宇宙(うちゅう)ステーションから謎(なぞ)の物体(ぶったい)を発見(はっけん)したと連絡(れんらく)が入った。それは月の軌道(きどう)近くで静止(せいし)しているようだ。世界中の天文台(てんもんだい)が一斉(いっせい)に観測(かんそく)を始めた。どうやらそれは楕円形(だえんけい)の物体のようだ。もしかしたら、宇宙船(うちゅうせん)なのかもしれない。
世界中、そのニュースで持ち切りになった。より詳(くわ)しく調(しら)べたいところだが、まだ人類(じんるい)にはそこまで行くことは容易(ようい)ではない。科学者(かがくしゃ)たちは、何とか調べることはできないかと考えた。今、使えるものとなると探査機(たんさき)ぐらいしかない。ちょうど、火星(かせい)へ向かう探査機が完成(かんせい)していた。打ち上げ予定(よてい)は一週間後になっている。
世界の国々はどう対処(たいしょ)するか話し合った。排除(はいじょ)しようという意見(いけん)も出たが、それを破壊(はかい)できるような武器(ぶき)は存在(そんざい)していなかった。今のところ何の危害(きがい)も加(くわ)えられていないので、様子(ようす)を見ようということで話しはまとまったようだ。
しかし、とある強国(きょうこく)が独断(どくだん)で爆弾(ばくだん)を積(つ)んだロケットを打ち上げてしまった。その物体にぶつけて破壊しようというのだ。しかし、この計画(けいかく)は上手(うま)くいかなかった。まるで違(ちが)うところで爆発(ばくはつ)したからだ。これには世界中から非難(ひなん)が上がった。
その物体は、沈黙(ちんもく)を守っていた。こちらからの通信(つうしん)にも返事(へんじ)を返すことはなかった。理解(りかい)できなかったのか、それともこちらが通信を受け取ることができなかったのかもしれない。一週間を待つことなく、その物体は地球(ちきゅう)を離(はな)れて行った。
<つぶやき>もしこんなことが起きてしまったら。私たち人類はどんな決断(けつだん)をするのか?
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「えっ、あいつがいなくなったって? どういうことなんだ」
僕(ぼく)は、友人(ゆうじん)が失踪(しっそう)したと聞かされて思わず呟(つぶや)いた。まぁ、そんなに親(した)しかったわけでもないのだが、彼とは顔を合わせるたびにいろんな話をしたことを思い出した。ちょっと変わった奴(やつ)だったが、まさかこんなことになるなんて…。
彼と最後(さいご)に会ったのは三日前だった。学食(がくしょく)で遅(おそ)い昼食(ちゅうしょく)をしているときに僕の前に現れた。そういえば、そのとき妙(みょう)なことを言っていた。古本屋(ふるほんや)で面白(おもしろ)い本を見つけたと。詳(くわ)しいことは話してくれなかったが、時間旅行(じかんりょこう)ができるかもしれないと興奮気味(こうふんぎみ)に話していた。
数日後、僕はその友人の家に行ってみることにした。彼のことも心配(しんぱい)だったが、例(れい)の古本のことが気になっていたのだ。もしかしたら、彼の部屋(へや)にその本があるかもしれない。
何とか聞き出した住所(じゅうしょ)を頼(たよ)りに、とある家の前にたどり着(つ)いた。だが、表札(ひょうさつ)には彼のとは違(ちが)う名字(みょうじ)が記(しる)されていた。僕は躊躇(ちゅうちょ)したが、呼鈴(よびりん)を押(お)してみた。中から初老(しょろう)の婦人(ふじん)が出て来た。彼の話をしてみたが、「ここには五十年以上住んでいるが、そんな人は知らない」と言われてしまった。僕は、婦人に礼(れい)を言うとその家を後(あと)にした。
僕は、近くのバス停(てい)へ向かっていた。聞き出した住所が間違(まちが)っていたのか…、どうにもあきらめがつかなかった。バス停について時刻表(じこくひょう)を見ているとき――。ふと、どうしてここにいるのか分からなくなった。僕は、何をしにこんなところへ来たんだろうか?
<つぶやき>もしかしたら、失踪したその友人は過去(かこ)を変えてしまったのかもしれません。
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とぼとぼと歩いている女の子の目の前に、見たこともない小鳥が落ちて来た。女の子は足を止めた。瑠璃色(るりいろ)をしたその小鳥は、女の子を見上げてか弱(よわ)く鳴(な)いた。
女の子は、その小鳥を家に連れ帰った。女の子は何日もかけて小鳥の世話(せわ)をした。いつしか、二人には友情(ゆうじょう)というものが芽生(めば)え始めたのか――。世話のかいあって、小鳥は元気(げんき)になって外へ飛び出していった。
また何日かして、女の子は数人の男の子に囲(かこ)まれていた。どうやら、女の子はいじめられているようだ。突然(とつぜん)、女の子の肩(かた)に小鳥がとまった。あの瑠璃色の鳥だ。小鳥は、男の子たちに飛びかかっていった。どういう訳(わけ)か、小さな小鳥が大きくなっていく。見る間(ま)に、カラスと同じ大きさになり、ついには人間(にんげん)よりも大きくなってしまった。
周(まわ)りは大騒(おおさわ)ぎになった。大人(おとな)たちは警察(けいさつ)に通報(つうほう)し、パトカーのサイレンが響(ひび)き渡(わた)った。いつの間にか、男の子たちは逃(に)げ出していた。警官(けいかん)が駆(か)けつけたときは、女の子の前に巨大(きょだい)な怪鳥(かいちょう)が――。警官たちには、怪鳥が女の子を襲(おそ)おうとしているように見えた。
警官たちは拳銃(けんじゅう)を怪鳥に向けた。そして、女の子にこっちに来るように叫(さけ)んだ。だが、女の子は怪鳥の前に立って動こうとしなかった。怪鳥がけたたましい鳴き声を発(はっ)した。驚(おどろ)いた警官たちは、怪鳥に向かって発砲(はっぽう)してしまった。
怪鳥はゆっくりと倒(たお)れ込んだ。弾(たま)が急所(きゅうしょ)に当たってしまったのだ。それと同時(どうじ)に、女の子も怪鳥の羽毛(うもう)の上に倒れた。女の子は声にならない声で、鳥に何かを伝(つた)えようとした。
<つぶやき>どこで何が起きるか…。不可思議(ふかしぎ)な世界(せかい)へ迷(まよ)い込まないように気をつけて。
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川相琴音(かわいことね)は、どこまでも続く長い廊下(ろうか)を走っていた。すべてが白一色(しろいっしょく)なので、どれだけ走ったのかまったく分からなくなっていた。琴音は立ち止まると、後ろを振り返った。誰(だれ)も追(お)っては来ないようだ。琴音は息(いき)を整(ととの)えながら呟(つぶや)いた。
「これって…、どうなってるの。どこまで行けば出口(でぐち)があるのよ」
その時、突然(とつぜん)、目の前に扉(とびら)が現れた。琴音は警戒(けいかい)しながら扉をゆっくりと開けた。中から急に眩(まぶ)しい光が射(さ)し込んできた。琴音は思わず目を閉じた。光が消(き)えて目を開けると、そこは荒涼(こうりょう)とした枯(か)れ野原(のはら)になっていた。琴音は、その場に座(すわ)り込んでしまった。
「くそっ、どうなってるのよ。逃(に)げ道はどこにもないってことなの」
琴音の目の前に、初音が姿(すがた)を現した。琴音は立ち上がると、
「懲(こ)りない人ね。また、あたしの前に現れるなんて」
初音はゆっくりと琴音に近づきながら言った。「もうあきらめたの?」
「はぁ? なに言ってるの。そんなんじゃないわよ」
「じゃあ、ここで決着(けっちゃく)をつけましょ。ここなら、誰にも邪魔(じゃま)されないし、誰にも知られることないから…。あたしたち二人だけよ。思う存分(ぞんぶん)やり合いましょ」
「そんなこと言っていいの? わたしに勝(か)ったことないくせに…。お姉(ねえ)ちゃんはバカよ。逃げ出せばよかったのに。じゃあ、ここで、わたしが楽(らく)にしてあげるわ」
<つぶやき>いよいよ因縁(いんねん)の対決(たいけつ)が…。初音は、琴音を救(すく)うことはできるのでしょうか?
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あずさには、百合菜(ゆりな)という思いを寄(よ)せている娘(こ)がいた。彼女とは親友同士(しんゆうどうし)なのだが、まだ告白(こくはく)する勇気(ゆうき)がなかった。もしそんなことをしたら、嫌(きら)われてしまうかもしれないからだ。今は、百合菜といつも一緒(いっしょ)にいられるだけで満足(まんぞく)しようとしていた。
そんな二人に、邪魔者(じゃまもの)が割(わ)り込んできた。その男子は、百合菜に気があるようだ。ことあるごとに百合菜に近づき、彼女を独占(どくせん)しようとした。あずさは気が気でなかった。百合菜も百合菜だ。彼女は別に嫌(いや)がるわけでもなく、その男子と楽しそうにおしゃべりしたりしていた。
ある日のこと。あずさは、百合菜とその男子が一緒に帰るところを目撃(もくげき)した。彼女は思わず二人の後(あと)を追(お)いかけた。二人は人気(ひとけ)のない脇道(わきみち)に入って行く。あずさもついて行こうとして足を止めた。男子が、百合菜を塀(へい)に押(お)しつけて、いきなりキスをしようと――。
あずさが我(われ)に返ったとき、男子が目の前で倒(たお)れていた。百合菜は唖然(あぜん)としていた。あずさは自分がしたことに戸惑(とまど)い、百合菜に何か言おうとしたが言葉(ことば)にならない。そんなあずさを見て、百合菜は駆(か)け寄り言った。「助(たす)けてくれて、ありがとう」
百合菜は座(すわ)り込んでいる男子に怒(おこ)って言った。「わたしは、誰(だれ)とも親密(しんみつ)な関係(かんけい)にはならないって言ってるでしょ。誰とも付き合いたくないの。友達(ともだち)以上になれるなんて思わないで」
彼女の言葉は、あずさの心にも刺(とげ)のように突(つ)き刺(さ)さった。
<つぶやき>人それぞれ、いろんな思いがあるようです。二人はこれからどうなるのか…。
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