っており、これも解説通りです。
が、【ぬ~べ~】ではぬらりひょんに新たな解釈が加えられています。
ぬらりひょんは、「客人神(まろうどがみ)」だという解釈です。
昔はどこの家にも神棚があり、神が客として来れるよう御馳走や供え物を用意して歓迎するという
習慣が当たり前にあり、神はその家を守ってくれる隠れた主として尊敬された。
ぬらりひょんは、その「神」であるというのが【ぬ~べ~】における「ぬらりひょん」でした。
ここでのキーワードは、「神」
【GANTZ -ガンツ-】でのぬらりひょん
【GANTZ -ガンツ-】にもぬらりひょんが登場します。といっても、妖怪ではなく「星人」ですが。
【GANTZ -ガンツ-】のぬらりひょんは、とにかく「不気味」の一言です。
他人の家に勝手に上がり込んで茶とか、そういう平和的な部分は一切なく、
あらゆる形に変化し、いくら攻撃を受けても瞬時に再生します。
攻撃力もすさまじく、放たれるビームで人間も建物も一瞬で蒸発。
もう、「どうあがいても絶望」感あふれる敵キャラクターでした。
「あらゆる形に変化する」という部分は、「ぬらりひょん」の名前から連想される
ぬらーり、くらーりという掴みどころのないような感じから来ているのかも。
そんなぬらりひょんを倒す唯一の手段は、「意識の外からの攻撃」。
やはり、ぬらりひょんという存在をキャラクターとして成立させようとすると、
「意識」「認識」という要素が重要になってきますね。
ここでのキーワードは、「圧倒的に強い敵」
総括
いままでのキーワードを集めると、こんな感じです。
「妖怪の総大将」
「認識をゆがませる」
「神」
「圧倒的に強い敵」
おおー、なんだかすごい感じ。
そうなんです。「なんかよくわかんないんだけど、すごい」というのは
取り上げた4作品のぬらりひょん共通の印象な気がします。
元ネタ「ぬらりひょん」の、その真偽不明の解説と石燕のなんともいえない絵から
こういったつかみどころのない魅力を抽出した結果が、これらぬらりひょんキャラたちの姿
なんじゃないでしょうか。
まぁ、なんかまとまったようなまとまってないような総括でしたが、
ぬらりひょんの記事なだけに、こういうぬらりくらりと掴みどころのないような記事で許して下さいな。
これらの他にもぬらりひょんを取り上げた作品があれば、教えてくれると嬉しいです。
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その名も、【元ネタから出発!】
主旨としましては、おおよそ以下のような感じです。
現代において、物語やキャラクターが生み出される上では、多くの場合「元ネタ」が存在します。
その「元ネタ」は、いわば物語の"素材"です。
物語の作者は、その"素材"=「元ネタ」を調理することによって独自の物語を仕上げるのです。
たとえば、80年代に大ヒットした漫画作品【聖闘士星矢(セイントセイヤ)】は、
「ギリシャ神話」が元ネタとしてあり、【聖闘士星矢】の作者はその素材を上手く調理して、
ギリシャ神話の星座型のオブジェが分解して鎧になるという「聖衣(クロス)」をまとった
女神・アテナを守る「聖闘士(セイント)」たちの戦いといった設定が
当時の少年少女たちの心をガッチリキャッチしました。
素材は「神話」という古いものでも、それらを「聖衣(クロス)」「聖闘士(セイント)」
などの調理を加えることで、斬新な作品として昇華させることができたわけです。
本シリーズは、特定の物語の元ネタを探るのではなく、元ネタから出発して、
その元ネタがいろいろな作品でどのように調理されているかを探るシリーズにしようと思います。
「ぬらりひょん」から出発!
前置きが長くなりましたが、さっそく「元ネタから出発!」を始めてみようと思います。
今回取り扱う元ネタは、日本妖怪「ぬらりひょん」です。
まずは、元ネタである「ぬらりひょん」のオリジナル情報のおさらいです。
本記事でのぬらりひょんの元ネタは、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれている絵と、
忙しい夕方時などに、どこからともなく家に入ってきて、お茶を飲んだりするなどして
自分の家のように振舞い、人間が見ても『この人はこの家の主だ』と思ってしまうため、
追い出すことができない。妖怪の総大将ともいわれる。
という解説を元ネタとします。
「妖怪の総大将」という設定は石燕より後世の民俗学者がつけた創作のようですが、
一応、その設定も込みで元ネタとさせてください。
すでにあらゆる作品で取り上げられているこの妖怪。
一体どのような調理をされているのでしょうか・・・。
【ゲゲゲの鬼太郎】でのぬらりひょん
【ゲゲゲの鬼太郎】では、鬼太郎の宿敵として登場します。
自分で直接戦うよりは、強い妖怪を鬼太郎にけしかけて戦わせてるイメージ。
自ら戦っても結構強く、鬼太郎と剣で壮絶なチャンバラを繰り広げることもありました。
妖怪の総大将で、性格は卑怯で狡猾。典型的な悪役です。
なぜか「朱の盆」が子分としてよくつき従ってました。
元ネタでは「勝手に家に上がり込む」や「妖怪の総大将」というなんの根拠もない一文しかなく、
石燕の絵からはどのような性格か、どんな技を使うのかもわからなかったわけですが、
おそらく、鬼太郎の作者・水木しげる先生が「妖怪の総大将」という一文の解説を
ふくらませた結果、このようなキャラクターができあがったのでしょう。
その後、水木先生の手を離れたアニメの脚本家などがアレコレ手を加えして、
【ゲゲゲの鬼太郎】でのぬらりひょん像が形作られていったのでしょう。
鬼太郎以降のぬらりひょん関連のキャラは、少なからず鬼太郎のぬらりひょんの
影響を受けていると思われます。
ここでのキーワードは、「妖怪の総大将」
【ぬらりひょんの孫】でのぬらりひょん
【ぬらりひょんの孫】でも、やはり「妖怪の総大将」として登場します。
【ぬらりひょんの孫】の世界では、妖怪は任侠団体のような"組"をつくっており、
そのひとつの"組"の大将をぬらりひょんが務めています。
普段はぬらりくらりと勝手に他人の家にあがりこんで無銭飲食などをするだけの、
あまり恐ろしいとはいえない妖怪ですが、ひとたび戦闘になると、相手の認識をゆがませて
自分の姿を認識させなくするという、とんでもない能力を発揮しました。
この能力は、元ネタの「(人が気付かないうちに)勝手に家に上がり込む」という解説を
「相手の認識をゆがませる能力を持っている」とぬら孫の作者・椎橋先生が解釈したことによるものでしょう。
椎橋先生は、それを戦闘用の能力に昇華させてぬらりひょんをバトル漫画のキャラクターとして成立させました。
ここでのキーワードは、「認識をゆがませる」
【地獄先生ぬ~べ~】でのぬらりひょん
【地獄先生ぬ~べ~】のぬらりひょんは、「妖怪の総大将」という側面はありませんでしたが、
元ネタの解説通り「他人の家に勝手に上がり込んで飲食をする」妖怪として描かれました。
また、偉そうにふるまうことで、「この人はこの家の主だ」と相手に思わせてしまう能力も
持っており、これも解説通りです。
が、【ぬ~べ~】ではぬらりひょんに新たな解釈が加えられています。
ぬらりひょんは、「客人神(まろうどがみ)」だという解釈です。
昔はどこの家にも神棚があり、神が客として来れるよう御馳走や供え物を用意して歓迎するという
習慣が当たり前にあり、神はその家を守ってくれる隠れた主として尊敬された。
ぬらりひょんは、その「神」であるというのが【ぬ~べ~】における「ぬらりひょん」でした。
ここでのキーワードは、「神」
【GANTZ -ガンツ-】でのぬらりひょん
【GANTZ -ガンツ-】にもぬらりひょんが登場します。といっても、妖怪ではなく「星人」ですが。
【GANTZ -ガンツ-】のぬらりひょんは、とにかく「不気味」の一言です。
他人の家に勝手に上がり込んで茶とか、そういう平和的な部分は一切なく、
あらゆる形に変化し、いくら攻撃を受けても瞬時に再生します。
攻撃力もすさまじく、放たれるビームで人間も建物も一瞬で蒸発。
もう、「どうあがいても絶望」感あふれる敵キャラクターでした。
「あらゆる形に変化する」という部分は、「ぬらりひょん」の名前から連想される
ぬらーり、くらーりという掴みどころのないような感じから来ているのかも。
そんなぬらりひょんを倒す唯一の手段は、「意識の外からの攻撃」。
やはり、ぬらりひょんという存在をキャラクターとして成立させようとすると、
「意識」「認識」という要素が重要になってきますね。
ここでのキーワードは、「圧倒的に強い敵」
総括
いままでのキーワードを集めると、こんな感じです。
「妖怪の総大将」
「認識をゆがませる」
「神」
「圧倒的に強い敵」
おおー、なんだかすごい感じ。
そうなんです。「なんかよくわかんないんだけど、すごい」というのは
取り上げた4作品のぬらりひょん共通の印象な気がします。
元ネタ「ぬらりひょん」の、その真偽不明の解説と石燕のなんともいえない絵から
こういったつかみどころのない魅力を抽出した結果が、これらぬらりひょんキャラたちの姿
なんじゃないでしょうか。
まぁ、なんかまとまったようなまとまってないような総括でしたが、
ぬらりひょんの記事なだけに、こういうぬらりくらりと掴みどころのないような記事で許して下さいな。
これらの他にもぬらりひょんを取り上げた作品があれば、教えてくれると嬉しいです。
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個人的にこのコーナーでベルゼブブを取り上げてもらいたいのですが。
コメントありがとうございます。
このコーナー、資料集めとかに手間がかかる割に
反応がほとんど無かったので、
ちょっとどうしようかと思ってたとこでした。
ベルゼブブ、良いですね!
漫画だと、あれとあれかな。
ゲームだとRPGで結構登場してそう。
こつこつ資料集めてみます。
ちなみに、このコーナーの次回記事は
「賢者の石」で行こうと思ってます。