新潮社
2011年5月 発行
257頁
「トンネル鏡」
故郷へ戻る列車の窓に映る自分の顔
大学進学と同時に出た故郷
就職、結婚、離婚、退社
そして再び戻る故郷
「金魚」
病気で妻を亡くしてから精神科へ通うようになった男性
都会暮らしの人の故郷と同郷で今は亡き妻への断ち切れない思い
故郷で傍に感じる妻の存在
綺譚ではなく、精神科の薬とアルコールの見せる幻だというところが哀しかったです
「上海租界の魔術師」
若い頃から好き放題をしてきた祖父が行き場を失くしてころがりこんできた
魔術師だった祖父と孫娘の心の交流を優しく描いています
戦争前の賑やかで活気に溢れた上海とただ一人愛した女性を忘れることのなかった祖父
やっぱり、この世に魔法はあるのです
「レシピ」
夫の定年退職の日
ビール片手に夕飯を作りながら若い頃から書き溜めたレシピを読み直しては思い出にふける妻
若かった頃の恋は過ぎたものとして、明日から夫との平穏な日々を送るのだろうと思いながら読み進むと…
意外な決断をしていた妻なのでした
「胡瓜の馬」
故郷を出て20年になる男性
高校の同窓会に出席するため盆休みに故郷に帰る
高校時代に付き合っていた彼女は別の同級生と結婚していたのだが自殺したのだという
彼女を置いて東京へ出た男性は、ふと思う
俺に何か足りなかったのかな
してやれることがあったかもしれない
「チョコチップミントをダブルで」
離婚により年に一度しか会えなくなった娘
今年は、ディズニーシーへ行こうと計画を練る父
乏しい収入を節約して娘とのデートに備える姿が切ないです
「ゴミ屋敷モノクローム」
ゴミ屋敷で独り暮らす老婆
区の生活環境課の男性は、片付けられていくゴミ屋敷で老婆の人生を知る
今は寂しく暗い日々を送る人にでも若く輝いていた昔があったのです
「月の上の観覧車」
観光開発会社の社長は自分の死期を悟り自分の会社が経営する観覧車にひとり乗る
月のある空へ一人きりで乗った観覧車で駆け上がれば地上では会えない人々に会える、という経験があるのだった
今はもう亡くなった、父、母、妻、息子の姿が見える
人生に二周目があればいいのに、と思う社長
「レシピ」と表題作「月の上の観覧車」が良かったです
荻原さんとほぼ同じ世代の自分
人生の残り時間が半分を切った私には身につまされる話ばかりでした
俺もさせて頂きました。
またよろしくお願いします☆
長編は良いンだけどね。
短編だと重松氏の方が上手くない?
宜しくお願いしますね
重松さんのほうが読ませますね
本作品も「もう一押し」ですが短編だからまぁよしとするか、って感じでした
TB&コメント、ありがとうございましたm(__)m
何だか男の悲哀と懺悔的、回顧(懐古)的作品でしたねぇ
僕は後半3作、
「チョコチップミントをダブルで」
「ゴミ屋敷モノクローム」
「月の上の観覧車」でウルウルきました
子を持つ世のお父さんにはグッとくるものがあるかもしれませんね
お父さん、頑張って!って応援したくなります
ゴミ屋敷~
切なかったです
区役所の男性と老婆の距離感が絶妙でしたね
全体に男性向けだったかしら (^.^)