川相琴音(かわいことね)は、どこまでも続く長い廊下(ろうか)を走っていた。すべてが白一色(しろいっしょく)なので、どれだけ走ったのかまったく分からなくなっていた。琴音は立ち止まると、後ろを振り返った。誰(だれ)も追(お)っては来ないようだ。琴音は息(いき)を整(ととの)えながら呟(つぶや)いた。
「これって…、どうなってるの。どこまで行けば出口(でぐち)があるのよ」
その時、突然(とつぜん)、目の前に扉(とびら)が現れた。琴音は警戒(けいかい)しながら扉をゆっくりと開けた。中から急に眩(まぶ)しい光が射(さ)し込んできた。琴音は思わず目を閉じた。光が消(き)えて目を開けると、そこは荒涼(こうりょう)とした枯(か)れ野原(のはら)になっていた。琴音は、その場に座(すわ)り込んでしまった。
「くそっ、どうなってるのよ。逃(に)げ道はどこにもないってことなの」
琴音の目の前に、初音が姿(すがた)を現した。琴音は立ち上がると、
「懲(こ)りない人ね。また、あたしの前に現れるなんて」
初音はゆっくりと琴音に近づきながら言った。「もうあきらめたの?」
「はぁ? なに言ってるの。そんなんじゃないわよ」
「じゃあ、ここで決着(けっちゃく)をつけましょ。ここなら、誰にも邪魔(じゃま)されないし、誰にも知られることないから…。あたしたち二人だけよ。思う存分(ぞんぶん)やり合いましょ」
「そんなこと言っていいの? わたしに勝(か)ったことないくせに…。お姉(ねえ)ちゃんはバカよ。逃げ出せばよかったのに。じゃあ、ここで、わたしが楽(らく)にしてあげるわ」
<つぶやき>いよいよ因縁(いんねん)の対決(たいけつ)が…。初音は、琴音を救(すく)うことはできるのでしょうか?
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