立川です。
久々のオーダーメイドのエピソードです。
ナジャハウスに衣装をオーダーにいらっしゃる方は
衣装をファッションとして、流行を追求しているわけではありません。
では何を求めているのかといいますと、自分が踊りで表現したいものと
気持ちが一致していて、さらに、美しさ、踊りやすさ、舞台映えです。
そして、その結果観に来てくれた関係者や観客から高い評価をいただけたら
嬉しいですよね。
オーダーに来てくださるお一人お一人の想いがとてもユニークなので
私もお客様の想いを形にすることが楽しくて仕方がありません。
だって、同じ想いやイメージを持っている人なんて、この世に一人もいないのだから
その人だけのスペシャルなものになりますよね。
流行のものはすぐに飽きてしまうし、どれも似たようなラインやデザインで
それでは満足できない方も沢山いるのです。
本日のお客様もユニークですよ。
実はガロティンを踊られるということで
「これが使えたら是非使ってほしい。今は亡きバレエの先生にいただいたもので
いつかこれを衣装にしたいと思っていた」
ということで、バックの中からごそごそと取り出したのがこれ。
これはインド北部やパキスタンに住むヒンズー教徒やイスラム教徒に伝承
されている装飾技法だそうです。
宝石や金糸、銀糸をふんだんに使った美しい衣装に身を包む王族や特権階級
に憧れた庶民が、その辺にあるガラスや鏡を砕いてピカピカの宝石の代用に
したのが始まりだとか。
そしてもう一つ、鏡は悪しきものをはねつけ、寄せ付けないものと伝えられ
そのため、妬みや憎しみなどの念から身を護る魔よけの意味もあり
子どもや女性の衣服に好んで付けられるようになったそうです。
↓ 刺繍はカラフルでとても素朴な作り
しかし、衣装にして欲しいと言われても、これはふんだんにミラーが
埋め込まれ、針が刺さりません。
おまけに金太郎さんの前掛けみたいに、背中がないのですから
使える部分も前身部分のみ。
ワオー!こ、これもユニークでめちゃめちゃ大変だわ!(汗)
お客様としてはこれを使って衣装にして欲しいけれど、これといって
デザインのアイデアがあるわけではなく「立川さんにお、ま、か、せ!」
どれほど縫いにくく、デザインが難しいかを説明して別のデザインも
お勧めしたけれど、やはりこのミラーワーク衣服を使って衣装にしたいとの
お気持ちは変わりませんでした。
そこでまた、立川得意のあーでもないこーでもない!が始まり、
私の頭の中にある無数の組み合わせの中から、彼女のためのデザインを
考案していきます。
この小さな面積の服を生かすにはボレロだ!と決めて
いざ作業へ!
まず、ボレロの型紙の縫い目線の部分のミラーを
全て取り出し、ミシン針が刺さるようにしました。
そして取り出したミラーがこちら
ミラーを砕いたままのものを使っているのでエッジが鋭く
尖っていて、怪我をしないか恐怖でしたね~。
なんせ布がちょっぴりなので背中は生地の一部分しか使えず
こんな風にデザインしてみました。
そして前は全て刺繍部分が使えました。
ワンピースはこの刺繍が映える色を何色か候補に挙げて
お客様の好みの紺を選びました。
スカートの下の方の切り替え部分は、何となくボレロの刺繍と似たテープを
持ってきてアクセントにし、同時に全体的な統一感も出しました。
そして全体像です。
インドの素朴なミラー刺繍を引き立てるために、フリルはあえて付けず
シンプルにして、スカートを振り回した時のインパクトのある効果を
計算しています。
これにコルドベス(帽子)はワインカラーでペチコートも同じくワインカラーで
出来上がり!本番はもう少し先ですが
きっと、照明の下でミラーがキラキラきれいでしょう。
そして、魔よけ効果のあるミラーがネガティブな感情を追い払い
楽しい気持ちで踊れたらいいですね!
本番の舞台写真が手に入りましたらまたアップします~。
皆さんもご自身の想いを形にしてみませんか?
贅沢なことですが、きっとご自身を高める大切な衣装になりますよ~
それではまた次回。立川でした!