医者と看護師が付いて、ERに向かう。結構広いが、その時点で、患者は僕1人であった。ERにいたのは2時間を越えたと思うが、その間受診した患者は3人程度であったかと思う。
付き添いの妻と妻の友人は受付に行き手続きをしているが、結局僕の前に現れたのは2時間くらいしてからだった。保険証も渡してないし、ちょっと心配していた。少し余裕が出て来たということなのだろう。
医者から多くの質問を受けた。そこで、これまでの経緯や症状を話していたが、看護師が体にモニター心電図の電極を胸に装着したり、酸素を鼻から入れる装置をつけたり、熱を測ったり、血圧を測ったりしていた。血圧を測るとなんと上が200もあった。看護師曰く「これは酷いね」。
そうすると、医者がもう一人やって来た。医者同士でこそこそ話をしているが、なんの検査をするかまず意見交換という感じのようだ。話しているのが漏れてくる。ここの時点で、医者は心不全だと思うが、検査をいくつかやってみますとのこと。
苦しいのは水が全身に溜まっているとのこと。確かに足をみれば明らかに膨らんである。浮腫というやつである。結局肺にも水が溜まっているから、地上にいながらにして溺れているかのような状態になるので、苦しいわけだ。それが24時間続くというのはかなりひどい状況とのこと。
ここで最初の点滴が施される。不思議なことにという思いを抱いたのだが、点滴をしてものの10分もしないうちに、胸痛が引き、僕を2週間以上続いた苦しさがなくなってしまった。その効き目に驚いていたのだが、同時に薬は怖いなあとも思ってもいた。
というのは、こんな短い時間で僕を苦しみ続けていた苦しさを感じさせなくするということは、いかに薬が人体に大きな影響を与えることができるのかを表しているからだ。そう麻薬でも使えば、痛みなんか簡単に感じなくなるのであろうから、当たり前といえば当たり前なのだが。
少し余裕も出て来たので看護師や医者にも冗談を言っていたのだが、看護師から「冗談言っている状況じゃないよ」と笑われたりしていた。ここには書けないような話もあったのだが。
検査は血液検査なので血液採取が最初。ちなみに注射は全然痛くなかった。看護師が「少しチクっとしますよ」というが、なんの痛みもないのだ。看護師に調子に乗って「全然痛み感じないですね」と言ったら、「そう言われると嬉しいのよね」との返答。
そして今度は四肢に電極をつけた心電図検査。胸のレントゲン。そして、人生初めてのCTを行った。レントゲンとCTでは「息を吸って、そして止めて」と言われるのが、胸の調子が良くないので、言われた通りやってるつもりだが、うまくできているのか自信がなかった。とりあえず問題はなかったようだ。
部屋の向こう側がガラス越しに見えるのだが、さっきの医者二人が画像を見ながらなにやら話し合っている。その間、「大した事はないけど被曝だなあ」「人生でCTなんかやらないつもりでいたんだがなあ」などと半分冗談でそんなことを考えていた。
(つづく)