宮城の作家希望

作品など

#13女神の書

2020-09-18 12:29:00 | 小説
ジラート王子が行ってしまってから二ヶ月
慣れたと言うよりは諦めた感が強い。
その間父から婚約の経緯を聞かされた。
『婚約と国の交易は別問題だと言ってある、気に入らないなら断って構わない』と言ってくれた。それでも私は断る気などないと答えた。

それから、私の魔法の覚醒により魔物の活動が活発化している報告が騎士団から上がっている。特に闇の力が引き寄せるらしいがこればかりは個人で何とか出来る代物ではないとママが言う。

かつての女神様が言うのだからそうなのだと自覚するしかない。仕方のない事なのだからその上で対処しなければならない。
それからは気を紛らわすのを兼ねてママから魔力のコントロールを学んだ、以前エレナレナにも習ったが鍛錬を続ければ更に効率良く魔法が使えるとママは言う。

『あれも鍛錬を怠らなかった』
遠くを見て父が言う。
あれとは私の母の事だろうか!

母は聖女と呼ばれていた。らしい。
特に死後まもない場合は完全に生き返らせたと言うのだ。更には城の中なら魔王ですら敵わない。実際、城の中まで魔王に攻め込まれた事が有ったが母の魔法一つで追いやった。
『まるで、』

ママは言いかけた言葉を飲み込んだ。
その直後、私は意識を失った。

私が辛うじて目覚めたのは一週間後、体は動かなかった。
『女神の書』
ママがそう呟いた。震える唇で、