川相姉妹(かわいしまい)の戦(たたか)いは熾烈(しれつ)を極(きわ)めた。初めのうちは互角(ごかく)に見えたが、次第(しだい)に琴音(ことね)が優勢(ゆうせい)になっていく。初音(はつね)の動きが鈍(にぶ)り出すと、琴音はとどめを刺(さ)そうと倒(たお)れた初音に股(また)がり首(くび)に手をかけた。そして、両手に力を込めていく。
邪魔(じゃま)が入ったのはその時だ。見知(みし)らぬ男が突然(とつぜん)現れて、琴音を蹴(け)り上げたのだ。琴音の身体(からだ)は宙(ちゅう)を飛(と)び、地面(じめん)にうちつけられた。琴音は激痛(げきつう)に顔をしかめる。琴音が目をあげると、ちょうど大男が倒れている初音の胸(むな)ぐらをつかんでいるところだった。男は軽々(かるがる)と初音を持ち上げると、地面に投(な)げつけた。初音はまったく身動(みうご)きしなかった。男は初音に近づいて行く。琴音は、叫(さけ)び声をあげると男に飛びかかっていった。
力の差(さ)は歴然(れきぜん)だった。琴音の攻撃(こうげき)は何のダメージも与(あた)えなかった。男は琴音を捕(つか)まえると、拳(こぶし)を腹(はら)に打ち込んだ。琴音の身体は高く浮(う)き上がり、落ちて来たところを男につかまれた。男は、琴音を引き寄(よ)せると、大きな拳を振(ふ)り上げた。
琴音は、ここで初めて恐怖(きょうふ)を感じた。これで自分(じぶん)は死(し)ぬんだと思うと、今までの出来事(できごと)が走馬灯(そうまとう)のように浮かんできた。そして、初音と過(す)ごした幼(おさな)い日々(ひび)も――。
男は琴音の顔に容赦(ようしゃ)なく拳を振り下ろした。だが、どういう訳(わけ)か、寸前(すんぜん)で拳は止まった。
「させないわよ」初音のか細(ぼそ)い声が聞こえた。初音の身体から青白(あおじろ)い光が発(はっ)していた。初音が能力(ちから)を発動(はつどう)させたのだ。男の拳が少しずつ押(お)し戻(もど)されていった。
<つぶやき>どこから現れたのでしょうか? これは幻影(げんえい)なのか、それとも現実(げんじつ)なのか…。
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