昨年度まで2年間にわたって私は隣の部に派遣されていた。
育児休暇明けから配属された現在の課は、金融機関担当。顧客は、愛知県内にはほとんどなく、静岡、三重、岐阜を主にするが、実は九州や大阪も結構多い。私の復帰直後の仕事もユーザーは福岡。
まだぜんぜん乳離れしていない子供を抱えて結構シビア。
喜ぶべきことだが、福岡のユーザーをファーストユーザーとして開発したアプリケーションの手ごたえは上々で、引き合いが続々。しかも、日本全国。通常なら、開発の取りまとめをした私が、その後の拡販においても主担当となるはずだが、当時の上司はそれは無理と判断して、別の担当を決めた。
適当な仕事がなくなった私は遊んでいるわけにもいかず、ちょうどその際に人手が欲しかった隣の部の支援に借り出された。
重宝だったのかその後もそちらの上司は手放したがらず、本来の上司は体制建て直しが面倒だったのか請われるままにレンタル期間を延長したので異例の長さで気楽な傭兵暮らしが続いた。
他部署の業績にいかに貢献しようが自分の人事考課があがることはない。(失敗して下がることもないが。)
人的評価が上がって「難題」ばかりがあてがわれる可能性も高いので、「さぼっている」と思われない程度に「目だった成果」を出さないことも大事。
結局、直属の上司ではなく、さらに上の上司が喧嘩になって花一文目状態でようやく自部署に戻ったのがこの4月だった。
さて、その後、私を手放したがらなかったカチョーさんは、カチョーの任を解かれ抜け殻のようになっているらしい。
元は、優秀な設計者で社内でも特定分野の一人者である。
権力闘争向きではないと思っていたが、最近では精神的に壊れがち。
彼の部下が私に愚痴ってくるところによれば、崩壊が進んで人前に出せなくなってきたという。
実質的な舵取りを失い浮遊する中堅。
お客様にはしかられ、上司は頼りにならず、自己の技術的な限界も見え始める。長時間労働が常態化し、Never Ending Story(終わりなき物語)のように繰り返される品質不良への対策。こんな時に、30代後半の技術者は壊れる。
仕事の面白さは自分で作り出すものであるが、長時間労働で疲弊した精神に何かを生み出すのは至難の業である。
現在の私の救いは、製品をプロデュースできる余地があること。そしてその余力となる時間の余裕を生み出してくれるのが息子たちだったりもするのだ。