(※写真は二人で暮らした東京谷中に有ったトタン屋根アパートの跡地。もう何も無くなっている。)
祥一郎と初めて一緒に暮らした、戦後焼け残ったような、トタン屋根のアパート。
申し訳程度についているキッチンと、後でつけたしたようなベニヤ張りの狭いトイレ、そして6畳一間の部屋。
隣の住人の話やトイレの音まで丸聞こえで、雨の日はうるさいほどの雨音が天井に響いていた。
東京は谷中にあった、初めての二人の愛の巣。
いや、愛の巣というわりには、あまりにも粗末な部屋だったけれど、確かにあの頃はふたりは恋人、ステディと言っていい関係だった。
同じ布団で眠る時、あいつは首を挙げて私の腕枕を催促する。そして眠りに入る時は必ずお休みのキス。
私と祥一郎にもそんな時期があった。なにしろ知り合ってまだ数年だったのだから。
「おっちゃん、好きから。」なんてよく言われたものだ。好きだからではなく、「好きから。」。
それに若干戸惑いを覚えた事も有る。なにしろ人にそれほど愛されたことがなかったから・・・
二人で毎日銭湯に行き、貧しい食事をし、せまい部屋で肌を寄せ合って座り、あいつの好きなドラマに付き合わされる。そして同じ布団で身体を寄せ合って眠る。
そして休みが合えば、ミュージカルを見に行く、夏にはプール、ディズニーランド、映画もそれなりに観たと記憶している。
泊りがけの旅行は、結局一回しか行けなかったけれど。
あれから年月が経つうちに、まあいわゆる倦怠期の夫婦のようになったけれど。
いや、私にとっては倦怠期ではなかったかもしれない。
人ひとりとこんなに長く暮らしていく内、一人暮らしにはもう戻れないまでになっていったのだ。
ひと一人のパワーというのは凄いものだなと思う。
存在そのものが、他人の生活感価値観を変えて行くのだから。この保守的で頑固な私でさえ。
そうなのだ。「肉親とだって暮らしたくないのに、他人と一緒に暮らすなんて鬱陶しくてまっぴらごめん。」と思っていた私の人生観を、祥一郎は変えたのだ。
いや、家族を持つというのことはそういうことなのだと、理屈ではわかっている。
しかしゲイである私が、一人で無頼に生きて来た私が、まさか家族と思える存在を得るとは。
運命というものは気まぐれなのか、面白がっているのか・・・・・・
そしてまた運命に翻弄されることになる・・・・・・・・・・・・・・
たった一人の家族と死別するという、運命の気まぐれに翻弄されることになったのだ・・・・・・
私は、もし運命を司る存在があるとするならば、それを憎む。こんな気まぐれで面白がっているような運命を私たち二人にもたらした、それを心の底から憎む。
祥一郎と初めて一緒に暮らした、戦後焼け残ったような、トタン屋根のアパート。
申し訳程度についているキッチンと、後でつけたしたようなベニヤ張りの狭いトイレ、そして6畳一間の部屋。
隣の住人の話やトイレの音まで丸聞こえで、雨の日はうるさいほどの雨音が天井に響いていた。
東京は谷中にあった、初めての二人の愛の巣。
いや、愛の巣というわりには、あまりにも粗末な部屋だったけれど、確かにあの頃はふたりは恋人、ステディと言っていい関係だった。
同じ布団で眠る時、あいつは首を挙げて私の腕枕を催促する。そして眠りに入る時は必ずお休みのキス。
私と祥一郎にもそんな時期があった。なにしろ知り合ってまだ数年だったのだから。
「おっちゃん、好きから。」なんてよく言われたものだ。好きだからではなく、「好きから。」。
それに若干戸惑いを覚えた事も有る。なにしろ人にそれほど愛されたことがなかったから・・・
二人で毎日銭湯に行き、貧しい食事をし、せまい部屋で肌を寄せ合って座り、あいつの好きなドラマに付き合わされる。そして同じ布団で身体を寄せ合って眠る。
そして休みが合えば、ミュージカルを見に行く、夏にはプール、ディズニーランド、映画もそれなりに観たと記憶している。
泊りがけの旅行は、結局一回しか行けなかったけれど。
あれから年月が経つうちに、まあいわゆる倦怠期の夫婦のようになったけれど。
いや、私にとっては倦怠期ではなかったかもしれない。
人ひとりとこんなに長く暮らしていく内、一人暮らしにはもう戻れないまでになっていったのだ。
ひと一人のパワーというのは凄いものだなと思う。
存在そのものが、他人の生活感価値観を変えて行くのだから。この保守的で頑固な私でさえ。
そうなのだ。「肉親とだって暮らしたくないのに、他人と一緒に暮らすなんて鬱陶しくてまっぴらごめん。」と思っていた私の人生観を、祥一郎は変えたのだ。
いや、家族を持つというのことはそういうことなのだと、理屈ではわかっている。
しかしゲイである私が、一人で無頼に生きて来た私が、まさか家族と思える存在を得るとは。
運命というものは気まぐれなのか、面白がっているのか・・・・・・
そしてまた運命に翻弄されることになる・・・・・・・・・・・・・・
たった一人の家族と死別するという、運命の気まぐれに翻弄されることになったのだ・・・・・・
私は、もし運命を司る存在があるとするならば、それを憎む。こんな気まぐれで面白がっているような運命を私たち二人にもたらした、それを心の底から憎む。
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