
おはようございます。
本日は宇佐美まこと『月の光の届く距離』(光文社)の感想文です。
どうぞ、おつきあいくださいませ。
(ブクログ「由々と本棚」と、ほぼ同じ内容であることを
おことわりもうしあげます。お許しあれ!)
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宇佐美氏の前作『羊は安らかに草を食み』では、
主人公である高齢者の行動に快哉を叫んだ。

では、最新刊の本書は?
望まぬ妊娠をした女子高生が主人公の物語から始まる、
連作短編集だ。
親からの虐待、ネグレクト、児童ポルノに児童売春・・・
息を呑むようにして読み続け、読了。
・・・30年ほど前になるだろうか。
アメリカで有名人カップルの養子縁組が、次々と話題になる頃、
アメリカで有名人カップルの養子縁組が、次々と話題になる頃、
血縁を越えて結ばれる「家族」をテーマにした翻訳小説を、
やたらと読んでいた。
日本も、こんな風な時代が来るのかしら、羨ましいな、
いや、日本じゃ無理だよね、と、どれだけ考えたか。
あの頃のわたしは、結婚して10年になるかならないか・・・
若かったこともあり、いろいろと悩んでいたのだ。
・・・時は流れ、令和の御代。
まさか、まさか・・・!
『月の光の届く距離』では、傷つけられた子どもが
血縁を越えた「家族」の中で、いきいきと成長していく。
日本でも、こういう小説を受け入れられる時代になったのだよ、
・・・30年前、悩んでいた若き日の自分に教えてあげたい。
ただし、これは
いわゆる「家族」が崩壊しているということで・・・
それは、それで問題。
いやいや、あの頃だって、家庭内のことはわからない。
ただ、支援の窓口すらなく、皆が口にしなかったから、
一見、穏やかに見えたのかもしれない。
小説についていえば、「血のつながり」に悩む兄妹の設定には
首をひねる部分もあるのだけれど・・・
それを言ったら、この小説は成り立たないかw
最後の最後は、著者からのプレゼントのようで涙が止らなかった。

一度できた、大事な人との縁は決して切れないと、信じたい。
自ら「職場」を去る道を選んだとはいえ、今、
やっぱり、心は、ちょっと複雑なのだ。
本書は、退職後、初めて読んだ小説である。
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本日も、おつきあいいただき、どうもありがとうございました。