スポーツメンタルトレーナーの小噺

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アテネオリンピック総括

2004年09月01日 | アテネオリンピック
 17日間にわたるアテネオリンピックが閉会いたしました。日本選手団は大活躍でしたね!みなさん、寝不足は解消されましたか?今回は総括ということで、印象に残ったことなどを最も○○な場面と共に話していきたいと思います。

☆最も嬉しくて感動した場面
体操男子団体、復活の金メダル!
刈屋アナの名実況「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架け橋だ!」と共に冨田洋之選手がピッタリと着地した瞬間・・・下を見ながらガッツポーズした瞬間・・・僕は泣いていました。格好良すぎる・・・。日刊スポーツのアンケート結果でも最も感動した金メダル1位になったようです。みなさんとも最も感動を共有できた場面となりましたね。
☆最も精神力を讃えたい場面
北島康介、チョー気持ちいい金メダル!
競泳・平泳ぎ100m決勝で北島康介選手がライバルの世界記録保持者・ハンセン選手を破り金メダルを獲得しました。平井コーチの作戦で、予選からいいタイムで泳いでハンセン選手にプレッシャーを与えようとしていたみたいです。予選でオリンピックレコードを出した北島選手に負けじとハンセン選手がそれを塗り替える。その時点でハンセンのペースを乱すことに成功したようです。決勝では、いつも飛び込み台の右から上がるハンセン選手が左側に立ちました。その時点で平井コーチは「よしっ」と思ったそうです。いつものルーティーンができていないハンセン選手は自分の力を発揮することが出来ず、自分がそれまでのオリンピックで出した記録にも及ばず北島選手に敗れました。北島選手は前半ハンセンがリードするが後半逆転するというイメージトレーニング通りのレース展開で快勝!それが「キモチイー、チョーキモチイー」という言葉になったんでしょうね。精神面で揺さぶりをかけた平井コーチ、その作戦に見事答えた北島選手。日本人にもこういうことが出来る人が出てきたかという嬉しい驚きでした。
☆最も嬉しくて驚いた場面
競泳女子自由形・柴田亜衣、晴れのち雨の無欲の金メダル!
まさか・・・。表彰台はうまくいけば・・・ぐらいに思っていたんですが。バルセロナの岩崎恭子の金メダルの驚き再び!という感じでした。隣のレーンを泳ぐ金メダル最有力の選手をいいペースメーカーに出来たことはあるでしょう。ノーマークだったこともあるでしょう。それでも、その結果は自分自身で出したものです。レース直後のインタビューでは笑顔、笑顔でしたが、表彰式直後には実感が湧いてきたのか、事の重大さに気付いたのか、涙を流していました。これから先、プレッシャーにさらされることと思いますが、期待を力に換えて本当に強い選手になってもらいたいです。
☆最も敗れて驚いた場面
井上康生・・・敗れる
はっきり言って衝撃でした・・・。勿論そういう可能性があることはわかっています。それでも尚、というぐらいに強い選手であると今でも思っています。勿論お話したこともありませんので、本当の心の内はわかりませんが。何が原因であるかなど本人の口からは出ていません。正直、あのような選手が何が原因でと聞きたい気持ちは非常にあります。でも本人がその気になるまでそっとしておいてあげましょう。
☆最も賞賛を送りたい場面
男子マラソン・リマ、アクシデントにも負けず笑顔のゴール!
オリンピックの最後の最後を飾る競技・男子マラソンでとんでもないハプニングが起こりました。36キロ付近まで単独で1位を走っていたブラジルのリマ選手を観衆の一人が抱きついてレースを妨害したのです。数秒後レースを再開しましたが、当然リズムは狂うし後続の選手との差は縮まるし、本当にやりきれない気持ちになったと思います。その後2人に抜かれたときはメダルの獲得も無理だろうなと思いました。しかし、リマ選手はそのようなアクシデントにも負けず、3位で競技場に戻ってきました。観客は1位の選手よりも大きな拍手で迎え、リマ選手はヒコーキポーズで笑顔でゴールイン!間違いなくもう一人の、いやそれ以上の勝者のゴールでした。「ああいうアクシデントは誰にでも起こりうること」とリマ選手はコメントしていましたが、頭ではわかっていても僕にはまだできません。そのような気持ちの持ち方に、自分の精一杯の力を出し切ったことに本当の価値があるのです。そして観衆の皆さんの拍手が送られるのです。その銅メダルには金メダル以上の価値があることを、誰が本当の勝者かみんなわかっているのです。本当にそのスポーツマンシップに感動しました。

 今大会で過去最多タイの16個の金メダル、史上最多の37個のメダルと日本選手団は大活躍でした。北島選手に代表されるように期待される中で自分の力を出し切る精神力の強さが目立ったオリンピックでした。メンタルトレーニングや心理的サポートなどに理解があり、実践している指導者が増えてきたのも大躍進の一因でしょう。柔道、競泳、体操など日本のお家芸といわれていた競技が特に活躍を見せました。「東洋の魔女」も頑張ってもらいたいですね。
 室伏広治選手の金メダルに絡んで大きく報道されたドーピング問題。違反者は過去最多となってしまいました。非常に残念です。そういうことをする選手はアスリートではない。違反した身体でメダルを取って、自分自身に嘘をついて、何の価値があるのでしょう?自分自身に問うてもらいたい。リマ選手のメンタリティーを見習ってもらいたいです。
 採点競技では、わかりにくい判定が続出。男子体操個人種目別の鉄棒ではロシアのネモフ選手の演技が3名終わった時点で3位。素晴らしい演技と裏腹に低い得点で観客は大ブーイング。何十分も中断した挙句、2名の審判が得点を挙げるという前代未聞の事態になってしまいました。レスリングやシンクロなども含め、関係者だけが採点のわかるような競技が今後どうなっていくと思っているんでしょうか。もう少し一般観衆の視点まで考慮に入れないと未来はないと思います。今大会ではハプニングも目立ちました。まずオリンピック直前まで続いた工事の遅れ。競泳会場などは当初予定されていた屋根付きの屋内プールから屋外プールへの変更。まあ、らしいと言えばそれまでなんですが・・・。日本人には理解するのは難しいですね。射撃の選手が隣の的を撃ったなんてこともありました。しかし、許されないのはマラソンを、スポーツを冒涜したあのアイルランド人。僕はサッカーのワールドカップで実際に現場でアイルランドの試合を見て、その愚直な姿に感動していただけに、ちょっと残念というか・・・。一人の愚行がその国自体のイメージまでも悪くしてしまうかもしれないのです。そうしないためにも断固とした態度、それ以前の対策をしっかりと考えるべきです。そして忘れている人たちもいると思いますが、オリンピック開催地の買収問題。権力を武器に商売。見苦しい。政治家かヤクザと変わらないなあ。スポーツに関わる人たちが不正を働いていることが嘆かわしい。それこそこのスポーツ界から永久追放してもらいたい。最後にオリンピックという大きな舞台で僕らに最高のパフォーマンスを見せてくれた全ての選手に感謝します!ありがとう!