彼女はごく普通(ふつう)の女の子。でも、彼女には人に言えない秘密(ひみつ)があった。どういう訳(わけ)か、未来(みらい)が見えてしまうのだ。そのことを知っている人は誰(だれ)もいない。
彼女は毎日(まいにち)が退屈(たいくつ)だった。自分の人生(じんせい)がつまらなくて仕方(しかた)がない。仕事仲間(しごとなかま)とランチをしているときも、楽しめることなんか――。例(たと)えば、いま、目の前で彼女を見つめている男性は、明日になると彼女に告白(こくはく)をする。でも、彼女は即答(そくとう)で断(ことわ)ってしまう。なぜなら、その男性は明日の夜には、彼女の知らない女性のベッドにもぐり込んでいるからだ。
そんな彼女の前に、突然(とつぜん)、見知(みし)らぬ男性が現れた。いつもなら、その人のことが手に取るように分かるはずなのに、その男性からは何も感じ取ることができなかった。
彼は、彼女を見つめて言った。「僕(ぼく)と、お付き合いしませんか?」
いきなりこんなことを言われたら、誰でも同じ反応(はんのう)をするだろう。それに、彼女は人見知(ひとみし)りする娘(こ)だった。だから、彼女はすぐに断った。男性は残念(ざんねん)そうに、
「そうですか…。あなたとなら、楽しく過(す)ごすことができると思ったんですが…」
彼女は離(はな)れて行く男性の腕(うで)をつかんで、思わず、「あの…。また、会っていただけますか?」
彼女は、男性の顔を見て急に恥(は)ずかしくなった。まさか、自分がこんなことをするなんて…。胸(むね)がドキドキして…、こんなことは初めてだった。男性は何のためらいもなく、
「そう言うだろうと思ってました。じゃあ、いつ待(ま)ち合わせしましょうか?」
<つぶやき>彼も未来が見えるのでしょうか? それとも、これは単(たん)なるナンパなのか…。
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