小説・鉄槌のスナイパー・一章・NOー(6)CG
その日も同じだった、まるで味の無い番組になってNHKの特色がなくなっていた。テレビを消してビデオを観ていた。
すると、何処からか除夜の鐘が聞こえて来た。時計に視線を向けると、もうこんな時間か、零時を過ぎていた。
私は思い出しように受話器を持った、そして実家に電話を入れた。
すると、母が出て怒っていた。何の相談もなく連絡もせずに転勤した事に腹を立てていたのだ。
私は黙って聞いて謝った。断れば首を切られるとはとても言えなかったからだ。
母は言うだけ言うとスッキリしたのか、ご飯はちゃんと食べているのか、寒くないのかと、後は私の体の事を心配していた。
一人っ子の私には三十を過ぎたとて子供扱いだった。そして父は「頑張れ」と一言いうと電話を切った。
そして一月五日、寝正月もあっと言うまに過ぎて六日の朝を迎えた。
歩いて十分の支社へ向かった。何度も出張で来て社員の顔は覚えていた。そしてドアを開けた。「お早ようございます、所長」。
既に全員が揃って次々に挨拶を交わし、奥のデスクに着いた。社員と言っても本社の部課の半分以下の人数だった。
「近藤所長、随分急な転勤でしたね、住まいは決まったんですか」と次長の向坂保が少し戸惑ったような顔をしていた。
「ああ、知り合いの不動産に無理言って頼んだら、敷地にあるハイツ・ライフと言うアパートの101号室を借りられたよ。
若い夫婦が入る事になっていたらしいんだけど、急にキァンセルになったらしくてね。歩いて十分だよ」。
「そうですか、そこなら自分も知ってイます。前任の長谷川さんが会社に抗議して社宅を出でくれなくて自分も困っていたんです」。
「そう、詳しい事は知らないけど、長谷川さんに何かあったの」?
「ええ、たいした額じゃないんですが、使い込みがあったらしいんです。長谷川さんは否定しているそうですがね。あんなに実直そうな人なのに、自分達も驚いているんです。それで解雇する代わりに平に格下げですからね、上の女の子は今年大学受験です、下の女の子は今年高校ですから困っているでしょう」。
「まあ額が大きい小さいはともかく、流用した事には違いない。懲戒解雇にならなかっただけでも儲けものだと思わないとね」。
こうして朝礼をして社員は事務員の二人を残して八人の営業社員は年始回りを兼ねて仕事に出て行った。
私は引き継ぎもなく、座った支社長の席で二人の事務員に話を聞きながら仕事の引き継ぎを行っていた。
そして十時を過ぎたころ、前任の長谷川支社長が髪をセットして普段着姿で顔を出した。そして私を呼んだ。そして外に出た。
「近藤さん、私は嵌められましたよ。忠告しておきます、次長の向坂には気を付けて下さい。奴は専務のスパイですからね」。
「まさか、そうなんですか?・・・」
「ええ、確かです。こうなったのは私の定期預金が十一月一杯で満期になんですが、その前に娘の受験でどうしても金が必要になりましてね、満期になったら返済すれば良いと言う事を向坂が言い出しましてね、私は彼を信用して百万程流用してしまったんです。
そうしたら、その事を満期になる一月前に専務にチクったんです。確かに会社から借りれば良かったんだが、会社に弱みを握られるのも何だと思いましてね。
今更平から出来ません。先程会社と話したら退職金はちゃんと降りると言われまして退社する事にしました」。
「そうでしたか、そんな事情があったんですか。私もいつ寝首を欠かれるか分かりませんね、用心しますよ」。
「ええ、それだけ伝えておきたかったもので。近藤さんには迷惑をかけました。明日にも引っ越しますから」。
長谷川は腹をくくったのか、以外とサバサバしていた。そして窓から心配そうに見ていた事務員に手を振って帰っていった。
私は聞きたくなかった、此れで次長の向坂を信じられなくなったと言う事だ。そう思うと途端に気が重くなった。
こうして十日、二十日と過ぎ、私は大事な取引の商談事は向坂に相談して決められなくなっていた。
そして一月二月と過ぎ、支社長としての役職にも慣れ、営業成績も横這いから上昇し初めていた。
NO-6-12
その日も同じだった、まるで味の無い番組になってNHKの特色がなくなっていた。テレビを消してビデオを観ていた。
すると、何処からか除夜の鐘が聞こえて来た。時計に視線を向けると、もうこんな時間か、零時を過ぎていた。
私は思い出しように受話器を持った、そして実家に電話を入れた。
すると、母が出て怒っていた。何の相談もなく連絡もせずに転勤した事に腹を立てていたのだ。
私は黙って聞いて謝った。断れば首を切られるとはとても言えなかったからだ。
母は言うだけ言うとスッキリしたのか、ご飯はちゃんと食べているのか、寒くないのかと、後は私の体の事を心配していた。
一人っ子の私には三十を過ぎたとて子供扱いだった。そして父は「頑張れ」と一言いうと電話を切った。
そして一月五日、寝正月もあっと言うまに過ぎて六日の朝を迎えた。
歩いて十分の支社へ向かった。何度も出張で来て社員の顔は覚えていた。そしてドアを開けた。「お早ようございます、所長」。
既に全員が揃って次々に挨拶を交わし、奥のデスクに着いた。社員と言っても本社の部課の半分以下の人数だった。
「近藤所長、随分急な転勤でしたね、住まいは決まったんですか」と次長の向坂保が少し戸惑ったような顔をしていた。
「ああ、知り合いの不動産に無理言って頼んだら、敷地にあるハイツ・ライフと言うアパートの101号室を借りられたよ。
若い夫婦が入る事になっていたらしいんだけど、急にキァンセルになったらしくてね。歩いて十分だよ」。
「そうですか、そこなら自分も知ってイます。前任の長谷川さんが会社に抗議して社宅を出でくれなくて自分も困っていたんです」。
「そう、詳しい事は知らないけど、長谷川さんに何かあったの」?
「ええ、たいした額じゃないんですが、使い込みがあったらしいんです。長谷川さんは否定しているそうですがね。あんなに実直そうな人なのに、自分達も驚いているんです。それで解雇する代わりに平に格下げですからね、上の女の子は今年大学受験です、下の女の子は今年高校ですから困っているでしょう」。
「まあ額が大きい小さいはともかく、流用した事には違いない。懲戒解雇にならなかっただけでも儲けものだと思わないとね」。
こうして朝礼をして社員は事務員の二人を残して八人の営業社員は年始回りを兼ねて仕事に出て行った。
私は引き継ぎもなく、座った支社長の席で二人の事務員に話を聞きながら仕事の引き継ぎを行っていた。
そして十時を過ぎたころ、前任の長谷川支社長が髪をセットして普段着姿で顔を出した。そして私を呼んだ。そして外に出た。
「近藤さん、私は嵌められましたよ。忠告しておきます、次長の向坂には気を付けて下さい。奴は専務のスパイですからね」。
「まさか、そうなんですか?・・・」
「ええ、確かです。こうなったのは私の定期預金が十一月一杯で満期になんですが、その前に娘の受験でどうしても金が必要になりましてね、満期になったら返済すれば良いと言う事を向坂が言い出しましてね、私は彼を信用して百万程流用してしまったんです。
そうしたら、その事を満期になる一月前に専務にチクったんです。確かに会社から借りれば良かったんだが、会社に弱みを握られるのも何だと思いましてね。
今更平から出来ません。先程会社と話したら退職金はちゃんと降りると言われまして退社する事にしました」。
「そうでしたか、そんな事情があったんですか。私もいつ寝首を欠かれるか分かりませんね、用心しますよ」。
「ええ、それだけ伝えておきたかったもので。近藤さんには迷惑をかけました。明日にも引っ越しますから」。
長谷川は腹をくくったのか、以外とサバサバしていた。そして窓から心配そうに見ていた事務員に手を振って帰っていった。
私は聞きたくなかった、此れで次長の向坂を信じられなくなったと言う事だ。そう思うと途端に気が重くなった。
こうして十日、二十日と過ぎ、私は大事な取引の商談事は向坂に相談して決められなくなっていた。
そして一月二月と過ぎ、支社長としての役職にも慣れ、営業成績も横這いから上昇し初めていた。
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