降り続く雨は、昼前から小振りになる予報。
「紫陽花でも見に行くか。」
やって来たのは、あじさい寺として名高い千光寺。
久留米の豪族草野氏が、栄西を招いて創建した、日本最古の禅寺である。
現在、7000株の紫陽花が、見頃を迎えている。
面白いのは、境内入口のこの梵鐘。
永和三年と彫られている。
これは北朝の年号なんだそうな。
寺を創建した草野氏は、南朝方の有力大名。
ましてやここには、懐良親王の御陵まである。
本来ならば、南朝の年号を彫るべき所なのだが・・・
この時代、草野氏が置かれた複雑な立場が、何となく窺い知れる。
『小欲』
うむ、肝に銘じよう。
さて、紫陽花はと言うと、
正に見頃である。
紫陽花には、雨がよく似合う。
少し境内の奥に行ってみよう。
懐良親王宝篋印塔。
付近には、歴代住職の墓の他、草野永経、永平、重永らの供養塔が林立する。
宝篋印塔の先の石段を登って行くと、
懐良親王の御陵がある。
斜面を埋め尽くす紫陽花。
紫陽花を立体的に鑑賞できるのも、千光寺の特徴である。
一般の墓所。
こんな華やかな墓所は、そうざらには無かろう。
小降りになるどころか、寧ろ雨脚が強まってきた。
『紫陽花には雨がよく似合う』なんて言っちゃいられないようだ。
「こりゃいかん。車に戻るぞ!」