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刻塚-(NO-24)

2009-11-25 12:34:21 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-24)

「はい、何かあった事は確かです。翌日は馬場さんのマイクロバスで別所まで送って貰ったんですけど、シートの下に泥だらけのシャベルがシートに包まれて隠す様に置いてありました。それから、一週間の予定を終えて五月五日には東京へ戻りました。そして家に帰ったら宮本さんから電話があったと母が言うんです。それで着替えて電話しようとしたら、宮本さんから電話が入ったんです。
宮本さんが言うには、馬場と仁科は只の泥棒だって言うんです。あの晩、塚から小判が何枚も見付かったんだそうです」。

「エ~ッ・・・それは本当かね」老人はムッとした様に睨みつけた。公子は驚いた様に肩を竦めると頷いた。
「お爺さん、公子は言い伝えを守って行ってないんだ。そんな目で見るなよ。怖がっているじゃないか」。
「お父さんいいんです、黙っていた私が悪いんですから」。
「それから、公子さん貴方は馬場達から威されていたんじゃないのか」猿渡は溜め息交じりに見詰めた。すると、公子はポロッと涙を流した。

「はい、その数日後に勤め先に馬場さんが訪ねて来ました。宮本さんから聞いた事は黙っていろと、もし警察に届けたら私も仲間だったと言うからって。
それに、会社にも話すと言われました。それで私は何も言えずに黙っていました。
それであの事故です、八月に両親が交通事故で他界しました。
そしたら、父に二千万の借金がある事が分かったんです。小さな町工場をしていた両親は、この不景気でローン会社から借りていたんです。
それで土地を売って返済しようとしたら、土地も銀行の担保に入っていて、生命保険までがローン会社の担保になっていたんです。
私の貯金なんか知れています、両親のお葬式を出すのがやっとで、債権者から裸同然で家を追い出されてしまいました。
そんな時に馬場さんが現れたんです、黙ってこれを使えと分厚い封筒を私に。でもお断りしました。そしたら、今夜から泊まる所もないんだろうって、正直、私のお財布には数千円しかありませんでした。私は封筒を受け取ってしまいました。
二百万円も入っていました。今後何があっても口をつぐんでいろ、いいな。そう言って帰りました。それから私の前には現れませんでした。
それから私は、そのお金でアパートを借りて今の会社に入りました」。
山田英伸は肩を震わせて泣いていた。

「公子、どうして私の所へ来なかった。ここはお前の家だと言ったじゃないか」。
「お父さん、御免なさい。御免なさい」。そう言って公子は手を合わせていた。
「それは仕方ないよ公子さん、自分がその立場にいたらその金を受け取るさ。じゃあそれっきり馬場と仁科から連絡はないんだね」。猿渡は優しく問い掛けた。
「はい、一度もありません。でもいつ来るかって毎日脅えていました」。
「馬場と仁科はもういません、去年の九月に殺されていました」
「エッ・・・殺されたってどう言うことです。宮本さん達を殺したのは馬場さん達じゃなかったんですか」。公子は愕然と猿渡を見た。
「ええ、実は昨日一時塚から白骨死体が二体発見されましてね。二人が身に付けていた服に免許証が入っていまして。馬場伸雄と仁科孝司の免許証でした。
それから、コンビニの袋がありましてね。中に残されていたレシートから去年の九月二十日に買った物と判明しました」。

「そんな、では宮本さんや浜崎さん達四人を殺したのは誰なんです・・・まさか、私達の誰かですか」公子の驚き様は半端じゃなかった。
すると、そこへ山田刑事が戻って来た。そして公子を見て驚いていた。
「公子さん・・・やっぱり公子さんだろ。親父、どうして?・・・猿渡さん」。
「お姉さんの公子さんですよ」猿渡はそう言うと簡単に説明した。
「そう、去年の五月に来た人達と一緒だったの。でもどうして連絡しなかったの、
親父公子公子って心配していたんだぞ。俺はまだ九才だったけどさ、実の姉さんだと思っていたのに」。と政男は目に一杯に涙を溜めていた。

「ごめんね政男ちゃん、政男ちゃん刑事さんなんだってね。知っていたら相談していた」と、公子は立ち上がると山田刑事に抱き着いて泣き出した。
「政男、部屋へ連れてって休ませてやりなさい。猿渡さんいいですね」。
「ええ、もう用は済みましたから」と、猿渡は頷いた。
「はい、姉さんちょっと待っていて。警部補、これは大谷刑事と二人の白骨死体の解剖所見です」と、山田刑事は書類を渡すと一礼し、公子を連れて出て行った。
「猿渡君、どう言う事なの。馬場信雄と仁科孝司は誰に殺されたの、貴方の事だからもう分かっているんでしょう。教えなさいよ」。まるで恋人の様に話す手島加奈に、麻代は少々焼きもちを抱いた。そして業と猿渡に寄り添ってお茶を入れていた。