6月7日、商品マーケティングの専門誌「日経MJ」(日本経済新聞社)が2022年上期(1~6月)の「ヒット商品番付」を発表しました。
今期の「東の横綱」は、歴史的な値上げが相次ぐ食品や日用品などで低価格商品が売れた「値上げ消費」というもの。価格据え置きを宣言したプライベートブランド(PB)やディスカウント店が、消費者の節約志向をとらえて売り上げを伸ばしていることなどが評価されたようです。
一方、「西の横綱」は「リベンジ旅行」。新型コロナウイルス禍で抑えられてきた旅行意欲が再燃し、日常で積み重ねた節約や我慢を旅行で発散させるメリハリ消費の傾向が強まっているとされています。
さらに、「東の大関」にはテレワークによる在宅勤務の普及がもたらした「ノンアル生活」、「西の大関」にはネットワーク上に構築された3年間3Dの仮想空間「メタバース」が並び、新型コロナの自粛生活の影響が、個人消費に色濃く反映されている現状が伺われます。
そして、今回の番付で大いに気になったのは、「西の関脇」に位置付けられた「平成ギャル文化」というものです。
現在、ロングブーツやミニスカート、ルーズソックス、へそ出しチビT といったギャル系ファッションがZ世代を中心に復活の兆しを見せており、90年代を象徴するアイテムやカルチャーが、「平成レトロ」として若者の間で再び脚光を浴びているということです。
1990年代、空前の“コギャル”ブームが湧き起こり、安室奈美恵のファッションをまねる「アムラー」や、顔を黒く塗る「ガングロ」などのギャル文化が次々に生まれてから四半世紀。この時代を、屈託なく、のびのびと生きた彼女らを母親に持つ世代にとって、「ギャル文化」は案外親しみやすく、身近に感じるものなのかもしれません。
さてそんな折、7月21日の日経新聞のコラム「ヒットのクスリ」に、同紙編集委員の中村直文氏が「企業の会議にギャル注入 カオスな提案、常識壊す」と題する一文を寄せていたので、参考までにその内容を紹介しておきたいと思います。
2022年の上期ヒット商品番付にランクインした「平成ギャル文化」。厚底シューズやルーズソックスなど「モノ」から再評価されたギャル文化を、コトとして広げようという女性起業家が今、業界で話題になっているということです。
中村氏はコラムで、本物のギャルを企業の会議に送り込み、知識や経験なしで好き勝手に語り合う「ギャル式ブレスト」というフォーマットを運営する、CGO(チーフ・ギャル・オフィサー)ドットコムの竹野理香子氏を取り上げています。
竹野氏は企画の立ち上げに当たり、「ギャルは忖度しないし、自分を曲げない。直感的でポジティブで褒め上手。日本の大企業は周囲に気を使いすぎて、なかなかコミュニケーションが進まないと聞いたので、ギャルの力を生かしたいと考えた」と話しています。
ギャル式ブレスト(ブレーンストーミング)の目的は、まずは直感性と自己肯定感を上げること。そして、コミュニケーションの量を増やすことだと竹野氏はしています。
ギャルの会話は、(基本)敬語なし、タメ語で続いていく。あだ名で呼び合い、「あげー」「キュンです」と相手の言葉に反応し、反応に困ったら「はにゃ」というギャル語でしのぐ場面も多い。
例えば、ギャルが3人に東急建設の社員が6人のブレストの現場では、「ゼネコンって何かのコンテスト?」「大仏も建てたー?」などと突っ込むギャルに、東急側は「109も建てました」などと事業内容を説明している。すると、ギャルからは「ブルジョア過ぎー」「ゲロ熱」「まじ、徳積んでるねー」など間髪入れずに反応が返ってくるということです。
好き勝手しゃべり合うと、社員の間の雰囲気も次第に柔らかくなってくる。ブレストも後半になると、「最近の渋谷はきれいになったけど、攻めてる要素が薄い」「渋谷でバンジージャンプ」など、ギャルの発想をもとに自由な意見が生まれてくると記事はしています。
三菱鉛筆も、こうした「ギャル式ブレスト」を活用している企業のひとつ。凝り固まった思考からの解放が目的で「新規事業として『Lakit』というキット付きオンラインレッスンを開始しようという中で、サービスの方向性などの確認につながった」と効果を話しているということです。
さて、確かに街場で楽し気なギャルたちの会話を聞いていると、世の中に対して少し気楽な気分になれるのはおそらく私だけではないでしょう。「マジ、卍」「おじさんってガチヤバい人?」なんて言われても、少なくとも怒る気にはなりません。
仕事に「ギャル注入」で、新しい発想を。何かといえば秩序を優先しがちな日本企業ですが、時にはカオスの中で再起動を試みるのも一興だと記事を結ぶ中村氏の視点を、私も興味深く受け止めたところです。
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