原題 IO SONO LI
英題 SHUN LI AND THE POET
2011年 イタリア、フランス
イタリア・ローマ
中国人が経営する縫製工場で働く中国人女性シュン・リー(チャオ・タオ)
彼女は幼い息子を故郷の父親の元に残し闇ルートでイタリアに入国、働いていた
彼女はその組織に借金があり、労働により完済した暁には息子を呼び寄せることが出来ると約束されていた
働きぶりが評価され、ローマから遠く離れた町、キオッジャで小さな酒場「オステリア」を任されることになる
キオッジャは半島の付け根、地中海に面した小さな小さな漁師町です
その店は元々イタリア人が経営していたのだがシュン・リーの組織のボスが買い取ったのだった
ここにも中国パワーが及んでいるのですね
毎晩のように男たちが集まり、酒を飲み、ゲームをし、くだらない話で盛り上がる店
シュン・リーもなんとか通じるイタリア語で一生懸命仕事をこなし、常連客とも仲良くなっていく
そんな中のひとり、老漁師ベーピ(ラデ・シェルベッジア)
語呂合わせの特技で『詩人』と呼ばれている
旧ユーゴからの移民で、もう30年もキオッジャに暮らしているものの、やはり異国人という思いがある彼はシュン・リーの深い孤独や寂しさがよく理解出来るのだった
家族の写真を見せて故国の話をするシュン・リー
ベーピも妻を亡くして一年、イタリア人として育った息子にはわかるはずのない遠い故国(距離は近いけれど)を想ったのでしょう
そんな思いを一編の詩に託してシュン・リーに送ります
男と女というより父と娘、異国人同士のいたわりのような情愛が温かく切なく伝わってきます
しかし、小さな町のこと
二人の交流はたちまち良くない噂となり、ベーピは仲間といざこざを起こしてしまうし、シュン・リーもボスからベーピとの交流を続ければ息子を呼び寄せることは出来なくなると言われてしまう
息子と暮らすという希望を選んだシュン・リーはまた別の場所で働くことを選ぶ
赤い薄紙で作られた蓮の花の芯に蝋燭を灯し川に流す屈原の祭りの夜
シュン・リーが独りで屈原の古典詩を暗唱しながら流す赤い花はとても幻想的です
その花が流れゆく川にかかる橋を何も知らず渡るベーピ
この擦れ違いがシュン・リーとベーピの本当の別れになってしまいました
儚い出会いと別れでしたが、その邂逅は赤い花の温かい灯のようにシュン・リーの心を温めてくれたことでしょう
キオッジの風景とともにとても美しい映画でした
それと
シュン・リーと相部屋だった女性
彼女の事情は全く明らかにされませんが、観終ってみればものすごい存在感でした
公開が同時期のこともあれば名古屋のほうが遅いこともありますね。
本作、良い映画でしたね~。
ベービとシュン・リー、互いに相手に求めていたものにズレがあったのでしょうか。
そうそう、逞しいのは女性ですネ。
私は本作、すごく気に入ってしまいました。運河に浮かぶ赤い花の灯り・・・。幻想的で美しかったですね。
ベーピとシュン・リーはお互いの孤独を慰めあっていましたが、やっぱり女性はたくましいなあ・・・と思った次第。