雨上がりの朝、
私は閑静な住宅街を歩いている。
ある家の前で足を止め、玄関のチャイムを鳴らした。
「お早うございまーす。車、取りに来ましたよ。」
「あ、江島君ね。有難う、助かります。」
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今日は、前々回の投稿で書いた、亡くなった友人の父親の廃車手続きの日なのだ。
こんな事、業者に頼めば簡単だが、それでは手数料を取られてしまう。
私がそれをやれば、私の暇つぶしにもなるし、お金はかからないし、正に一石二鳥である。
親父さんからキーを受け取り、
「んじゃ、持っていきまーす。」
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先ずはスクラップ業者に持ち込まねばならない。
ここでナンバーを外し、金属の地金代金を受け取る。
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その事はいい。
何がどうとは書かないが、、、、
受付のオバサンの物言いが、
途方もなく、
無礼である!!
怒鳴りたくなる程、
無礼である!!
と、書いて置く。
怒鳴り声が喉元まで上がって来たのを何とか堪え、この会社を後にした。
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車を置いてきた以上、ここから2kmちょっと離れた軽自動車会館までは、歩いて行くしかない。
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テクテクと歩いて行くと、程なく検査登録事務所と書かれた信号が見えてくる。
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私がこの業界に身を置いたのは、今から40数年も前の話だ。
その間、車検や登録手続き等で、数千回はここに来ている計算になる。
私の人生の1ページは、この風景の中にあると言っていい。
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軽自動車の登録手続はこの先で行う。
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久留米軽自動車会館。
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幾つかある窓口を順番に回って行く。
どこかの受付のオバサンと違い、ここの受付のオバサンの親切な事と言ったら。
不慣れな私が書き間違えても、
「ごめん。ここ間違えちゃった。」
「あ、間違えましたか。そのままでよかですよ。そしたらこの後、ナンバーを返納して・・・」
嫌な顔一つせず、微に入り細に入り、懇切丁寧に対応してくれる。
思わず、カウンターに身を乗り出して、
「よしよし。」
と、頭をなでそうになったぐらいである。
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最終の申請作業も終わり、
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一時抹消完了である。
この後、自動車の解体が完全に終わった時点で、最終的な抹消手続きとなる。
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では、友人の父親が待つ家まで、散歩の続きだ。
「終わりました。これスクラップ代です。自賠責の解約は、後日しますから。」
「有難う。ごめんね、江島君。これ取っといて。」
スクラップ代金の一部を私に渡そうとする親父さん。
「いやいや、私が暇潰しでやってるだけですから。」
私が洟垂れ小僧の時から、よく知っている親父さんだ。
懸命に固辞していると、
「そんなら、漬物持ってって。」
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親父さんの漬ける漬物。
これがまた絶品なのだ。
「漬物ですか!それなら遠慮なく貰っていきます。」
ワーイ!
お駄賃で、タクアン貰っちゃった。
どうでやんしょう。
次回の完全抹消の時も漬物って事で。