★結果発表(つづき)
人も街もどこか傷んで六月尽 餡子
○(敏)東京アラート中の「六月尽」を詠んだ作品だと思いますが、「どこか傷んで」には普遍性があるようですね。
〇(珠子)4月にも5月にも裏切られ、6月こそは!と思ったのにだめ。それどころか7月に入ったらもっとひどくなってゆくコロナ感染者。みんな傷んで病んでいます。
○(まきえっと)7月こそはと思いますが、この雨。
◎(道人)何も具体的なことは詠んでいないが6月末のイメージをうまく引き出している。
〇(宙虫)傷みやすい季節です。いろんなものが傷みます。
夏の夜機体見上げて「あ」と発す ちせい
〇(楊子)どう読んでもいいところが巧みです。
〇(道人)わけのわからない「あ」の発声に魅力あり。
鼻腔入る団扇の煙り歯の疼く 藤三彩
白シャツが群れる尻尾を光らせて 楊子
◎(餡子)一読して、金子兜太のあの句を思い浮かべました。状況はちがいますが、どことなく、社会の閉塞感が似ているような気がします。
◎(めたもん)尻尾が光るとは。人(若者)の原初的な哀しみを感じます。
〇(宙虫)結局、人間は進化しているのかしていないのか白シャツと尻尾に考えさせられる。
炎天やしっかり着込む作業服 泉
〇(春生)「しっかり着込む」が作業に入る人の心構えを表現できました。
◯ (アゼリア) 防護服と一緒で安全上必要なのでしょうが、暑いでしょうね。ご苦労様です。
◯(アネモネ)いかにもいかにも。
〇(メイ)炎天下で誠実に堅実に働いている人物像が伝わってきました。
〇(ちせい)季語は「炎天」。労働安全衛生法ですね。
真炎天剥がすは少し地球の皮 敏
○(仙翁)天と大地の対比がいいですね。
○(泉)言われてみれば、確かに「地球の皮」ですね。
大地掘り埋めまた削る玉の汗 仙翁
◎(春生)これも大事な仕事のプロセスなんですね。
○(餡子)そうです。同じ所を、掘ったり埋めたり・・・。この社会も同じ事なのかも知れない。過去から何の学習もせずまた同じ過ちを繰り返す。玉の汗を流すのは、常に弱者。深読みかも知れませんが・・。これも◎にしたかった句。
◎(あちゃこ)掘り・埋め・削るの畳みかける表現がうまい。工事現場からの発想でしょうが人生を語っています。汗をかきかき人は生きていくのです。
〇(ちせい)季語は「汗」。公共工事は分かり辛い側面がありますが、句作心を刺激すると思います。
〇(宙虫)いろいろ汗を流して大地とつきあってきた人間。
また壊れゆく七月のアスファルト ルカ
〇(楊子)アスファルトはきっと喩でしょう。どろどろにこわれる七月に恐れをなしているのがわかります。
○(まきえっと)よくもまあというぐらい壊しますよね。
音絶えて夜風に汗のヘルメット あちゃこ
○(ルカ)汗のヘルメットに共感。
〇(珠子)炎天下にマスクとヘルメット・作業服・安全靴。工事現場にはかなりの高齢者もいます。重機の音が止まったら、ヘルメットとマスクを外し首を緩めて夜風を存分に。
○(卯平)最後まで迷った句。一読すればダラダラとした句。最後の決め手は上五(「て」は感心しない)。しかし、この句何とかキレのある一行詩にしたい。
◎ (アゼリア) 仕事が終わるとほっとなさるでしょうが、急に汗まみれに気づかれるのでは?
〇(めたもん)昼間の工事現場の様子が想起され、隠された対比が心地よいですね。
疫癘の地球見おろす梅雨の月 道人
〇(珠子)病む地球を見下ろしてココロを痛めている梅雨の月。梅雨が効いています。
◎(アネモネ)これは上手い!やられました。
(選外)(藤三彩)天空のかもめから見れば地球はまだ「青くて美しい」はず
学び舎に出会ひし名著蔦青し アゼリア
〇(春生)「蔦青し」という季語がぴったりです。
梅雨曇全読してから表紙見る ちせい
○(卯平)この本だけでなく読んだ後につくづく表紙に見入る事はあるかも知れない。
○(泉)言われてみれば、本の表紙(カバー)はあまり見ませんね。捨てることも。
〇(メイ) 最後まで読み力が抜けて、表紙を見る。意識してない一連の動作の健気さ。
(選外)(道人)この読書、スタイルが梅雨曇と合っている。
雷鳴や生きるを競う天地人 仙翁
全世界崩壊魔力褥暑哉 卯平
手探りで動き出す街本に黴 餡子
○(ルカ)触感の句。
◯ (アゼリア) 未知のウイルスで手探りですよね。実家の片付けの折変色したペストが出てきました。夏休みの宿題がペストを読みレポートを書く事でした。衝撃的でしたが、今指標となりそうです。
〇(楊子)本にまで黴があるという断定に死んだ街を想像させます。
○(あちゃこ)動きが吉と出るか凶とでるか。でも動き出すしかありません。
〇(藤三彩)外に出てもよいのだが、閉店が相次ぐ。休業の時間の塵埃となり黴となる
〇(メイ) 一度動き出したらもう止められない街。「本に黴」が効いている。
◎(まきえっと)「本に黴」がいいですね。
〇(ちせい)季語は「黴」。何度も読んでカミユ党になって居るのかもしれません。
◎(宙虫)黴臭い本、なかなか売れずに日焼けした本が並ぶ書店を見かけるようになりました。どうにかしたいこの時代。
(選外)(道人)コロナ禍自粛生活が幾分緩和された今の日本を「本に黴」でうまく表現している。
一冊の奈落に沈む熱帯夜 あちゃこ
◎(ルカ)詩情があります。
◎(珠子)「ペスト」を読んでいるのでしょうか。「一冊の奈落」などという言葉はこの先も私には棲みつかないと思います。
〇(めたもん)暑苦しい夜の読書。どんな内容なのか。重苦しいのか。熱中させられるのか。想像が広がります。
〇(道人)例えばカミュの「ペスト」(奈落に合う他の名著も含めて)に嵌った熱帯夜の設定がいい。
(選外)(卯平)上五の「の」が不明。省略と思い色々と鑑賞するがどうしてもつかみきれない句。
更地なる記憶の茫々朧なる 藤三彩
チームみな無言で歩む夜の秋 メイ
○(卯平)敗戦の後のチーム。季語は少々付きすぎか。
◯ (アゼリア) この無言がなかなか出来なくて、またやってしまったと反省の日々です。
○(泉)試合で負けたのでしょうか。悔しさをバネにしたいですね。
夕凪のビルが向こうに「ペスト」読む 宙虫
〇(めたもん)押し黙った街の存在が強く伝わってきます。
◎(ちせい)季語は「夕凪」。学生時代に読んだペストを再読と言った感じだったのかもしれません。
沖縄忌夜間飛行の灯の低く 春生
○(卯平)オキナワは今でも「沖縄忌」が続いている。閉塞感をそのまま受け止めた句。
〇(楊子)ぞっと思い起こさせる6月23日なのでしょう。深くかかわりのあるかたの重たい句だとおもいました。
○(あちゃこ)沖縄慰霊の日を沖縄忌と詠まれたのでしょう。平和の礎と基地が浮かんできました。忘れてはいけませんね。
◯(アネモネ)「夜間飛行の灯の低く」 がリアルです。
◎(メイ) オスプレイが夜間飛行する騒音との対比で、句の静けさが心に沁みました。
〇(道人)昼夜墜落の危険を孕む米軍基地の日常を淡々と詠んだ6月23日。
半夏生赤信号の放つ闇 まきえっと
○(敏)「赤信号の放つ闇」に感心しました。半夏生の斡旋が効いています。
○(仙翁)赤い光が、闇を濃く感じさせます。
○(あちゃこ)写真は確かに赤信号。気づかなかった。下五放つ闇に現在の危機を感じます。
〇(宙虫)赤信号がくっきりと目に飛び込んで来る。
短夜や彼方にカミュの救急車 めたもん
○(ルカ)今の世情がよく出ています。
〇(楊子)自然には従うしかないのです。天災も病気も。カ行の韻も効いています。また救急車のサイレンが聞こえる。
○(卯平)カミュの救急車とは驚きだ。この本で果たして人類は救えたか。
方形に空切り取って夏期講座 楊子
〇(珠子)3か月休校のツケは夏休み10日間というもの。登校ではなく夏期講座受講生のようです。冷房の効いた夏期講座の窓からの夏空も入道雲も無機質でしかない。
◯ (アゼリア) 早く心配なく夏期講座を受けられるようになるといいですね。
〇(道人)夏期青空教室でしょうか。上12の措辞がいい。
〇(ちせい)季語は「夏期講座」。予備校もあの手この手で頑張る季節。生徒も頑張らねば。
またも読むカミュウのペスト梅雨の間 アネモネ
〇(春生)コロナウイルス感染症もまだまだ続きそうですね。小説の中だけでなく、現実味を増してきました。
感染者一千万超梅雨の月 珠子
〇(藤三彩)世界の感染者数はどこまで増えてゆくのだろう
蝙蝠が不条理の世を飛び回る 泉
〇(めたもん)勝ち誇った蝙蝠のパタパタという羽音が聞こえて来るようです。
(選外)(卯平)先ず季語と措辞の付きすぎ。第二として上五の「が」。これでは俳句としての詩情は伝わらない。
ガリバーの踏みゆく積木夕焼ける 道人
○(敏)ガリバーの目から見れば、大都会の風景は積木細工のようなものなのでしょうね。三枚の写真を重ねての作句と見ました。
◎(仙翁)人の世は、積み木かもしれないですね。
◎(楊子)景がおおきいところを学びました。ひとの世は夕焼けに呑みこまれてしまう小さな毎日の繰り返しですね。
◎(泉)私はガリバーが、今のコロナ禍だと思いました。積木はビル群かな?
〇(藤三彩)その昔「大きいことはいいことだ」なんてCMがあった、大きい国が小国を踏みつける暗示。
梅雨あがる気配カミユを読み急ぐ 敏
○(餡子)結局今回カミユは読みませんでした。梅雨が明ける頃にはコロナも収まってくれるといいのですが。自粛生活もそろそろ限界が来ています。
○(あちゃこ)僅かな希望を見いださんと読み急ぐ本。今の私の暮らしにとっても、本は様々な示唆を与えてくれています。
◯(アネモネ)「読み急ぐ」に得心です。
○(まきえっと)何かのきっかけが「梅雨あがる」がいいですね。それが「カミュ」とは。
広島は雨が続いて、全く晴れ間が見えません。全国的に水害が起きるし、新型コロナと相まって、何だか天災の当たり年のようです。それにしても、広島カープにはもう少し頑張ってほしい所です。