つづき
余り苗山家暮しを諾えり 道人
○(あちゃこ)心情が伝わる一句。心豊かな暮らしがそこにあるのでしょう。
〇(めたもん)季語「余り苗」に 山家暮しを受け入れている気持ちの微妙な屈折も。
万緑に傘は要らぬと田圃見る ちせい
田植え飯祖母のおはこの赤飯煮しめ アゼリア
○(泉)しみじみと懐かしい感じがします。
○(藤三彩)おめでたい時に炊く赤飯はご馳走ですね
雲の影大きく動く田植どき 道人
○(藤三彩)天候に恵まれないと田植の農作業はしんどいな
〇(珠子)梅雨時の不安定な空模様を映す水田。田植機の音が淡々と続きます。
○(あちゃこ)季語はやや気になりますが、上五中七に共感です。
〇(まきえっと)大きな景ですね。生きていくのに大事なお米。すくすく育ってください。
〇(仙翁)水田には、雲が大きく映りますね。
〇(めたもん)田植えの時の雲は印象的。「影大きく動く」がいいと思います。
○(宙虫)こうやって空模様で作業を進めていく。自然との共生する姿が見える。
別宅に通ふ男や梅雨の雷 卯平
〇(カンナ)自由な発想が良いと思います。
早苗田に白鷺すくと夕日影 仙翁
〇(瞳人)植え終わりました、という風景です
〇(あき子)どこかで見たことのある光景。色彩が美しい。
○(あちゃこ)よく見る景だが、静けさの伝わる形よき一句。
○(アダー女)田植え後の田んぼに白鷺がじっと動かず夕陽のなかに立っている。田植え後の水にその姿が映っている。一服の日本画を見ているような静かで美しい一句。
〇(めたもん)印象的な早苗田の白鷺の影。「すくと」がいかにも白鷺らしく、その景が浮かびます。
◎(道人)白鷺も季語だが早苗田が主季語。苗の緑・白鷺の白・夕日影の朱のコントラストが美しい。そして何よりも田植えの終わった素朴な夕暮れの景色が良い。
◯ (アゼリア)私も同じ景色をよく見かけます。白鷺は餌を探しているのだとか。
ロコモコをメニューにくわえ梅雨末期 宙虫
田植果つ畦に鴉の羽ひとつ 珠子
〇(仙翁)このようなことがよくありますね。
○(ちせい)何かの目印だと感じられたのかもしれません。
◎ (アゼリア) 田植えが無事に終わった安堵感と少しの虚しさが中七下五によく表現されていると思いました。
代掻きの自己紹介で始まりぬ まきえっと
◎(春生)今は農業をやるために田舎に移住する若者が多いですね。
○(卯平)二代目どうしの挨拶か。農業を始めてまだ日が浅いのだろう。若々しい句。
〇(ちせい)始まりは肝心ですね。
長男も次男も街へ田水引く 楊子
〇(春生)これが現実ですね。それでも、田植はやらなければなりません。
○(泉)今や日本の農業は、重要な転換点にありますね。
○(卯平)段々とこのような景が私の廻りでも増えつつある。それでも毎年の行う「田水引く」行為。寂しさの中にそれでもコツコツと行う農業への思い。
◎(珠子)捨てたのではないのですが。生きるためにやむを得なかったのですが。田畑を守りきれなくなる老人の苦しみ…わが実家も今まさに同じ。
○(餡子)今やこういう農家さんが増えているようです。宮城の本家では田んぼをやめました。
○(幹夫)過疎集落が寂しい。
(選外)(道人)既視感はあるが、現代社会の大きなテーマ。中七の切れがいい。
明日からはまたデスクワーク田植了う 餡子
◎(瞳人)良い運動? になったことでしょう
○(泉)しかし、農家の人は休みがなくて大変ですね。
〇(楊子)土日の機会田植が多くなりました。
○(卯平)副業の農業か、それとも田植えのため実家へ帰省した景か。詠み手はデスクワークへの忸怩たる思いがあるのか。このまま農業を継ぐか否かを悩んでいるのかも知れない。
カサブランカ香に酔はされ又観たり 瞳人
はんざきの棲む水流れ満水に 藤三彩
溝浚えミイラの愛が啜り泣く カンナ
◎(めたもん)溝浚えのあの音を「ミイラの愛が啜り泣く」音と見立てたところが魅力。言われればぴったりな気がしてきます。
風にまだ揺れの揃わぬ植田かな めたもん
〇(春生)ありそうな句ですが、好きな句です。
◎(楊子)なんということのない些細な描写に軽みがあらわれている。「揃わぬ」がいいです。
〇(珠子)あのひ弱な2~3本の苗が一か月後には逞しく揃って風に立ち向かいます。
〇(あき子)成長速度の違いを捉えているのが新鮮。「まだ」にリアリティがあります
◎(餡子)苗が植えられたばかりの田んぼの初々しさ!良いですね。爽やかな夕風をも感じます。
◎(まきえっと)「揺れの揃わぬ」から苗を植えたばかりなんだなと想像できます。
○(アダー女)早苗はまだ小さいから風を受けても一斉に同方向には靡かない。当たり前の情景が早苗への優しさとしてしっとりと読む者に伝わってくる。まるで生きた我が子への愛情のように。
◎(仙翁)植えたばかりの苗は、まだ揺れるほどではなさそうです。
○(宙虫)日に日に植田の状況は変わる。風がもたらす光景がいい。
屋根に居る猫の長鳴き余り苗 ちせい
〇(瞳人)ああ、終わったねえと、にゃんこも、一安心
◎(カンナ)情景が浮かびます。上五、中七の景がありきたりでないのが良いと思います。
〇(珠子)夏の恋猫。猫の妊娠期間は2か月ですからさもありなん。
〇(めたもん)何時だって猫はマイペース。忙しかろうが、苗が余ろうが、気分次第で「みゃーん」と鳴きます。
留守の間に軒の子燕皆育つ アゼリア
○(藤三彩)だいぶ長い留守だったのだろう。親燕がよく育てたものだ
○(幹夫)明るい未来だ!
〇(仙翁)燕の子がよく飛んでいます。
○(ちせい)パーフェクト子育てですね。
カーブミラーに映る植田の広さかな 春生
〇(楊子)ふる里の山が代田にうつるという句は類想が多いが、「カーブミラー」という視点がよかった。
〇(まきえっと)小さなカーブミラーと植田の対比がいいですね。
○(幹夫)一面に広がる植田の景。
○(アダー女)確かにカーブミラーは周りが拡大鏡ですものね。田植え後の疲れた身にはしみじみとやりがいのあった広さを感じてほっとしている様子、しかも誇らしい気持ちまで伝わってきて「お疲れ様でした。」と言いたくなる。
ゆるぎなき植田の風に聴くあした あちゃこ
◎(藤三彩)田植が終わって見る植田には静かな安堵が見える。あしたも無事でありますように。
〇(珠子)逞しく育って、あしたには豊かな稔りを。
〇(まきえっと)ゆるぎなき植田とは?と思いましたが、聴くあしたが良かったです。
◯(道人)農に希望あり。
側溝のおどろおどろし梅雨の闇 アダー女
○(泉)出水になると、側溝が隠れます。とても危険ですね。
小流れに傾くポスト梅雨の月 あき子
〇(春生)微妙な感じを捉えています。
○(卯平)梅雨の月で詩を感じる。
〇(カンナ)詩情のある上手い句だと思います。
過疎の村みなが集まる田植かな 泉
〇(瞳人)助け合い、いま、どこもそうですよね
〇(あき子)淡々とした表現で現実を捉えていると思いました。
彼の風とテムズ川辺に夏帽子 幹夫
今月の写真
熊本市郊外の田園地帯。
梅雨入りは遅れたけれど、田植には間に合った。
年々農地は住宅開発などで狭まっているし、田植作業には若い人をなかなか見ることがなくなって。
今回の投句にあるような農作業風景は遠くなったように感じている。
では、次回15日句会の告知をお待ちください。
※句会当番のまきえっとさん、麦「作家賞」受賞おめでとう!!
広島はまだ梅雨が明けておりません。今日は雨ですが、蒸し暑い毎日に閉口しています。梅雨が明けると、猛暑が待っています。日本の夏ですね・・・。