昨年11月の「サロメ」に続くジョナサン・ノット+東京交響楽団によるリヒャルト・シュトラウスの演奏会形式オペラ公演第二弾である。その二日目にあたるサントリー・ホールでの公演を聴いた。外題役エレクトラにクリスティーン・ガーキ、その母クリテムネストラにハンナ・シュヴァルツ、弟オレストにジェームス・アトキンソン、妹クリソテミスにシネイド・キャンベル=ウオレス、母親の不倫相手エギストにフランク・ファン・アーケン、そして実力派日本人勢と二期会合唱団で脇を固めた超華版キャストだ。そしていつものように演出監修には歌手としての名演が懐かしいサー・トーマス・アレンがクレジットされていた。演奏の方は、とにかく東響音楽監督ノットのテンション高いドライブで一気呵成に駆け抜けた1時間40分という感じだった。出ずっぱりのガーキのスタミナにも感心したし、対するキャンベル=ウオレスも細身ではあるが充分な声量と表現力だった。そして声量こそないものの独特な表現でおおいに存在感を発揮したベテランのシュヴァルツ等、出番が多いだけに女声陣の健闘が目立っていたのはいたしかたないことだろう。脇役の日本勢の中では池田香織と田崎尚美の存在がとりわけ光っていた。ノットの指揮はどろどろとした復讐劇を描くというよりも、より純音楽的にスコアに対峙したといっても良いだろうか。だからとりわけ叙情的な部分(ほどんどないのだが)の美しさが際立った。全体に複雑なスコアに光を当ててあるべき響を求め、颯爽と振り抜いたという印象。それゆえ終演後は陰惨なドラマに疲労困憊するというよりも、爽やかな達成感さえ感じるものだった。そんな演奏を達成するのに120%の力を発揮した東響にも大きな拍手を送りたい。
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