もし、好意(こうい)を寄(よ)せている人からささやかれたら…、どうなってしまうのでしょう? 恋(こい)に落(お)ちてしまうのか、それとも――。彼の場合(ばあい)は、片思(かたおも)いをしている彼女だったので、確実(かくじつ)に恋に落ちてしまったようです。でも、彼女にとってはちょっと違(ちが)うのかもしれません。
「ねぇ、まじめクン。さっきの授業(じゅぎょう)のノート貸(か)してくんない? あたしさぁ、昨夜(ゆうべ)遅(おそ)くまで起(お)きてたから寝(ね)ちゃったのよ。だから、いいでしょ?」
彼はおどおどしながら、「あの…。ぼ、僕(ぼく)はまじめじゃなくて、真柴(ましば)です」
彼女は、彼の名前(なまえ)などどうでもよかったみたいだ。
「貸してくれんの、くれないの? どっちよ」
「まあ、いいですけど…。でも、どうして僕なんですか? 他の友達(ともだち)に頼(たの)めば…」
「だって、他(ほか)のヤツはあてにならないし。みんな、バカばっかりだから…。あたし、次(つぎ)のテストで赤点(あかてん)とるわけにいかないのよ」
ノートを受(う)け取った彼女は、パラパラめくってう~んと首(くび)をひねって、
「やっぱり分かんないわぁ。ねぇ、放課後(ほうかご)あいてる? ちょっと教(おし)えてくんない?」
彼は思わずうなずいてしまった。彼女はにっこり微笑(ほほえ)むと、
「ありがとう。じゃあ、部活(ぶかつ)が終(お)わってから来るから、ここで待(ま)っててよ」
「ええっ、そんなに……。わ、分かった。待って…ます」
<つぶやき>これは断(ことわ)れないよね。彼女に思いが伝(つた)わるといいのですが。さてどうなるか?
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