何故死んでしまったの…祥一郎の生きた証

私は2015年12月28日、20数年共に暮らした伴侶である祥一郎を突然喪いました。このブログは彼の生きた証です。

介護の仕事を続けることの意味  凍りつつある心と共に

2016年04月12日 | 悲しい



私の仕事は介護職員。

何度か書いたが、好きで選んだ仕事では全く無い。

あのリーマンショックによってその当時していた仕事をリストラされ、不景気の真っただ中、職探しに奔走することになった。

もうその頃私は齢50も過ぎていて、まともな仕事など有るわけがないと途方に暮れていた。

ハローワークに行っても、これがまともな大人の給料かという仕事ばかり。

祥一郎と二人、とても暮らしていける給料が貰える仕事など、目を皿のように探しても有りはしなかった。

有ったとしても年齢ではねられる、スキルではねられるのが目に見えていた。

そんな中ハローワーク職員に勧められ、給料が安いので悪名高い介護業界の中でも、まあましな職場を紹介された。まあ他に選択肢がなかったわけだ。

本棒がこれだけでも、まあ住宅手当やボーナスもこれだけ出るなら、以前よりかなり生活水準は下がるが、爪に火を灯せばやっていけるかなと応募し、採用されたのが今の職場だった。

介護業界の中でも最も過酷と言われる特別養護老人ホーム。そんなことは露知らず、見ず知らずの業界へ足を踏み込んだのだった。

御存じの方も多いと思うが、介護と言う仕事は感情労働だとも言う。

謂わば感情を押し殺して職務を遂行しなくてならない。

どんな仕事でもそういう面はあるだろうが、介護業界は特にその傾向が強い。
それもそのはず、認知症、それも重度の認知症の老人達何十人もを、数人のスタッフで相手しなければならないのだから。

普通にご利用者に接していても、暴言は吐かれる、暴力は振るわれる、介護拒否に遭う、陰口は叩かれる、やってもいない虐待をふれ回る、気が狂うほど同じ訴えを聞かされる、夜中の徘徊、尿漏れ便漏れの始末、数え上げればきりがない。転倒など事故が起これば全て職員の不注意。たとえ目がどうしても届かなかったとしても。

そして職員の対応がまずければ、モンスターカスタマーのような家族からの苦情がくる、それによって上司から注意を受ける、多大なストレスによって職員同士の人間関係は音がするくらいギスギスし、サービス残業をしなくては仕事が終らない。末端の職員は結婚するなどとても無理な収入。よって辞めて行く人は後を絶たない。

私はこの歳になってそんな業界に入ってしまった。

あれから三年半になろうとしている。おまけに介護福祉士の資格まで取ってしまった。

そして祥一郎の死。

この仕事は例えどんな扱いをご利用者に受けようとも、にっこり笑って天使のように振る舞わなければならない。

祥一郎の死によって今私の心は、厳冬期の湖のように周囲から急激に凍ってきている。

例えそこそこ気分が落ち着いているときでも、鏡で見る自分の表情は明らかに以前とまったく違う。
多大な悲しみが表情に染みついてしまっているのだ。柔和さなど微塵もない顔。

そんな状況で、にっこり笑って仕事ができるだろうか。
できない。今の私には到底できない。そしてその状態がいつまで続くかもわからない。

おそらく上司をはじめとした周囲からは、最低の介護職員の部類に入るだろう。そんなことは自覚している。

それなのになぜまだこの仕事を続けているのか。

理由は二つある。

ひとつは、今すぐこの仕事を辞してしまえば、私のこんな悲惨な状況にある程度配慮してくれている上司や同僚達に借りを作り返せなくなること。言葉は悪いが、その事がけったくそ悪い。

そしてもうひとつはただ生存するため。生存して祥一郎の生きた証を可能な限り残すため。
そんなこと、転職してもできるだろうという簡単な話では無い。私には選択肢が殆ど無いのだ。

祥一郎・・・・・

職場ではマスクが解禁になっても、おっちゃんは大きなマスクをかけて表情ができるだけ見られないようにしているよ。

おっちゃんの心はますます凍っていく。そして心が全部凍ってしまっていつかその重さに耐えきれなくなって割れてしまうのかもしれない。

お前と出逢う前の冷たい心とはまた違う、悲しみと喪失感を含み、お前を喪い精神が瓦解していくのに伴って凍っていくんだ。

もう誰も愛せない、誰にも優しくできない・・・・そんな人間になっていくのかもしれないね。

悲しみが多いほど人には優しくできるなんて、綺麗事には到底なりそうもないよ・・・・

お前はそこからおっちゃんを見ていても、「おっちゃん、もっと頑張って。」と言うのだろうか。

心の冷たい人間にはなりたくない。

でも、お前を喪ったあまりの悲しみの大きさに、おっちゃんの心は凍土のようになっていくのがわかるんだ。

それが悲しい・・・・・
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