小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(32)&CG
「はい、家の明かりはそのままで裏から出るんですね」。
「復唱するな、黒い服を着て誰にも見られるな。分かったな」。
私は時計を見ながら受話器を置いた。そして宝池に向かった。そして見付けておいた場所に車を止めると真田の来るのを待った。
すると、一台のタクシーが池の反対側で止まった。目を凝らして見ると紙袋を下げた真田貴明だった。そして佐々木友世が殺されていたベンチに向かって歩いていた。
私は車を離れ、ベンチの真後ろの草むらに身体を潜めて待った。
真田は辺りをキョロキョロ見回しながらベンチに座った。
予定より五分ほど早く到着した。
「振り向くな、その間まで聞け。袋をそっと後ろに投げろ」。
言われるまま紙袋をガサガサ音をさせて丸めてそっと投げた。ドサッと草むらに落ちた袋を拾った。
「どうして殺した、結婚を迫ったからか?・・・」。
「聞いて下さい。自分は誰も殺していません。父が、父が二人を殺したんです。二人から献いで貰った金も父に言われて取ったんです。自分は父の命令で次から次へ女から金を」。
「そうか、思った通りだ。それは言い逃れや嘘じゃないだろうな」。
「はい、あんな父は親だと思っていません。だってそうでしょう、息子に紐をやれなんて親が何処にいますか」。
「なるほどな、思ったとおりだな。今の話しは録音したからな。それでお前のアリバイがちゃんとしていたのか」。
「自分が話した事は父には言わないで下さい。殺されてしまう」。
「それで両親は何処へ行ったんだ」。
「長野県の松本です。松本のみそら野のペンション・マリブとか言う所へ今日から一週間の予定で旅行に行きました」。
「お前いま言った事は事実か。どうして父親が息子のお前にそんな事をさせるんだ。誰が考えても変だろ」。
「自分は養子で本当の親子じゃないです。自分は医者になれなかった事を恨んで詐欺師みいな事をさせられるようになったんです」。
私はその話しに嘘はないと思った。
「父親をどうして欲しい」。
「あんな父は要らない、家を出て一人で暮らしたいです。自分はいつも能無しだ、バカだって言われ続けて来ました。あのベンツだって女が引っ掛かり易いからって買わされたんです。
家を出ようにも育てて貰った恩があります。母は父とは違って自分を可愛いがってくれます。そんな母を一人残して家を出られないんです」。
「本当はな、お前を殺しに来た。でも気が変わった。こっちを見ろ」。
「いえ、見ない方が良いです。見れば殺されます。貴方は九州や大坂で要人を殺したスナイパーでしょう」。そういう声は震えていた。
そうか、そう思い込んでいるのか。じゃあそれを使うか。計画を変更した。
「分かっていたのか、この金はどうやって集めたんだ」。
「はい、父の通帳から黙って降ろしました。・・・また叱られます」。
「そうか、じゃあこの金は父親を始末する代金として貰おう。足りないが後でまた貰いに来る。
お前と母親は生かしておいてやる。でも忘れるな、一言でも喋ったら二人の命はないからな」。
「はい、有り難うございます。決して誰にも話しません。済みません、もし警察に父の通帳から降ろしたお金の事を聞かれたらどう話せばいいですか」?
「そんなの適当に考えろ。仲間がお前を見張っているからな、それから真面目に働け、女を食い物にした時は分かっているな」。
「はい、恩は決して忘れません。まじめに働きます。失礼します」。
「おい、それを持ってけ。裏から入れよ」。
私は袋から一つの束を真田の足元に投げた。真田は拾うとポケットに入れ、タクシーを降りた方へ歩いて行った。
私は銃をホルダーに戻し、小さくなって行く真田貴明を見ていた。まさか、父親が息子に女から金を巻き上げさせていたとは想像もしていなかった。
すると、真田は通り掛かったタクシーを拾うと乗り込んだ。京平はそれを確認すると車に戻り、ホテルに戻ると駐車場に入れて非常階段から部屋に戻った
「お帰りなさい、こっは上手く行きました。どうでした?・・」。
「うん。美保、聞いて驚くなよ。真田貴明は二人を殺してない。父親だ」。
「エ~ッ・・・でもどうして父親が殺すの」。美保は愕然と見詰めていた。
私は真田から話を聞いた通りに話した。
すると、信じられないように目を丸くして驚いて聞いていた。
「嘘~っ、まさかそんな事ってあるの。そう、貴明は養子だったの。でもその話しに間違いはないの。貴明は自分が生き延びたいために嘘をついてるんじゃないの」?
「いや、あれは真実を話しているよ。刑事が言っていたろ、息子にはしっかりしたアリバイがあったって。
まさか息子の付き合っている女性を父親が殺したとは警察だって考えないさ。ましてタクシーの運転手まで貴明の事を悪く言うんだからね。荒手の稼ぎ方だよな」。
「そう、それで貴明を許してやったんだ。じゃあ父親ね」。
「うん、それが今日から一週間の予定で安墨野のベンション・マリブに行っているんだってさ」。
「えっ、マリブさんだったら知り合いじゃない。どうするの」?
「うん、この金は代償に貰って来た。真田の奴、一千万用意してあった。百万は貴明にくれてやったよ。金がないと困るだろ」。
「まったく人が良いんだから。そう、父親が首謀者だったの」。
美保は自分の父親の事が不図思い出していた。自分の父親も会社の為に娘の自分を財産家に嫁がせようとしていた事を。
そして貴明に同情のような感情が生まれているを感じていた。
「でもこっちは旨く行ったのよ。ベルボーイの人ったらシャワー室に貴方が本当にいると思ってね、頭を下げてったわよ。私帰ってから笑っちゃった」。
「そうか、でもこうなって良かったかも知れないな。帰りに真田の家の前を通ったら、あの刑事がまだ車の中で張っていた。始末していたら大騒ぎになっていたな」。
「まだって、行くときも居たの」。
「うん、だから明かりを着けたまま裏か出てタクシーで来させた」。
「じゃあ私達が騒いだから調べてくれる気持ちになったのね。でも父親が首謀者ならあの刑事も空振りね。それでどうするの、もし貴明が刑事に話したら」。
「いや、それはないよ。貴明は父親に言われて女性を食い物にして金を献がせていたにすぎないからね。それに貴明は僕たちを例の殺し屋だと信じている。少し脅かしておいた」。
NO-32-84
「はい、家の明かりはそのままで裏から出るんですね」。
「復唱するな、黒い服を着て誰にも見られるな。分かったな」。
私は時計を見ながら受話器を置いた。そして宝池に向かった。そして見付けておいた場所に車を止めると真田の来るのを待った。
すると、一台のタクシーが池の反対側で止まった。目を凝らして見ると紙袋を下げた真田貴明だった。そして佐々木友世が殺されていたベンチに向かって歩いていた。
私は車を離れ、ベンチの真後ろの草むらに身体を潜めて待った。
真田は辺りをキョロキョロ見回しながらベンチに座った。
予定より五分ほど早く到着した。
「振り向くな、その間まで聞け。袋をそっと後ろに投げろ」。
言われるまま紙袋をガサガサ音をさせて丸めてそっと投げた。ドサッと草むらに落ちた袋を拾った。
「どうして殺した、結婚を迫ったからか?・・・」。
「聞いて下さい。自分は誰も殺していません。父が、父が二人を殺したんです。二人から献いで貰った金も父に言われて取ったんです。自分は父の命令で次から次へ女から金を」。
「そうか、思った通りだ。それは言い逃れや嘘じゃないだろうな」。
「はい、あんな父は親だと思っていません。だってそうでしょう、息子に紐をやれなんて親が何処にいますか」。
「なるほどな、思ったとおりだな。今の話しは録音したからな。それでお前のアリバイがちゃんとしていたのか」。
「自分が話した事は父には言わないで下さい。殺されてしまう」。
「それで両親は何処へ行ったんだ」。
「長野県の松本です。松本のみそら野のペンション・マリブとか言う所へ今日から一週間の予定で旅行に行きました」。
「お前いま言った事は事実か。どうして父親が息子のお前にそんな事をさせるんだ。誰が考えても変だろ」。
「自分は養子で本当の親子じゃないです。自分は医者になれなかった事を恨んで詐欺師みいな事をさせられるようになったんです」。
私はその話しに嘘はないと思った。
「父親をどうして欲しい」。
「あんな父は要らない、家を出て一人で暮らしたいです。自分はいつも能無しだ、バカだって言われ続けて来ました。あのベンツだって女が引っ掛かり易いからって買わされたんです。
家を出ようにも育てて貰った恩があります。母は父とは違って自分を可愛いがってくれます。そんな母を一人残して家を出られないんです」。
「本当はな、お前を殺しに来た。でも気が変わった。こっちを見ろ」。
「いえ、見ない方が良いです。見れば殺されます。貴方は九州や大坂で要人を殺したスナイパーでしょう」。そういう声は震えていた。
そうか、そう思い込んでいるのか。じゃあそれを使うか。計画を変更した。
「分かっていたのか、この金はどうやって集めたんだ」。
「はい、父の通帳から黙って降ろしました。・・・また叱られます」。
「そうか、じゃあこの金は父親を始末する代金として貰おう。足りないが後でまた貰いに来る。
お前と母親は生かしておいてやる。でも忘れるな、一言でも喋ったら二人の命はないからな」。
「はい、有り難うございます。決して誰にも話しません。済みません、もし警察に父の通帳から降ろしたお金の事を聞かれたらどう話せばいいですか」?
「そんなの適当に考えろ。仲間がお前を見張っているからな、それから真面目に働け、女を食い物にした時は分かっているな」。
「はい、恩は決して忘れません。まじめに働きます。失礼します」。
「おい、それを持ってけ。裏から入れよ」。
私は袋から一つの束を真田の足元に投げた。真田は拾うとポケットに入れ、タクシーを降りた方へ歩いて行った。
私は銃をホルダーに戻し、小さくなって行く真田貴明を見ていた。まさか、父親が息子に女から金を巻き上げさせていたとは想像もしていなかった。
すると、真田は通り掛かったタクシーを拾うと乗り込んだ。京平はそれを確認すると車に戻り、ホテルに戻ると駐車場に入れて非常階段から部屋に戻った
「お帰りなさい、こっは上手く行きました。どうでした?・・」。
「うん。美保、聞いて驚くなよ。真田貴明は二人を殺してない。父親だ」。
「エ~ッ・・・でもどうして父親が殺すの」。美保は愕然と見詰めていた。
私は真田から話を聞いた通りに話した。
すると、信じられないように目を丸くして驚いて聞いていた。
「嘘~っ、まさかそんな事ってあるの。そう、貴明は養子だったの。でもその話しに間違いはないの。貴明は自分が生き延びたいために嘘をついてるんじゃないの」?
「いや、あれは真実を話しているよ。刑事が言っていたろ、息子にはしっかりしたアリバイがあったって。
まさか息子の付き合っている女性を父親が殺したとは警察だって考えないさ。ましてタクシーの運転手まで貴明の事を悪く言うんだからね。荒手の稼ぎ方だよな」。
「そう、それで貴明を許してやったんだ。じゃあ父親ね」。
「うん、それが今日から一週間の予定で安墨野のベンション・マリブに行っているんだってさ」。
「えっ、マリブさんだったら知り合いじゃない。どうするの」?
「うん、この金は代償に貰って来た。真田の奴、一千万用意してあった。百万は貴明にくれてやったよ。金がないと困るだろ」。
「まったく人が良いんだから。そう、父親が首謀者だったの」。
美保は自分の父親の事が不図思い出していた。自分の父親も会社の為に娘の自分を財産家に嫁がせようとしていた事を。
そして貴明に同情のような感情が生まれているを感じていた。
「でもこっちは旨く行ったのよ。ベルボーイの人ったらシャワー室に貴方が本当にいると思ってね、頭を下げてったわよ。私帰ってから笑っちゃった」。
「そうか、でもこうなって良かったかも知れないな。帰りに真田の家の前を通ったら、あの刑事がまだ車の中で張っていた。始末していたら大騒ぎになっていたな」。
「まだって、行くときも居たの」。
「うん、だから明かりを着けたまま裏か出てタクシーで来させた」。
「じゃあ私達が騒いだから調べてくれる気持ちになったのね。でも父親が首謀者ならあの刑事も空振りね。それでどうするの、もし貴明が刑事に話したら」。
「いや、それはないよ。貴明は父親に言われて女性を食い物にして金を献がせていたにすぎないからね。それに貴明は僕たちを例の殺し屋だと信じている。少し脅かしておいた」。
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