長旅のスワロー号は、ヒッチハイカーを博多で降ろした後は、ゆっくりと帰巣するのみ。
鳥栖を通過中に昼時となる。
あ、そうだ。
家内は金曜の昼って、外出しているとか言ってたな。
ん?
金曜日?
それなら、鳥栖のあそこで食うってのは?
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ここだ。
『あ_マスク 手あらい』
(あ)の下の横棒は何だろう?
のっけから理解不能な張り紙に、往復ビンタをくらった気分だ。
ここは、展示場が鳥栖にあった事もあり、現役の頃、時々通っていた店である。
暖簾をくぐるのは、かれこれ8年ぶりだ。
あの頃、
《金曜日はヤクルトサービス!》
と言う、奇想天外なサービスがあった。
今もあのサービスは、やっているのだろうか?
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貼る必要がどこにあるのか理解できない、重ねられた古いポスター。
手書きのイラスト入り宣伝コピー。
それらがガムテープで貼られているのも、あの頃のままだ。
それどころか、小上がりのパーテンションは、タキロン波板という斬新さ。
これは8年前には無かった新機軸である。
そしてその接合は、無論ガムテープ。
素晴らしい!!
最早この空間は、ガムテープアートだ。
こんな目くるめく佇まいに身を置き、私は感動に打ち震えている。
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しつこいようだが、この店には金曜だけの特別サービスがある。
いや、あった。
ラーメンの隣に、チョコンとヤクルトが添えられていたのである。
《ラーメンとヤクルト》
これほど不釣り合いな組み合わせは、そうざらにはなかろう。
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勿論、その訳は聞かない。
理由など聞くのは、野暮というものだ。
黙って受け入れればいい。
ところが・・・
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「はい、サービスのゆで卵」
「えっ!」
思わず気を失いかけた。
これって・・・
もう矢も盾も堪らない。
野暮と分っちゃいるが、聞かずにはいられない。
声をうわずらせ、
「オ、オバチャン。前はヤクルトやったやん。あ、あれは、どうしたと?」
「あー、あれは、ゆで卵が無くなったら出しとったと。あんまり卵は茹でんとよ。」
何と、謎のヤクルトは次善のサービースだったのだ。
ドヒャーである。
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「はい、大盛りラーメンお待たせ。」
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もらったゆで卵は、私はこうしたい。
ポチャン
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では、
ズルズルズルズル
うん、味は変わってないね。
何も足さない、何も引かない。
色々とツッコミどころ満載だが、ラーメンは王道そのものである。
この旅では、13年越しの階段国道踏破も出来た。
恐山のお風呂にも入れた。
久慈ではウニ弁当も買えた。
長年の願いが叶えられた。
そして旅の最後の最後に、8年越しでヤクルトの謎の解明である。
そんな意味でも、良い旅だったな。(←そうか?)