思い返せば4年前の今頃はコロナ禍の中で多くの音楽会が中止されたり変更されたりしていた。そんな感染症の状況は未だ完全に払拭された訳ではないのだが、そんなことが遠い過去のことになり平常な生活が戻ってきているのが実に不思議だ。さてTCPの今年度最後の定期演奏会は、そんな折に大規模声楽曲を避けて曲目変更された2021年3月定期のリヴェンジ公演である。独唱陣は最初のアナウンスと変更なしという大きな拘りがこのオケらしい。(シティ・フィルは演奏会形式の「トスカ」の日程変更に際しても同様の拘りをみせた過去がある)指揮はもちろん常任指揮者の高関健である。何よりその拘りの独唱陣がとても良かった。ソプラノの中江早希の良く伸びるビブラートの少ない純粋な声はまさにレクイエムに相応しかった。メゾソプラノの加納悦子の深く掘り下げたドラマティックな歌には心震えた。笛田博昭の美声と大らかな歌いまわしにはイタリアを感じた。青山貴のノーブルな歌は全体を締めた。そして重唱でも笛田が若干目立ちすぎたきらいはあったものの心地良いアンサンブルが保たれ、正直この曲の独唱・重唱部分をこんなに楽しく聴いたことはこれまでになかった。多くのメンバーが暗譜で臨んだ東京シティ・フィル・コーアもダイナミックレンジを精一杯確保しつつよく歌っていた。そしてシティ・フィルは高関の棒の下、まるで青白い炎を感じるような乱れのない熱演で堅固なアンサンブルを披瀝しつつ中期ヴェルディの充実した音楽の魅力を十二分に伝えてくれて、この曲の稀有な名演に接した思いがした。
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