小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(36)&CG
「はい、真田です」。
「俺だ、悪いな朝っぱらから」。
「いいえ、言われた通りあれから直ぐ旅行の支度をして和歌山の那智勝浦にある休暇村にいます。貴方が言ったようにやっぱり刑事が尾行して来ています」。
「そうか、お前の両親を確認した。あの晩話した事をもう一度録音するから話してくれ」。
「はい、一年半前の二月十日に佐々木友世さんを京都の東山にある、宝池のベンチで凍死させたのは義父の茂です。
義父茂はもう友世さんから金は取れないと分かったんです。その頃、友世さんも借金の返済を行って来ました。返さなければ被害届を出すと言い出したました。それで殺すすかないと言い出したんです。
僕に借りた金を返すから、そう言って誘い出せと。
彼女は信じて来ました。それで、自分に押さえる様に言うと、医療用の麻酔薬チオペンタールを少量注射して眠らせたんです。
あの時期は寒さで凍死する事を知っていて置き去りにして死なせたんです。
そして今年の八月五日ですが、舞鶴の戸島の海岸に高橋幸子さんを誘い出して、茂るが用意した睡眠薬入の缶ジュースを飲ませました。
30分もすると幸子さんは眠ってしまいました。
そんあ彼女を海に投げ込んで溺死させたのも義父です。義父は彼女達から金を毟り取って来いと命令したんです」。
「よし、ゆっくり遊んでいろ。それから酒は絶対飲むな」。
「はい、飲みません。一つ質問をしても良いですか」。
「なんだ、答えられれば答えてやる。言ってみろ」。
「はい、僕を仲間に入れてくれませんか。僕はいままでして来た事は自分の意志ではありませんでした。養父に恩があるからしていただけなんです。ですから僕を」。
「それは駄目だ、我々は日本国籍ではないからな。もう分かるな」。
「エッ・・・そうですか、日本語が上手ですね。分かりました、此れからは義母と二人で頑張ります」。
「そうしろ、また電話する。派手に動くな」。
私は電話を切った。まさか仲間にして欲しいなんて言われるとは思わなかった。その事を美保に話した。
「え~っ、そう。それであんな変な話しをしていたの。我々は日本国籍じゃない、なんて。カッコイイじゃん」。
美保はそう言いながら電話ボックスの中で飛び上がって喜んでいた。そして静かになると真顔になった。
「じゃあ私呼び出すね」。と美保はみそら野のペンション・マリブの電話番号を押した。
そしてじっと私の目を見詰めながら人差し指、中指、薬指と立てて「ピンポン」と言うと話し始めた。
「もしもし、ペンション・マリブさんですか。済みませんが京都の真田茂をお願いします」。そう言うとOKサインを出し、受話器を渡した。
「いて良かったね、私出ている。暑くなっちゃったよ」。と電話ボックスから出ると車からうちわを取り出して煽っていた。
すると、ゴトゴトと音がして出た。
「はい、真田です」。私はテーブレコードのスイッチを入れた。
「あっ、貴明か!・・・なんの真似だ!・・・おいっ、貴明!」
真田茂は興奮して声が上ずっていた。そしてテープを止めた。
「聞かはりましたか、わし等は何もかんも知っているんや。息子を預かってまっせ。あんたも随分あくどいんやな」。
「だ・誰だなんだ。か、金か?・・幾ら欲しいんだ」。
「そうでんな、片手でも用意してもらいまひょか。夕方までに現金にしてそこにいてくれまっか。また後で電話するよって」。
「待って、おい・・・待ってくれ。盆休みで銀行は休みだ。用意できん」。
「あんた立場を考えなはれ、なんや、その口の効き方は。わしは警察に垂れ込んでもええんやで」。
「す、済みませんでした。私の口の効き方が乱暴でした。許して下さい。お願いします。時間を下さい」。
「そうや、それでいいんや。この夏休み中でも松本信用金庫の大町支店はやな、きっちり商いしとるわい。そやかて午前中で終しまいやで。わし等ちゃんと調べてあるんや。ほな夕方に、さいなら」。
受話器を置くと、美保が声を殺して笑っていた。
「ハッハハハ・・・なあに、今度は大阪弁なんか使って。もう笑いを堪えるのが大変だったんだから。でも上手だったよ」。
「そう、会社の同僚に大坂の出身がいてね。聞き覚えの大坂弁だけど、そんなに悪くないだろ」。
「うん、どうだった。驚いていたでしょう」。
「もうビクビクもんだったよ、今頃焦って家に電話しているぞ、携帯へも。出ないと分かれば銀行へ行くから見に行こうか」。
「うん、でも本当にみそら野の銀行は営業しているの?・・・」。
「ああ、この地区はペンションやホテルや別荘が特別多いからね。盆休みで営業しているんだよ」。
「ふ~ん、そうなんだ。真田の奴一人で行くのかな」?
「うん、女房は何も知らないなら一人で行くだろうな。奴が行くか見届けたら別荘で休もうか」。
「うん、途中でスーパーに寄ってね」。
そして車を出した、ペンション沿いの道にはテニスウエアーやハイキング姿の若者たちで満ち溢れていた。
そんな中を避けるように走って白馬駅に出た。そして信用金庫の手前のインテリアの店に車を止めて展示品を見ながら待っていた。
二人は道路に面したインテリアを見ていると、五分もしない内にシルバーのベンツが店の前を走り抜けた。二人は急いで表に出ると走り去るベンツに目をやった。京都ナンバーだった。
それを見た店員は何があったのかと、二人の後を追い掛けて表に出た。ベンツは信用金庫の駐車場へ入って止まった。
「紺野さん、何かあったんですか」と二人が見ている方向をみながら店員は二人を見た。
「いいえ、いまのベンツが知り合いの車に似ていたもんだから」。
紺野は笑ってごまかした。店員は何気なく頷くと店に戻った。二人も店に戻ると別荘の修理に使う板を注文して店を出た。
「貴明の言う事は本当だったんだね、奥さんは何も知らないみたい。もし知っていれば一緒に来るもの」。
「うん、貴明の話に嘘はなかったみたいだね。お腹空いたろ?・・・」
MO-36-96
「はい、真田です」。
「俺だ、悪いな朝っぱらから」。
「いいえ、言われた通りあれから直ぐ旅行の支度をして和歌山の那智勝浦にある休暇村にいます。貴方が言ったようにやっぱり刑事が尾行して来ています」。
「そうか、お前の両親を確認した。あの晩話した事をもう一度録音するから話してくれ」。
「はい、一年半前の二月十日に佐々木友世さんを京都の東山にある、宝池のベンチで凍死させたのは義父の茂です。
義父茂はもう友世さんから金は取れないと分かったんです。その頃、友世さんも借金の返済を行って来ました。返さなければ被害届を出すと言い出したました。それで殺すすかないと言い出したんです。
僕に借りた金を返すから、そう言って誘い出せと。
彼女は信じて来ました。それで、自分に押さえる様に言うと、医療用の麻酔薬チオペンタールを少量注射して眠らせたんです。
あの時期は寒さで凍死する事を知っていて置き去りにして死なせたんです。
そして今年の八月五日ですが、舞鶴の戸島の海岸に高橋幸子さんを誘い出して、茂るが用意した睡眠薬入の缶ジュースを飲ませました。
30分もすると幸子さんは眠ってしまいました。
そんあ彼女を海に投げ込んで溺死させたのも義父です。義父は彼女達から金を毟り取って来いと命令したんです」。
「よし、ゆっくり遊んでいろ。それから酒は絶対飲むな」。
「はい、飲みません。一つ質問をしても良いですか」。
「なんだ、答えられれば答えてやる。言ってみろ」。
「はい、僕を仲間に入れてくれませんか。僕はいままでして来た事は自分の意志ではありませんでした。養父に恩があるからしていただけなんです。ですから僕を」。
「それは駄目だ、我々は日本国籍ではないからな。もう分かるな」。
「エッ・・・そうですか、日本語が上手ですね。分かりました、此れからは義母と二人で頑張ります」。
「そうしろ、また電話する。派手に動くな」。
私は電話を切った。まさか仲間にして欲しいなんて言われるとは思わなかった。その事を美保に話した。
「え~っ、そう。それであんな変な話しをしていたの。我々は日本国籍じゃない、なんて。カッコイイじゃん」。
美保はそう言いながら電話ボックスの中で飛び上がって喜んでいた。そして静かになると真顔になった。
「じゃあ私呼び出すね」。と美保はみそら野のペンション・マリブの電話番号を押した。
そしてじっと私の目を見詰めながら人差し指、中指、薬指と立てて「ピンポン」と言うと話し始めた。
「もしもし、ペンション・マリブさんですか。済みませんが京都の真田茂をお願いします」。そう言うとOKサインを出し、受話器を渡した。
「いて良かったね、私出ている。暑くなっちゃったよ」。と電話ボックスから出ると車からうちわを取り出して煽っていた。
すると、ゴトゴトと音がして出た。
「はい、真田です」。私はテーブレコードのスイッチを入れた。
「あっ、貴明か!・・・なんの真似だ!・・・おいっ、貴明!」
真田茂は興奮して声が上ずっていた。そしてテープを止めた。
「聞かはりましたか、わし等は何もかんも知っているんや。息子を預かってまっせ。あんたも随分あくどいんやな」。
「だ・誰だなんだ。か、金か?・・幾ら欲しいんだ」。
「そうでんな、片手でも用意してもらいまひょか。夕方までに現金にしてそこにいてくれまっか。また後で電話するよって」。
「待って、おい・・・待ってくれ。盆休みで銀行は休みだ。用意できん」。
「あんた立場を考えなはれ、なんや、その口の効き方は。わしは警察に垂れ込んでもええんやで」。
「す、済みませんでした。私の口の効き方が乱暴でした。許して下さい。お願いします。時間を下さい」。
「そうや、それでいいんや。この夏休み中でも松本信用金庫の大町支店はやな、きっちり商いしとるわい。そやかて午前中で終しまいやで。わし等ちゃんと調べてあるんや。ほな夕方に、さいなら」。
受話器を置くと、美保が声を殺して笑っていた。
「ハッハハハ・・・なあに、今度は大阪弁なんか使って。もう笑いを堪えるのが大変だったんだから。でも上手だったよ」。
「そう、会社の同僚に大坂の出身がいてね。聞き覚えの大坂弁だけど、そんなに悪くないだろ」。
「うん、どうだった。驚いていたでしょう」。
「もうビクビクもんだったよ、今頃焦って家に電話しているぞ、携帯へも。出ないと分かれば銀行へ行くから見に行こうか」。
「うん、でも本当にみそら野の銀行は営業しているの?・・・」。
「ああ、この地区はペンションやホテルや別荘が特別多いからね。盆休みで営業しているんだよ」。
「ふ~ん、そうなんだ。真田の奴一人で行くのかな」?
「うん、女房は何も知らないなら一人で行くだろうな。奴が行くか見届けたら別荘で休もうか」。
「うん、途中でスーパーに寄ってね」。
そして車を出した、ペンション沿いの道にはテニスウエアーやハイキング姿の若者たちで満ち溢れていた。
そんな中を避けるように走って白馬駅に出た。そして信用金庫の手前のインテリアの店に車を止めて展示品を見ながら待っていた。
二人は道路に面したインテリアを見ていると、五分もしない内にシルバーのベンツが店の前を走り抜けた。二人は急いで表に出ると走り去るベンツに目をやった。京都ナンバーだった。
それを見た店員は何があったのかと、二人の後を追い掛けて表に出た。ベンツは信用金庫の駐車場へ入って止まった。
「紺野さん、何かあったんですか」と二人が見ている方向をみながら店員は二人を見た。
「いいえ、いまのベンツが知り合いの車に似ていたもんだから」。
紺野は笑ってごまかした。店員は何気なく頷くと店に戻った。二人も店に戻ると別荘の修理に使う板を注文して店を出た。
「貴明の言う事は本当だったんだね、奥さんは何も知らないみたい。もし知っていれば一緒に来るもの」。
「うん、貴明の話に嘘はなかったみたいだね。お腹空いたろ?・・・」
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