オリヴィアを聴きながら

2男児の母、業歴XX年のシステムエンジニアが日々のもろもろを雑記します。
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システムサービス開発の契約上の問題点(4)

2005-12-09 17:30:16 | お仕事情報
契約がしかるべき時期に締結されていても、もめることはあります。

契約の『何を』あたる部分は別紙『XXX仕様書』に基づくとか、ありがちなのはXXXXシステム一式。

XXXXシステムとは何ぞやという詳細は添付なし。

これ、すごくあります。

そうすると、XXXXシステムの機能に委託側と受託側で見解の相違が出てくる場合がある。
または、最初は見解が一致していたのが、開発途中でずれてくる場合もある。受託側も委託側も大勢の人が関与する規模の大きなシステムだと人によって認識が違うことも十分にあり得るし、途中でメンバーが変わることもある。
(もっとも、ある程度以上の規模のシステムの場合はXXXXシステム一式なんて乱暴なことはありません。)

そうじゃなくて、契約額1000万円で、委託側のメンバー5人、受託側メンバーは4人という小規模なプロジェクトの場合でも見解の相違は発生します。

故意にずれちゃう場合もあったりします。

そうすると、どこにもない契約の『実体』を対象に『契約条項』だけが歩き出す。

泥沼です。

委託側:『俺が思っているXXXXシステムはこんなものじゃない!』
受託側:『いえいえ、XXXXシステムは通常、こういうものです。』
委託側:『いや、このXXXX入力機能はこうあるべきで、XXXX金額の計算式は・・・・』と以下延々と細かいクレームが続く
受託側:『しかし、お客様が承認した設計書の通りですと、XXXX金額の計算は・・・』ともっと細かい入り組んだ説明が続く
委託側:『それが、こんな結果になる意味だなんて動くものが出来上がってみなけりゃわからないだろ。こっちは素人なんだから!』(開き直る)
『第一、こんな部厚い設計書を全部読んでる時間なんかあるわけないだろ!!!!』(激昂)
受託側:『しかし、お客様のご承認印がございますし、私どもとしては『全部お読みになった』と判断する以外に方法がございません。ご質問がないかも確認していたはずですが・・・・(馬鹿ヤロー、こっちはその部厚い設計書を書いたんだぞ!)
委託側:『とにかく、こんなモノは受け取れない。持って帰れ!』
と、持って帰れれば『けっ!厄介払いだ』とすっきりするのですが、(懐には響きます。)お客様はシステムがないと仕事にならないのが普通ですから、
委託側:『とにかく、すぐに作り直せ!絶対に、XX日に間に合わせろ!』
となります。

これでは契約条項がどんなにスマートな内容でも、意味はありません。

お客様もこういう経験をされて懲りたのか、XXXXシステム一式という契約は、その業務に関してある一定期間の継続取引があって、担当営業なり、担当SEなりと信頼関係が醸成されている場合以外には少なくなりました。

では、『XXXX仕様書』に基づく場合はどうでしょうか?
一見、問題なく行きそうです。
確かに、上記の乱暴な場合に比べればトラブルの芽は小さい。

が、お客様が契約前に判断できる内容ですから、記述が『機能性』に偏りがちです。『できる』ことのオンパレードで終わっていることがたいていです。
実はシステムには『できない』ようにしてあることも非常に重要です。
決められた操作者以外は操作『できない』とか、一定の期間がすぎたらデータを更新『できない』とか、一度にXXXアクセスしか『できない』とか。
こういう要件は抜け落ちていることが多い。
また、性能についても事前の計算は大変なので、たいていのSEは性能についての表記は避けます。
例えば、1秒間に5千アクセスの場合、応答時間0.5秒以内とかをちゃんと計算して、ハード構成やネットワーク構成を構築するのはすんごく大変。

よっぽど資金をふんだんにかけて構築する大規模で公共性の高いシステム以外には、目標値すら設定しません。

設定しても『送信1回について、検索の場合 30秒以内、更新の場合 1分以内、集計の場合 5分以内』とかいう長めの、どちらかと言えば、忍耐の限界だよなあという応答時間を制限値とします。(こんなものでも、何も設定していないよりは数百倍は良心的です。)

そうすると、
『見た目は思ったとおり!』
のシステムで、お客様も満足してカットオーバーします。

が、本稼動したとたんに
『遅くて、遅くて、使い物にならない』
とか
『100人でアクセスしたら誰の処理も動かなくなった』
とか
『他のアプリケーションで印刷すると速度が途端に遅くなる。』
とかいう問題が発生します。

これは瑕疵でしょうか?
良心的なSEが(ずいぶん長い値であっても)レスポンスタイムの制限を仕様書に設けていて、これを超える値であれば、瑕疵です。
が、そんな記述が無い場合、5日待とうが結果が正しく出力されれば瑕疵と言い切れるのか?
『そんなのは常識の範疇だ!』とは私も思いますが、『あなたの常識は私の非常識』でもめないために交わすのが契約です。

それを考えれば、この契約は正常に機能しているとは言えません。


御社のシステム開発委託契約は大丈夫ですか?