俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その54

2011年06月19日 20時08分55秒 | 小説『ファルコとの出会い』

「そのキャットとも、話す必要がありそうだな」
「でも、時間はあるの?」
「うむ。ファルコの機体らしき目撃情報は、コーネリア軍の駐屯基地からいくつか寄せられとる。都市部や幹線航路を避けつつ、東の海を目指しておるようだ」
「網を張るなら、海か」
「やつの機体は速度を上げるためのむちゃなチューニングが施されておるようだが、燃料のことも考えれば常に最高速で飛ばすというわけにもいくまい」
「ファルコが海上へ出るまで、早ければ……」
「あと、三日ってとこかなあ」
「俺たちが追う時間も入れれば、二日だ。その二日で、まずペパー将軍、そしてキャット・モンローに会い、ファルコとその機体についての情報を調べ上げるんだ。それと並行して、アーウィンとプラズマ冷却弾の整備も完了させる。準備が整い次第、東へ出発だ」
 部屋の空気が急激に緊張感を増した気がする。硬くなりかけた筋肉をゆるめるように、フォックスは片手をあげ、もう一方の手でつかむとぐっと伸びをした。
(試練ってのは、無粋だな。こっちの準備が整ってなくたって、おかまいなしにやって来る。まあ、そうでなければ、試練とは言えないか)
「新生スターフォックス、任務第一号、か――」
 任務、という言葉の重みを噛みしめ、フォックスは言った。灰色の体毛の奥で光るこげ茶色の二つの瞳、くりくりとせわしなく動く愛嬌のある二つの瞳。それらを見比べつつ、言うべき言葉を言う。
「これより、ファルコ・ランバルディ捕獲作戦を開始する。たった三人だが、各自、作戦成功に向けて力を尽くしてくれ」
 うおおし!いよ~し!という、気合いのこもった声に、フォックスはうなずき返した、だが。
『残念ナガラ。一ツダケ、誤算ガアルヨウデス』
「わっ! びっくりした~っ!」
 いつのまにか作戦室内に姿を現していたナウスが、スリッピーの背後から電子音声を響かせた。
「ナウス……なんだい、誤算ってのは?」
 すでに見慣れつつある金属製の顔を見つめ、フォックスは聞く。小さな不安の炎が、胸の動悸をわずかに早める。
『タッタ三人デハナク、タッタ四人ト言ッテ欲シイモノデス。私モ数ニ入レテイタダケルナラ』
「なあんだ、そんなことかあ」
 ふ~う、とスリッピーが息をつく。
「いやいや! そんなことで片づけてはいかん。ナウスも、このチームには欠かせない存在だぞ」
『ソウデショウトモ。忘レテモラッテハ、困リマス』
 拗ねた子供としか思えない口ぶりで言う。フォックスはこみ上げてくる笑いをこらえて言った。
「悪かったよ。たった四人だ。ナウス、君も作戦遂行に尽力してくれるか?」
『モチロンデス!』
 表情を変える機能などついていないはずなのに、うって変わって明るい表情と声で答える。全員が、耐え切れずに吹き出した。
 部屋に響く爆笑の渦を、みずからも大笑いしながらフォックスは聞いた。たった四人、という言葉が胸の内で繰り返される。たった四人。けれどこれ以上に信頼でき、共に戦うことのできるたった四人は、この世のどこを探しても、今の自分には見つけられない気がした。