6月22日、企業に与信管理サービスを提供するリスクモンスター(株)が、2022年5月に行った「この企業に勤める人と結婚したいランキング」の調査結果を発表しました。同調査は今回で実に12回目。毎年、全国の20~59歳の男女800人を対象に、「結婚相手の勤務先として望む企業」を聞いています。
今年の結果は、1位は「国家公務員」の15.9%、2位は「地方公務員」の14.4%、3位は「トヨタ自動車」の10.5%というもの。不安定な経済環境が続く中、雇用や収入が安定しているイメージの強い公務員任意はやはり絶大です。
因みに、結果を男女別に見てみると、まず「女性が結婚相手の男性に望む勤務先」の1位は「国家公務員」で、全体の2割(20.0%)を占めています。次いで「地方公務員」(15.8%)、「トヨタ自動車」(10.3%)、「パナソニック」「アップル(Apple)」(8.8%)と続くようです。
一方、「男性が結婚相手の女性に望む勤務先」の1位は「地方公務員」の13.0%。2位が「国家公務員」(11.8%)、 3位に「トヨタ自動車」(10.8%)、4位に「ソニー」(8.0%)、5位に「グーグル(Google)」(5.5%)とこちらも常連が並んでいます。
こうして、結婚相手としては(今のところ)人気の公務員ですが、具体的な給料の額を知ればそうとばかりも言っていられないようです。
広がる公務員と民間企業との給与格差に関し、7月8日の総合経済情報サイト「東洋経済ONLINE」に、ライフプラン相談サービスを提供するマネーセージCMOの佐藤健太氏が「賞与最大減」に見る民間との差異」と題する一文を掲載しているので、参考までに紹介しておきたいと思います。
6月30日に支給された国家公務員の夏のボーナス(期末・勤勉手当)は、管理職を除く一般行政職(平均34.2歳)の平均で約58万4800円となり、前年夏に比べ約7万6300円減少した。マイナスは2年連続で、今夏の11.5%という減少幅は平成以降で最大だと、佐藤氏はこの論考に記しています。
リストラや倒産の心配がなく、福利厚生が充実し、不況時にも収入が安定しているとされる公務員。しかし、岸田文雄首相による賃上げ要請や好業績を背景にサラリーマンの平均賃上げ率は4年ぶりの高水準。今夏の(民間企業の)ボーナスも大幅アップと勢いを見せる中で、過去最大のマイナスになった公務員のボーナスに、働き方改革で旗を振る国と、それを支える「現場」の矛盾は広がっていると氏は指摘しています。
今年の公務員のボーナスのマイナス幅が、2009年のリーマンショック後のそれ(5万5900円)をも上回ったのは、2021年の人事院勧告に基づき民間との格差を縮小するため。支給月数を0.075カ月分減らしたことに加え、給与法改正が間に合わず2021年冬に見送られた0.15カ月分を合計した0.225カ月分が、今回一気に減額されたからだということです。
全国に約231万人いる地方公務員のボーナスも、「国に準拠」の建前の下、それぞれの人事委員会勧告に基づき支給月数が前年同期より0.075カ月分引き下げとなりました。一部では未だに人気の公務員も、給料面で言えば今一つ精彩を欠くのが現状だということでしょう。
もちろん、コロナ禍で人々の生活は大きく制約され、物価は上昇するものの平均給与が20年以上も上がらない国民に目を向ければ、マニュアル通りの減額に納得する公務員は(それなりに)多い。しかし、民間に賃上げや働き方改革を求める国と「現場」の乖離はこれだけではないと氏は話しています。
2019年4月施行の改正労働基準法は、時間外労働の上限を原則「月45時間、年360時間」と定めた。労働基本権が制約される国家公務員は同法の対象外だが、人事院規則で「職員の勤務時間は1日7時間45分、週38時間45分が「原則」という、一応の決まりをつくったということです。
しかし、2019年の「国家公務員給与等実態調査」によれば、超過勤務の年間総時間が360時間を超えた職員の割合は全府省平均で22.0%に上っている。本省庁の年間平均は356時間で、「720時間超」という職員も7.4%。民間の約130時間と比べて異様さは際立つ。こうした状況を見る限り、国家公務員の長時間労働は常態化しているというのが氏の認識です。
また、地方公務員に関しても、新型コロナの影響でその業務は多忙化、多岐にわたるようになっている。保健所への応援からワクチン接種まで、仕事は増えても人は増えず、時間外勤務を積み上げ対応しているのが現状だということです。
もっとも、そうした中ではあっても、就職情報会社「マイナビ」が2023年卒業予定の大学生3年生と大学院1年生を対象に実施した調査によると、公務員を就職先の選択肢として考えたことがある学生は22.7%に上っていると佐藤氏はしています。その理由は、「社会的貢献度が高い」が43.9%と最も高い。ただ、「考えたがやめた」との回答も41.5%に達しており、今後も増加する傾向にあると氏は話しています。
2021年度の国家公務員採用試験の申込者(総合職)は、前年度に比べ14.5%減の1万4310人と5年連続で減少を続けている。現行の試験が導入された2012年度には2万5000人を超えていたことを考えれば、その減り方はいかにも異様に見えるところです。
実際、安定しているように見えた「公務員人気」の「変調」は、国家公務員だけにとどまらないようです。
例えば、ネットに掲載されていた埼玉県の記者発表資料を見ると、今年の職員採用試験(上級職)の受験者数は1854人。採用予定者数は411人ですので、(一時は10数倍が普通だった)競争率は4.5倍と低迷しています。おそらくは(辞退者を見込んで)最終合格を450人以上は出すでしょうから、実際は約4倍程度に落ち着くことでしょう。
さらに、これを技術職の「総合土木職」に限れば、採用予定者数は39人のところ、受験者数は57人と振るいません。45人の合格者を出すと仮定して、競争率は1.27倍と、受験したほとんどの人が落ちないという(これまでにない)「広き門」となっているのが実態ようです。
日本全国の多くの自治体でも、事情はおそらくあまり変わらないでしょう。雇用者の賃金改善や働き方改革が叫ばれる中で、(「仕事」としての)公務員の魅力が失われつつある。何かと社会のストレスのはけ口とされる国家公務員や地方公務員を、多くの若い人材が敬遠するようになっているということかもしれません。
公務員の人材確保は、私たちの日常の暮らしの質に直結するもの。仕事は「待遇で選ぶもの」とは言えないまでも、そろそろ魅力アップのための手を打つ必要もあるのではないかと、私も佐藤氏の指摘から改めて感じたところです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます