みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1254「秘めた思い」

2022-06-01 17:54:28 | ブログ短編

 あずさには、百合菜(ゆりな)という思いを寄(よ)せている娘(こ)がいた。彼女とは親友同士(しんゆうどうし)なのだが、まだ告白(こくはく)する勇気(ゆうき)がなかった。もしそんなことをしたら、嫌(きら)われてしまうかもしれないからだ。今は、百合菜といつも一緒(いっしょ)にいられるだけで満足(まんぞく)しようとしていた。
 そんな二人に、邪魔者(じゃまもの)が割(わ)り込んできた。その男子は、百合菜に気があるようだ。ことあるごとに百合菜に近づき、彼女を独占(どくせん)しようとした。あずさは気が気でなかった。百合菜も百合菜だ。彼女は別に嫌(いや)がるわけでもなく、その男子と楽しそうにおしゃべりしたりしていた。
 ある日のこと。あずさは、百合菜とその男子が一緒に帰るところを目撃(もくげき)した。彼女は思わず二人の後(あと)を追(お)いかけた。二人は人気(ひとけ)のない脇道(わきみち)に入って行く。あずさもついて行こうとして足を止めた。男子が、百合菜を塀(へい)に押(お)しつけて、いきなりキスをしようと――。
 あずさが我(われ)に返ったとき、男子が目の前で倒(たお)れていた。百合菜は唖然(あぜん)としていた。あずさは自分がしたことに戸惑(とまど)い、百合菜に何か言おうとしたが言葉(ことば)にならない。そんなあずさを見て、百合菜は駆(か)け寄り言った。「助(たす)けてくれて、ありがとう」
 百合菜は座(すわ)り込んでいる男子に怒(おこ)って言った。「わたしは、誰(だれ)とも親密(しんみつ)な関係(かんけい)にはならないって言ってるでしょ。誰とも付き合いたくないの。友達(ともだち)以上になれるなんて思わないで」
 彼女の言葉は、あずさの心にも刺(とげ)のように突(つ)き刺(さ)さった。
<つぶやき>人それぞれ、いろんな思いがあるようです。二人はこれからどうなるのか…。
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