
話題となっている「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(講談社現代新書)において、著者で産経新聞論説委員の河合雅司氏は、今から25年後の2040年代初頭こそが日本にとっての「最大のピンチ」の時期だとしています。
現在、政府が想定する人口問題の危機は「2025年問題」と呼ばれ、この年に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)を迎えることから「社会保障・税一体改革」などもこのタイミングをターゲットとした政策として立案されています。
しかし、同書によれば、本当に問題になるのはさらにそこから17年後の2042年になるということです。
この年、人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代が70代となって、高齢者数は約4000万人とピークを迎える。既に90歳代となっている団塊の世代も含め相当数の長高齢者が社会にひしめいているうえ、(日本の人口構成では)それ以下の世代が極端に少ないだけにその影響は計り知れないということです。
河合氏がこうして懸念する2042年に、わが日本はどのような社会となっているのでしょうか。
2042年問題の深刻さは、単に高齢者の絶対数がピークに達するだけではない。むしろ手を打たなければならないのは、社会の「支え手」である勤労世代が大きく減ることにあると河合氏は同書に記しています。
同時期の労働力人口は2025年と比較しても1256万人も少なくなる見通しで、世代間支援の姿はまさに「肩車」を地で行く状態になっているということです。
氏は、これに加えて、2042年頃には問題を更に厳しくする要素が生まれているはずだと説明しています。
団塊ジュニア世代はバブル経済崩壊後の不況期に新卒を迎えた世代として知られています。この時代はいわゆる「就職氷河期」として知られており、彼らの中には思うような職に就けなかった人が多いということです。また、運良く正社員になれた人でも、勤務先の経営状況が芳しくなく昇給が滞って低賃金のまま年齢を重ねてきた人も少なくないと河合氏は言います。
実際、総務省の労働力調査(2017 1~3月期平均)でも、正社員を望みながら機会に恵まれない人は270万人(うち男性が131万人)を数え、そのうち(団塊ジュニア世代に当たる)35~44歳は52万人に上るということです。
また、34歳以下の年無業者(いわゆる「ニート」)は60万人前後で推移しているということですが、同様の「非求職無業者」はこの団塊ジュニア世代だけで40万人以上に及ぶという統計もあるようです。
河合氏はこうした状況を踏まえ、仮に、そんな彼らに今後正社員への道が開かれたとしても、これまでの年金保険料の納付実績が少ないために、将来的な低年金・無年金状況を避けることは難しいだろうと指摘しています。
彼らの多くは現在も親と同居し、(団塊世代の)親のすねをかじって独身のまま暮らしている。こうした人たちが年齢を重ね、2042年頃には貧しき独居高齢者として大量に誕生するということです。
一方、氏は、こうした貧しい世代の老後を全て生活保護で対応しようとすれば、20兆円近い追加財源が必要になるとしています。就職氷河期世代が再チャレンジできる年齢にあるのもあと数年。このまま何の対策も講じなければ深刻な社会問題になるということです。
泣いても笑っても、2042年を迎えるまでにまでにあと四半世紀。
25年あれば「逃げ切れる」と思う人もいるかもしれませんが、そういう人ほど長生きしたりするものです。次の世代の負担を少しでも軽くできるよう、今からできる対策を少しずつでも進めていかなければなりません。
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