訳・木村裕美
集英社文庫
2006年11月 第7刷
上巻414頁
下巻417頁
原題
LA SOMBRA DEL VIENTO
1945年バルセロナ
10歳のダニエルは古書店を営む父親に連れられて無数の本が眠る「忘れられた本の墓場」を訪れる
そこで手にした1冊の本「風の影」
家に帰ったダニエルは夜明けまで夢中になって読み続ける
作者、フリアン・カラックスの他の著書を探し始めたダニエルは、知らず知らずのうちにフリアンの暗い過去へと引きずり込まれていく
カラックスの過去が語られる19世紀末~1920年ごろ
スペイン内戦の1933年ごろ
内戦後、ダニエルの現在の1940~50年
3つに区分される時代を越えてフリアンの過去とダニエルの現在が不思議に繋がりを見せる面白さ
スペイン内戦などの歴史を背景にした恋愛ロマン、推理、冒険、バルセロナに暮らす庶民の風俗
盛りだくさんの内容で
ダニエル、フリアン、彼らを愛する女性たち、家族、などなど
全ての愛すべき登場人物が重要な役割を担っており、最初から最後まで読者を飽きさせません
特にお気に入りは、フェルミン
ホームレスだったところをダニエルに拾われ、父の古書店の店員になります
スパイだった彼はスペイン内戦で失脚、今もバルセロナ警察のフメロ刑事から執拗に追われている(このフメロ刑事の過去にも仰天でした)
誰にでもユーモアとウィットに満ちたジョークを叩く
しかし、世の動きや人間に対する洞察力に優れ、ダニエルを心底愛し、ダニエルの父親を尊敬し、幾度もダニエルの窮地を救い手助けをしてくれます
長さを感じさせない読み応え充分の作品でした
余談ですが
sombra=影、幻影
これから派生した単語
sombreroには帽子という意味があります
フリアン・カラックスの父親の職業は帽子屋だったのですが何か関連を持たせたのでしょうか
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