我がマンションの大規模修繕工事が始まって、10日近くが経過した。
足場にはネットが張られ、私の好きな髙良山の景観もご覧の通りだ。
眺望が悪くなったのはまだいい。
目の前を、作業員が横切る生活に慣れるには、もう少し時間がかかりそうだ。
そんなある日、
ソファーに座り、鼻毛を抜きながら、ぼんやりテレビを見ていると、
「すいませーん。」
外から何やら呼びかける声が。
声の方向を見やると、
な、なんだ、藪から棒に。
うちのベランダを人が歩いているぞ。
「あのー、これからちょっと作業しますので。」
作業員の兄ちゃんは、おもむろに細い棒で、カラコロと天井壁を叩き出した。
叩くだけならまだしも、左手には謎のスプレー缶を持ってるではないか。
そ、そのスプレーはなんだ。
一体全体、どうしようって言うんだ!
こ、こら、
無礼者!!
おのれ、
そ、そこに直れ。
手打ちにしてやる。
何てね。
こんな御触書が事前に回ってきている。
(落書きではございません)
と、ちゃんと書いてある。
だがしかしだ。
どうせなら、それを逆手に取らなきゃ。
劣化箇所を示すだけなら、あんな無味乾燥なラインではなく、
例えば、クラックは『夜露死苦』、塗装剥離は『愛羅武勇』とか書けばいい。
そして、
「これは、落書きではございません。」と開き直るのだ。
・・・クビか。