つづき
文字いらぬ吹出し二つ日向ぼこ めたもん
○(泉)漫画のセリフのことでしょうか。
○(あちゃこ)吹き出しの句は私にもありますが、二つとした事でドラマが生まれました。上五は、少し気にはなります。何か良い工夫はないかしら?
○(卯平)上五の「文字いらぬ」をどう鑑賞するか。「文字を必要としない吹出し」の意味か、それとも吹出しに文字と言うモノが入らない景なのか。日向ぼこであれば「必要としない」と言う理で鑑賞するより、文字が入らない空白の吹出しと言う景として捉えるとこの季語が生きるのではないか。アメリカの有名な漫画の一コマを思い浮かべた。
◎(あき子)簡潔さが気持ち良い。言葉を交わさなくても分かり合える二人の、日向ぼこが続きますように。
◎(瞳人)おじいさんや、うむ……、ばあさんや、はい……
◯(道人)こういう日向ぼこもあるんだなぁと感心しました。
○(宙虫)吹き出しの距離感が見えていい。
蝋梅や遠回りして吐く本音 あちゃこ
〇(楊子)この取り合わせにはしばらく考え込みました。でもいただきました。人の行動に説明のつかないこともありますから。
○(餡子)蠟梅には、そんな雰囲気があります。心の内を語ってしまいそう。紅梅や白梅などでは、建前で終わってしまいそう。
○(卯平)蝋梅には詠み手にこのように言わしめる力がある。遠回りとは詠み手の中の悶々とした気持ち。本音と蝋梅の関係が面白い。
〇(あき子)遠回りしないと言い出せない、でも本音を吐き出したいのか。見上げると、蝋梅が大丈夫と言っているようです。
〇(珠子)「いいお天気だしちょっと遠回りしていかない?」「蝋梅がいい匂い…」「実はね…」
◯(道人)遠回りしてまでして吐く本音とは、とつい想像してしまう。蝋梅の香の為せる術かも。
○(宙虫)一気に本音を口にするのではなく、ぽつぽつとの本音なんだろう。臘梅がなせるのだろう。
鴉の巣群れに遅れる一羽二羽 あき子
〇(仙翁)一羽二羽が、遅れること、ありそうですね。
○(餡子)どこの世界にも、いますね。「~~~さんが来ましたので、揃いました!」
◎ (多実生) 私は小二の三学期から弟を背負わされ、鴉が塒に帰る大移動の光景を見上げていました。寒空を次々帰還、しばらく群れ飛びが続き、句の様に一二羽が後を追う光景も、度々見られ本当に懐かしい限りです。
人の日の老犬福沢諭吉めく 楊子
◎(藤三彩)壱萬園札の顔をじっと見る。ほくろがあるようだ。
◎(カンナ)面白い句
〇(ちせい)一月七日の人日の日。老犬が福沢諭吉に見えた。
(選外)(卯平)「人日」を「人の日」と表記する事で折角の二句一章の詩情が崩れていないか。老犬とやがて消え逝く福沢諭吉のお札の関係に詠み手の工夫は伺える。
冬田に育つ羽音は父の捨てた影 宙虫
〇(楊子)超詩的な詠みに引き込まれました。なかなかできません。
〇(カンナ)「羽音は父の捨てた影」良いですね。「冬田に育つ」初句が七音? 更に、羽音が育つという表現、俳句初心者には難解な句かも知れない。
〇(めたもん)抽象的で詩的な表現を十分理解する力はありませんが、味わい深い句だと思います。
◎(道人)音が影という発想に惹かれた。父の捨てた荒田で鳥の羽音を聞くたびに父の面影を追うのだろう。田は父の夢だったのかも知れない。
合格の知らせ待ちをり犬も吾も アネモネ
〇(カンナ)受験シーズンですね
梅安や何処へ思案の針をさめ 瞳人
○(幹夫)仕掛人藤枝梅安凄腕!私は尾形拳派かなあ。
バレンタインデー若先生の往診来 あき子
○(餡子)写真にクリニックが写っていましたね。あれからこういう発想が若々しい!
◎(卯平)詠み手の若いドクターへ仄かな思い。と言う事は詠み手は常に床に伏しているのだろうか。「若先生」と言う以上、詠み手は少なくともこのドクターより歳が上の女性であろう。長き闘病生活か、それとも介護を受けている生活か。この季語に託する詠み手の闘病への思い。
〇(アネモネ)ハンサムそうな若先生です。
〇(まきえっと)何回も鏡を見直ししそうです。うっすら口紅も。
◯ (アゼリア) 正直若先生には、心が華やぎますよね。
長き貨車に遮断機揺れて寒鴉 めたもん
◎(仙翁)遮断機揺れて、いいですね。
〇(カンナ)取り合わせが良いと思います。
(選外)(卯平)「貨車」「遮断機」「寒鴉」の句材には共感。「長き」「揺れて」と言う説明を更に削ぎ落として煮詰めていけば面白い句になるだろう。
風邪ひくや受付嬢の優しくて 泉
〇(カンナ)情景が浮かびます。
生きるため群れているだけ寒烏 あちゃこ
〇(瞳人)まったく、俳句にもなりませんね
〇 (多実生) この時期の鴉は全てが餌だけの行動です。
(選外)(卯平)確かにそうだ。既に答えを言い尽くしていないか。
屍に群れて秘境の寒鴉 幹夫
◎(泉)発想の飛躍が見事です。
◎(春生)創造力豊かにまとめる力量に脱帽。
○(宙虫)どこまでも黒い・・・・・。
(選外)(卯平)このままでは屍に寒鴉が群れていると言う報告でしかないのでは。例えば「屍の群るる秘境や寒鴉」であれば「楢山節考」の世界が伺える。
寒空やヒッチコックの鴉群れ 藤三彩
〇(仙翁)ヒッチコックの鳥、怖い映画でしたね。
〇(春生)「ヒッチコックの鴉」がうまい。俳句の世界が広がりました。
〇(瞳人)あれ、なんで、あんなことになったのでしたかしら
鳥帰る汚職横行する日本 カンナ
◯(道人)田に群れる鴉を「汚職横行」と見立てだのだろう。季語がいい。鳥にも見捨てられた日本。
村人より多き大群枯野原 餡子
〇 (多実生) 昔、権兵が種まきゃ鴉がほじくるでしたが、最近の鴉は餌を求めて都会暮らしです。
◎(まきえっと)本当に。ちょっと怖さも感じます。
寒鴉去り柴犬の目の虚ろ アゼリア
◎(ちせい)虚ろに惹かれました。柴犬が鴉に翻弄されたような。
〇(まきえっと)「目の虚ろ」がいいですね。
寒禽の群るる平場となりにけり 卯平
冬の田にカラス数多に日の沈むまで 仙翁
餌漁る外に訳なし冬田鳥 多実生
〇(瞳人)そうおもうと、俳句にはなりにくいですねえ
○(あちゃこ)確かに。冬の鳥は生きるのに必死。擬人的説明が効いています。
魑魅眠る荒田に群るる寒鴉 道人
〇(珠子)魑魅も寝過ごしてはいられません。鴉に突っつかれてしまいます。
◎ (アゼリア) 鴉は何処か不気味な鳥ですよね。
節分の地球をつつく群れ鴉 珠子
〇 (多実生) 地球をつつくが大袈裟で面白い。
○(藤三彩)豆打ちの翌日は豆が鳥へのご馳走。
〇(めたもん)「節分の地球をつつく」がいいですね。春になっていく気分が独特の視点から詠まれ俳諧味も。
〇(まきえっと)地球をつつくがいいですね。
◯ (アゼリア)地球を荒らした人間に色々不服ありそうですね。
〇(ちせい)地球とは壮大ですね。鴉の群れの壮観さ。
○(宙虫)節分の地球が妙にひっかかる。何か動きだす予兆みたいだ。
啓蟄のいきなり鳥に襲はるる 春生
〇(めたもん)地面から顔を出したら、いきなりの鳥。そんな景が殺伐とせず、どこか滑稽に詠まれています。
〇(瞳人)どうか、お気を付けになって、虫だけじゃあ、ありませんから
○(泉)出て来る虫たちも命懸けです。
今月の写真・・・・たまたま散歩の途中で目にした光景の三枚。
それでは次回の告知までお待ちください。
広島は次第に暖かくなって来ました。二月はもう春ですね。三月は卒業と入学と、人生の節目になります。入学試験に就職試験と大変でしょう。
私にとっては、遥かな昔のことですが。それにしても、国会で御老人たちが繰り広げている茶番劇は、今まで何回、見て来たことか?国民が政治に参加していない、という事でしょう。