ご訪問ありがとうございます
月子のティーハウス
(moon child's tea house)
第7話 月子の祈り
秋が深まった満月の夜、今日は風が止んでいる
生成り色のコットンワンピースを月子は着ている
襟は少し高く、胸元にはレースがあしらわれている
藤のバスケットを抱え、けもの道を通り
月子はひとみ川へ向かった
風の無いひとみ川は穏やかで、淀みは流れが止まっている
小瓶の蓋を開け清酒を差し上げ
瞳を閉じ、月子はお祈りを捧げた
結んでいた髪をほどいた
はらりとした髪が背中に届く
月子はひとみ川へ入って行く
川の水は、冷たく痛くそして重い
淀みに達すると手紙の入ったバスケットを浮かべた
天を見上げ、月子は満月と目を合わせた
「ふっ…」、誰かが息を吹きかけてくれた
(ひとみさん、ありがとう)
手紙の入った藤のバスケットは、ゆっくりと動き始めた
闇に溶けゆくまで月子は手紙を見送った
ご一読ありがとうございました
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます