小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(28)&CG
私はただ頷いて車庫に入った。すると紺のBMWが止まっていた。
「美保、車ってBMWに乗っているのか」?
「うん、左ハンドルは駄目?・・・」。
「駄目じゃないけど、乗って帰って良いのか。お父さんに叱られないか」?
「うん、だって此れはお母さんが前に乗っていた車だし、それにお母さんが買ったんだもん。父には関係ないの」。
「そう、それでお母さんは今なんの車に乗ってるの」。
「うん、たぶんジャガーじゃないかな。買い替えていなければだけど、母はカーキチでね、若い頃はレーサーだったの」。
「え~っ、そうか。それで美保も運転が上手なのか。レーサーね。此れは驚いた。じゃあ行こうか」。
美保は何のためらいもなく左のドアを開けて乗り込んだ。そして電動シャッターを開けた。そして窓を開けると棚の上にリモコンを置くとエンジンを駆けた。
BMW独特なエンジン音が鳴り渡り、ガレージを出た。そして表にいた時江に手を振るとクラクションを鳴らして実家を後にした。
そして白川町方面に走ると東山へ行く道を北へ左折した。そして宝ケ池駅に出ると車を止めた。
「京平さん、運転代わって。道を覚えた方がいいでしょう。それに車にも慣れておかないとさ」。
私は助手席から運転席へと移動してシートベルトを着けた。
久し振りの左ハンドルだった。
駅前をグルッと回って来た道を戻った。そして真っすぐ南に走ってホテルサンフラワーの通りを右折した。そして平安神宮を左に過ぎると次の交差点を左折した。そして祇園、八坂神社と過ぎて十三玄堂に向かって南下した。
そして東海道山陽新幹線のガードの手前を右折して京都駅に向かった。そしてグランドホテルの隣にある別の駐車場に入った。
「ちょうど四十分、でも夜は車が少ないから三十分で行けるわね。京平さん運転上手だね、左ハンドル乗っていたの」。
「いや、父さんが前にベンツ乗っていたからね、それで借りて乗っていたから慣れているだけだよ」。
「そう、じゃあ荷物は積んでおいても良いわよね」。
「うん、じゃあ土産を買ってホテルに戻ろう」。
そして三時過ぎには買い物を済ませてホテルに戻った。そしてフロントへ行くと。すると私達を待っていた人間がいた。
「失礼します、紺野京平さんと奥さんの美保さんですね。
私達は京都府警の土屋と佐野刑事です。高橋幸子さんの事で少しお聞きしたい事がありましてお待ちしていました。お時間戴けますか」。差し出した警察手帳を開いた。高級用紙第一頁には目の鋭い年配の土屋良也警部補と書かれていた。どうして、もう耳に入ったのかと思いながら頷いた。
「ええ、構いませんよ。アイスコーヒーを四つ頼みます」。
「はい、畏まりました」フロントマンはすぐに動いた。私は美保の肩を抱きながらロビーのボックスに腰を降ろした。
二人の刑事は真向かいに座り、手帳を開いてペンを手にした。
「では早速お聞きします。奥さんとは京大の同期と言う事ですね。最近高橋さんに会われたのはいつですか」?
「はい、幸子と久し振りに再会したのは白馬の夫のペンションです。確か六月の二十三日だったと思います。そうよね京平さん」。
「うん、間違いないよ。私たちが静岡から実家に帰った翌日だったからね。六月二十三日だよ」。
「そうですか、その時、高橋さんはお一人でしたか」?
「いいえ、会社の同僚と女性三人でペンションに泊まっていました。幸子とは大学ではそんなに仲が良い方ではありませんでした。
でも、卒業が近付くに連れて仲良しになったんです。たまに会ってはお買い物をしたりしていました。それで今年の一月に私が静岡に行ってから会っていませんでした」。
「静岡と言うと、仕事でですか」?
「いいえ、私が身体を壊して市立病院に二ケ月ほど入院したんです。その後は彼のアパートで暮らしていました」。
「では高橋さんとは半年以上お会いになっていなかったんですね」。
「はい、電話してもいつも留守でした」。
「それで次にお会いしたのはいつ頃でしょう」?
「昨日です。それもあんな姿になって。でも電話は六日の午後に夫のペンションにありました。盆休みに来る予定だった宿泊のキャンセルの電話でした」。
「そうですか、その時に何か話していませんでしたかね。例えば彼氏の事とか、金銭的な事を。貸して欲しいとか」。
「いいえ、ただ予定が変わって行かれなくなったからって。ただそれだけです。刑事さん、幸子は本当に自殺なんですか」?
「ええ、舞鶴署もそう断定したようです。一応他殺の線も考えられますので、こうしてお聞きしているんです。では真田貴明と言う名前はご存じですか」?
「ええ、良く知っています」。
「それはどんな理由からご存じなんです。ご主人の前ですが、差し障り無ければ話して頂けませんか」?
「はい、主人には全く関係ありませんし、私にも直接関係ないんです。真田貴明と言う人は私の大学の同期だった親友の佐々木友代という女性の彼だった人です。それで一度紹介されて知っているんです」。
「しかし一度会っただけでそんなに覚えている物ですかね」
「いいえ、それだけではありません。刑事さん、もう調べて知っているんでしょう。友代が捨てられて自殺した事を」。
「美保、もうこんな刑事に話さなくていい。帰ってくれないか。俺たちは善意で話しているのに、何だお前達のその聞き方は」。
私はカマを掛けるような聞き方に腹が立った。
「いや、此れは失礼しました。お詫びします。この通りです」。
そう言うと土屋はテーブルに両手を添えて頭を下げた。すると周りにいた客が私の声に驚いて見ていた。
「だったら初めから回りくどい良いかたは止めろ。あんた方はただの事件だろうが遺族や妻の立場になってみろ。京都府警の刑事は皆んなあんたと同じなのか、それでなくても不祥事続きの警察がこんな事でいいのか」。
「おう、そうだそうだ貴方の言う通りだ。警察は何をやってるんだ」と、隣でお茶を飲んでいた恰幅の良い老人が立ち上がって囃し立てていた。
するとぞろぞろと客が寄って来ていた。
「申し訳ありませんでした。皆さん私達も一生懸命やっています。どうか分かって下さい。紺野さん済みません」。
NO-28-72
私はただ頷いて車庫に入った。すると紺のBMWが止まっていた。
「美保、車ってBMWに乗っているのか」?
「うん、左ハンドルは駄目?・・・」。
「駄目じゃないけど、乗って帰って良いのか。お父さんに叱られないか」?
「うん、だって此れはお母さんが前に乗っていた車だし、それにお母さんが買ったんだもん。父には関係ないの」。
「そう、それでお母さんは今なんの車に乗ってるの」。
「うん、たぶんジャガーじゃないかな。買い替えていなければだけど、母はカーキチでね、若い頃はレーサーだったの」。
「え~っ、そうか。それで美保も運転が上手なのか。レーサーね。此れは驚いた。じゃあ行こうか」。
美保は何のためらいもなく左のドアを開けて乗り込んだ。そして電動シャッターを開けた。そして窓を開けると棚の上にリモコンを置くとエンジンを駆けた。
BMW独特なエンジン音が鳴り渡り、ガレージを出た。そして表にいた時江に手を振るとクラクションを鳴らして実家を後にした。
そして白川町方面に走ると東山へ行く道を北へ左折した。そして宝ケ池駅に出ると車を止めた。
「京平さん、運転代わって。道を覚えた方がいいでしょう。それに車にも慣れておかないとさ」。
私は助手席から運転席へと移動してシートベルトを着けた。
久し振りの左ハンドルだった。
駅前をグルッと回って来た道を戻った。そして真っすぐ南に走ってホテルサンフラワーの通りを右折した。そして平安神宮を左に過ぎると次の交差点を左折した。そして祇園、八坂神社と過ぎて十三玄堂に向かって南下した。
そして東海道山陽新幹線のガードの手前を右折して京都駅に向かった。そしてグランドホテルの隣にある別の駐車場に入った。
「ちょうど四十分、でも夜は車が少ないから三十分で行けるわね。京平さん運転上手だね、左ハンドル乗っていたの」。
「いや、父さんが前にベンツ乗っていたからね、それで借りて乗っていたから慣れているだけだよ」。
「そう、じゃあ荷物は積んでおいても良いわよね」。
「うん、じゃあ土産を買ってホテルに戻ろう」。
そして三時過ぎには買い物を済ませてホテルに戻った。そしてフロントへ行くと。すると私達を待っていた人間がいた。
「失礼します、紺野京平さんと奥さんの美保さんですね。
私達は京都府警の土屋と佐野刑事です。高橋幸子さんの事で少しお聞きしたい事がありましてお待ちしていました。お時間戴けますか」。差し出した警察手帳を開いた。高級用紙第一頁には目の鋭い年配の土屋良也警部補と書かれていた。どうして、もう耳に入ったのかと思いながら頷いた。
「ええ、構いませんよ。アイスコーヒーを四つ頼みます」。
「はい、畏まりました」フロントマンはすぐに動いた。私は美保の肩を抱きながらロビーのボックスに腰を降ろした。
二人の刑事は真向かいに座り、手帳を開いてペンを手にした。
「では早速お聞きします。奥さんとは京大の同期と言う事ですね。最近高橋さんに会われたのはいつですか」?
「はい、幸子と久し振りに再会したのは白馬の夫のペンションです。確か六月の二十三日だったと思います。そうよね京平さん」。
「うん、間違いないよ。私たちが静岡から実家に帰った翌日だったからね。六月二十三日だよ」。
「そうですか、その時、高橋さんはお一人でしたか」?
「いいえ、会社の同僚と女性三人でペンションに泊まっていました。幸子とは大学ではそんなに仲が良い方ではありませんでした。
でも、卒業が近付くに連れて仲良しになったんです。たまに会ってはお買い物をしたりしていました。それで今年の一月に私が静岡に行ってから会っていませんでした」。
「静岡と言うと、仕事でですか」?
「いいえ、私が身体を壊して市立病院に二ケ月ほど入院したんです。その後は彼のアパートで暮らしていました」。
「では高橋さんとは半年以上お会いになっていなかったんですね」。
「はい、電話してもいつも留守でした」。
「それで次にお会いしたのはいつ頃でしょう」?
「昨日です。それもあんな姿になって。でも電話は六日の午後に夫のペンションにありました。盆休みに来る予定だった宿泊のキャンセルの電話でした」。
「そうですか、その時に何か話していませんでしたかね。例えば彼氏の事とか、金銭的な事を。貸して欲しいとか」。
「いいえ、ただ予定が変わって行かれなくなったからって。ただそれだけです。刑事さん、幸子は本当に自殺なんですか」?
「ええ、舞鶴署もそう断定したようです。一応他殺の線も考えられますので、こうしてお聞きしているんです。では真田貴明と言う名前はご存じですか」?
「ええ、良く知っています」。
「それはどんな理由からご存じなんです。ご主人の前ですが、差し障り無ければ話して頂けませんか」?
「はい、主人には全く関係ありませんし、私にも直接関係ないんです。真田貴明と言う人は私の大学の同期だった親友の佐々木友代という女性の彼だった人です。それで一度紹介されて知っているんです」。
「しかし一度会っただけでそんなに覚えている物ですかね」
「いいえ、それだけではありません。刑事さん、もう調べて知っているんでしょう。友代が捨てられて自殺した事を」。
「美保、もうこんな刑事に話さなくていい。帰ってくれないか。俺たちは善意で話しているのに、何だお前達のその聞き方は」。
私はカマを掛けるような聞き方に腹が立った。
「いや、此れは失礼しました。お詫びします。この通りです」。
そう言うと土屋はテーブルに両手を添えて頭を下げた。すると周りにいた客が私の声に驚いて見ていた。
「だったら初めから回りくどい良いかたは止めろ。あんた方はただの事件だろうが遺族や妻の立場になってみろ。京都府警の刑事は皆んなあんたと同じなのか、それでなくても不祥事続きの警察がこんな事でいいのか」。
「おう、そうだそうだ貴方の言う通りだ。警察は何をやってるんだ」と、隣でお茶を飲んでいた恰幅の良い老人が立ち上がって囃し立てていた。
するとぞろぞろと客が寄って来ていた。
「申し訳ありませんでした。皆さん私達も一生懸命やっています。どうか分かって下さい。紺野さん済みません」。
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