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小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(36)&CG

2008-08-12 10:29:20 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(36)&CG

「はい、真田です」。
「俺だ、悪いな朝っぱらから」。
「いいえ、言われた通りあれから直ぐ旅行の支度をして和歌山の那智勝浦にある休暇村にいます。貴方が言ったようにやっぱり刑事が尾行して来ています」。
「そうか、お前の両親を確認した。あの晩話した事をもう一度録音するから話してくれ」。
「はい、一年半前の二月十日に佐々木友世さんを京都の東山にある、宝池のベンチで凍死させたのは義父の茂です。
義父茂はもう友世さんから金は取れないと分かったんです。その頃、友世さんも借金の返済を行って来ました。返さなければ被害届を出すと言い出したました。それで殺すすかないと言い出したんです。
僕に借りた金を返すから、そう言って誘い出せと。
彼女は信じて来ました。それで、自分に押さえる様に言うと、医療用の麻酔薬チオペンタールを少量注射して眠らせたんです。
あの時期は寒さで凍死する事を知っていて置き去りにして死なせたんです。
そして今年の八月五日ですが、舞鶴の戸島の海岸に高橋幸子さんを誘い出して、茂るが用意した睡眠薬入の缶ジュースを飲ませました。
30分もすると幸子さんは眠ってしまいました。
そんあ彼女を海に投げ込んで溺死させたのも義父です。義父は彼女達から金を毟り取って来いと命令したんです」。
「よし、ゆっくり遊んでいろ。それから酒は絶対飲むな」。
「はい、飲みません。一つ質問をしても良いですか」。
「なんだ、答えられれば答えてやる。言ってみろ」。
「はい、僕を仲間に入れてくれませんか。僕はいままでして来た事は自分の意志ではありませんでした。養父に恩があるからしていただけなんです。ですから僕を」。
「それは駄目だ、我々は日本国籍ではないからな。もう分かるな」。
「エッ・・・そうですか、日本語が上手ですね。分かりました、此れからは義母と二人で頑張ります」。
「そうしろ、また電話する。派手に動くな」。

私は電話を切った。まさか仲間にして欲しいなんて言われるとは思わなかった。その事を美保に話した。
「え~っ、そう。それであんな変な話しをしていたの。我々は日本国籍じゃない、なんて。カッコイイじゃん」。
美保はそう言いながら電話ボックスの中で飛び上がって喜んでいた。そして静かになると真顔になった。
「じゃあ私呼び出すね」。と美保はみそら野のペンション・マリブの電話番号を押した。
そしてじっと私の目を見詰めながら人差し指、中指、薬指と立てて「ピンポン」と言うと話し始めた。
「もしもし、ペンション・マリブさんですか。済みませんが京都の真田茂をお願いします」。そう言うとOKサインを出し、受話器を渡した。
「いて良かったね、私出ている。暑くなっちゃったよ」。と電話ボックスから出ると車からうちわを取り出して煽っていた。
すると、ゴトゴトと音がして出た。
「はい、真田です」。私はテーブレコードのスイッチを入れた。
「あっ、貴明か!・・・なんの真似だ!・・・おいっ、貴明!」
真田茂は興奮して声が上ずっていた。そしてテープを止めた。
「聞かはりましたか、わし等は何もかんも知っているんや。息子を預かってまっせ。あんたも随分あくどいんやな」。
「だ・誰だなんだ。か、金か?・・幾ら欲しいんだ」。
「そうでんな、片手でも用意してもらいまひょか。夕方までに現金にしてそこにいてくれまっか。また後で電話するよって」。
「待って、おい・・・待ってくれ。盆休みで銀行は休みだ。用意できん」。
「あんた立場を考えなはれ、なんや、その口の効き方は。わしは警察に垂れ込んでもええんやで」。
「す、済みませんでした。私の口の効き方が乱暴でした。許して下さい。お願いします。時間を下さい」。
「そうや、それでいいんや。この夏休み中でも松本信用金庫の大町支店はやな、きっちり商いしとるわい。そやかて午前中で終しまいやで。わし等ちゃんと調べてあるんや。ほな夕方に、さいなら」。

受話器を置くと、美保が声を殺して笑っていた。
「ハッハハハ・・・なあに、今度は大阪弁なんか使って。もう笑いを堪えるのが大変だったんだから。でも上手だったよ」。
「そう、会社の同僚に大坂の出身がいてね。聞き覚えの大坂弁だけど、そんなに悪くないだろ」。
「うん、どうだった。驚いていたでしょう」。
「もうビクビクもんだったよ、今頃焦って家に電話しているぞ、携帯へも。出ないと分かれば銀行へ行くから見に行こうか」。
「うん、でも本当にみそら野の銀行は営業しているの?・・・」。
「ああ、この地区はペンションやホテルや別荘が特別多いからね。盆休みで営業しているんだよ」。
「ふ~ん、そうなんだ。真田の奴一人で行くのかな」?
「うん、女房は何も知らないなら一人で行くだろうな。奴が行くか見届けたら別荘で休もうか」。
「うん、途中でスーパーに寄ってね」。
そして車を出した、ペンション沿いの道にはテニスウエアーやハイキング姿の若者たちで満ち溢れていた。
そんな中を避けるように走って白馬駅に出た。そして信用金庫の手前のインテリアの店に車を止めて展示品を見ながら待っていた。
二人は道路に面したインテリアを見ていると、五分もしない内にシルバーのベンツが店の前を走り抜けた。二人は急いで表に出ると走り去るベンツに目をやった。京都ナンバーだった。
それを見た店員は何があったのかと、二人の後を追い掛けて表に出た。ベンツは信用金庫の駐車場へ入って止まった。
「紺野さん、何かあったんですか」と二人が見ている方向をみながら店員は二人を見た。
「いいえ、いまのベンツが知り合いの車に似ていたもんだから」。
紺野は笑ってごまかした。店員は何気なく頷くと店に戻った。二人も店に戻ると別荘の修理に使う板を注文して店を出た。
「貴明の言う事は本当だったんだね、奥さんは何も知らないみたい。もし知っていれば一緒に来るもの」。
「うん、貴明の話に嘘はなかったみたいだね。お腹空いたろ?・・・」
MO-36-96

小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(35)&CG

2008-08-12 10:25:39 | 小説・鉄槌のスナイパー(第一章)
小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(35)&CG

「それで、此れからどうするの?・・・」。
「うん、帰ろう。マリブへ行こう。近くまで来たから寄った事にして貴明の両親の顔を覚えないと」。
「だったら早く行かないと出掛けちゃうかも」。
「そうか。じゃあ今から車を乗り換えて行こう。五時を回ったばかりだから食事の時に顔を見られる」。
「うん、でもどして車を乗り換えるの」。
「京都ナンバーだと聞かれたら困るだろ」。
「そうか、私ったら馬鹿だね」。
家に帰ると車を乗り換えるて出掛けた。母は帰ったのかと表に出てた。そして美保の車を見てポカ~ンと見ていた。
「全く」。母は止してよと言う素振りで眉を挙げて家の中へ入った。
そして数十分、みそら野に着くとペンション・マリブの前に車を止めた。すると、突然クラクションを鳴らした。窓から顔を出すと
「おい、そこはわしの駐車場や、車を動かしてくれ」。見ると京都ナンバーのベンツだった。
「美保、乗って。見るな、早く乗って」。
美保は何が何だか分からないままドアを閉めた。そしてバックさせると反対側の駐車場へ車を止めた。
「なんて言い草なの、わしの駐車場や・・・あのナンバー・・・京平さん」。
「うん、貴明の家の車庫にあったベンツだ。貴明の父親だよ。横暴な男だ。あれでも医者だから参るよな」。
「うん。あっ、降りて来た。ひどい顔、あれで良く奥さん貰えたわね。見て、ペンションから出て来た人が奥さんじゃない」?
見ると、白のパンツスーツを着てスラットした細身の奇麗な奥さんだった。そして車から降りた男に近付いて頭を下げていた。
真田貴明の義父はモサッとした陰気の感じの悪い中年男だった。そして男の後ろから女房がつづいてペンションの中に姿を消した。
「どうする、降りてオーナーに顔を出すの」?
「いや、止そう。夕食の支度で忙しいだろうから。それに真田の顔さえ分かればそれでいい。帰ろう」。
「うん、ねえ帰りに薬局に寄ってくれない」。
「ああ、良いけど。どうしたの、身体の具合でも悪いのか」。
「ううん、あれ・・・・もう鈍いんだから」。
「ああ、そうか。ごめんごめん、分かったよ。生理だろ」。
「いや~もう、意地悪なんだから。早く帰ろうよ」。
美保は恥ずかしそうに俯いていた。そんな美保が意地らしくてならなかった。
夫婦とは言え、恥じらいは幾つになっても持ちづづけて欲しいと思った。そして薬局に寄って家に帰った。
そして翌日、私は早く目が覚めてしまい、時計を見るとまだ五時を回ったばかりだった。美保はグッスリ眠っていた。そっとベッドから出た。
すると腕を握った。「もう目が覚めたの」。
「なんだ起きてイたのか、ジュース持って来るよ。喉乾いた」。
「だったら私が持って来ます。何でも良い?・・・」。
美保はベッドから跳ね起きるとキスして部屋を出て行った。するとドアの隙間から話し声が聞こえた。ドアを開けて覗くと母も起きていた。
「どうしたの京平まで、こんなに早く起きて」。
「お早よう。別に理由なんかないよ。目が覚めたら美保をお越しちゃっただけだよ。母さん別荘に行って来るよ。このあいだ切った木も割っておかなきゃならないし、少し修理もしたいから」。
「いいわよ、美保さんも連れて行くんでしょう」?
「美保はどうする、もう少し寝ているか?・・・」。
「ううん、私も行きたい。お義母さん良いですか?・・・」。
「ええ、いいわよ。昨日お父さんから聞かなかったの。ペンションの方はいいからゆっくりなさい」。
「お聞きしましけど、じゃあお言葉に甘えさせて頂きます。でも用があったら言って下さいね」。
「はいはい。それで、飲み物でも取りに来たんでしょう。好きなものを持ってっていいですよ」。
母はそう言って部屋へ戻った。私と美保はカウンターの冷蔵庫からオレンジジュースとコーラーを持って帰った。
それでも早すぎると思い、ベッドへ入った。しかし眠れずテレビを点けた。
「京平さん、あの件だけど。何処へ呼び出すか決めたの?・・」。
「その事だけど、幸子さんの自殺に関して僕等は無関係じゃないからさ、真田をこの白馬の近郊で始末したら疑いをかけられる事は間違いないと思う。
だから夫婦揃って軽井沢のペンションか、貸し別荘に移るように話を進めようと思っているんだ」。
「でもこの時期にペンション空いているかしら」。
「うん、それは問題ないと思う。先月の月末にやったペンションのオナー会議の時に軽井沢観光協会の人がいてね、景気が悪くて随分空きがあるって困っていたから。あの口ぶりならキャンセル待ちなんて事はないと思う」。
「それで、どうやって話しを進めるの?・・・」。
「計画はこうだ。息子の貴明を人質にしている事にする。きっと電話で安否を確かめるだろう」。
「そうか。それで家を出て電話には絶対出るなって言ったのね、流石だな京平さんは、もう昨日の内に頭にあったんだ」。
美保は半身になって胸に乗ると顎を乗せてじっと目を見詰めていた。
「それからどうするの?・・・」。
「ともかく相手には営利目的だと思わせる事が肝心だからね。口止め料を催促する。まず一千万くらい要求してみる。
それで真田の出方を見てから徐々に上乗せして、精神的に追い詰めてやるよ。会話はあのテーブレコーダーで録音してね」。
「きっと驚くわよ、家に電話しても携帯に電話しても息子が出ないとなると信じるしかないものね」。
「うん。貴明にもう一度話しを訊く。それを録音してを聞かせれば観念するさ。
貴明にはあの晩の話しは録音していると脅かしておいたから、言う事を聞かざるを得ないならね」。
「ウフッ・・・凄い張ったり、それも営業で身に着けたの?・・・」。
「そう言う事かな、粘りと誠意と張ったりだからね営業なんて」。
そして六時を回ると起き出して着替えた。そして少しばかりの着替えを持って家を出た。そして公衆電話の前で車を止めるとテープレコーダーを出して真田貴明に電話した。そして合図した通り、過ぐに切るとかけ直した。
まだ七時だと言うのにすぐに出た。
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