蛤の方貝合わぬ壁盛られ 藤三彩
アクセル踏んで春を迎えに行く日暮れ 宙虫
◎(ルカ)春、に作者の気持ちが託されています。
○(まきえっと)迎えに行くがよいですね。
○(敏)七七五の作品ながら間延びがしないのは、アクセルを踏み込んだからでしょう。
◎(瓦すずめ)破調ですが、すごくかっこいい。春を迎えに行くだけでもかっこいいのに、アクセルを踏むとまでかいたことでかっこよさが増しているように思います。
○(珠子)一足先に春を見に行くのではなく、迎えに行くという積極性。
執念で塀よじ登る猫の恋 泉
◎(ちせい)季語は「猫の恋」。塀によじ登る執念の猫が眼前化した見たいでした。
〇(瞳人)執念怖し
◎(まきえっと)執念が「猫の恋」の雰囲気出しております。
◎ (多実生) 俳句では恋の猫ですが、恋の執念は種の保存の原則で猫以外も同様の様です。
発掘に工事順延山笑ふ アネモネ
◎ (アゼリア) 発想がユーモラスで、季語も明るく春らしい佳句と思いました。
○(珠子)私のこの家の下にも、私の知らない時代の生活の跡が埋まっているのだろうかと時々思います。
○(餡子)私も同じように感じて、句を作りましたのでびっくりポンです。
〇(宙虫)季語の置き場所がうまい。
背が丸むぐっと冷え込む日暮かな 多実生
高々と猪名野ささ原鳥帰る 瞳人
◯ (アゼリア) 3枚の写真とは結び付きませんでしたが 、美しい句と思いました。
(選外)(藤三彩)猪名野笹原、有馬山の小倉百人一首や万葉集の見立てにそそられま
した。「高々と」は「鳥帰る」にかかるのかな
老人は春の埃に立ちすくむ 幹夫
〇(ルカ)不思議な魅力をもった句です。
〇(瓦すずめ)春の埃に覆われた状況の、たちすくむしかない感じが出ています。
〇(宙虫)すくむが少し言い過ぎな感もあるけれど。春の気分ではあります。
あの豪雨嘘のようなる冬の川 多実生
〇(藤三彩)臨場感がありました
永き日のバックミラーの男かな ルカ
〇(瓦すずめ)バックミラーということは、後部座席に座っている方でしょうか。彼は助手席ではなく、なぜ後部座席に座っているのか。なぞがあり想像が膨らみます。
○(幹夫)バックミラーに映るのは永き日の憂いある男!
○(珠子)この頃はスマホやタブレットなど日常のどこにもカメラがあって、無防備な姿を撮られることも増えました。バックミラーはさらに死角、どきりとします。
〇(宙虫)絵になります。
夢捨てて町を出る日の春落暉 餡子
〇(道人)この「町」は故郷ではない。どんな町でどんな夢を捨てたのでしょうか?
○(まきえっと)また夢を見つけて帰ってきてください。
○(敏)やむを得ず離郷していく身と、春落日がシンクロしているようです。
〇(仙翁)侘しい旅立ちでしょうか。夕焼けは希望にならないか。
○(幹夫)春落暉が情緒佳く詠まれていると思いました。
〇 (多実生) 捨てた夢の後にはまた、夢が待っています。
〇(宙虫)春の夕暮れはどこか挫折の色がある。
(選外)(藤三彩)思うようにはなかなかいかないものです。センチメンタルな青春。
春夕焼高層ビルの建ち並び 春生
風も香も春 助手席に呼び込みぬ 敏
○(幹夫)早春の息吹が佳く詠まれていると思いました。。
朝焼けに血を流したる春の山 仙翁
野ざらしの土の声聴く民の春 あちゃこ
〇(藤三彩)土は本来、樹々を育て生態系の元になろうというのに、使えない土地は確
かに悲しい
(選外)(道人)「民」はやや突き放したような表現だが、中七と繋がって一面に春の音が聞こえてくる。
助手席の蝶と話しつ田舎道 瓦すずめ
○(ちせい)季語は「蝶」。助手席の蝶と言う言い方がいいと思いました。
○(ルカ)少し作った感がありますが、面白いです。
〇(仙翁)確かに、田舎でトラックに乗っていると蝶が迷い込んだりします。
〇(春生)中句「蝶と話しつ」と捉えたのには脱帽です。
◎(アネモネ)いいなあ。助手席の蝶の羽ばたきは作者への返答なんでしょうね。
○(泉)本当にのんびりとした感じが、良く出ています。
◎(幹夫)走行中の田舎道ならではの様子が詠まれていると思いました。
寝ていい啓蟄「プレミアムフライデー」 藤三彩
遠野火や明日の色は茜色 道人
○(ルカ)季語がいいですね。
○(あちゃこ)春の明るさと期待感が溢れています。
◯ (アゼリア) 遠野火という言葉に惹かれました。
鳥帰る余分なものを置いてゆく まきえっと
○(ちせい)季語は「鳥帰る」。余分な物を置いて行く精神に感応出来ました。
○(ルカ)さっぱりとした心情。
◎(道人)勝手読みながら、北へ帰る鳥が俯瞰する人間世界は、公共工事をはじめ余分なものだらけのように見える。「余分なもの」を置いてゆくのは鳥ではなく人間であると解釈させて頂いた。写真の工事は余分なものではなく、「復興の工事」で合って欲しいのだが...
〇(瞳人)まさか、連れを捨てて
〇(仙翁)渡り鳥は、本来無一物。何も持たず、何も持って行かない。
○(あちゃこ)余分なものなど有るのか、無いのか?誰にもわからないがら、作者の目線が面白い。
◯ (アゼリア) 鳥や遊牧民に学びたいです。本当に必要な物は少ないですよね。
○(泉)余分な物が乱雑に置かれています。片付けるのが大変ですね。
春夕焼け街の殺意を掘り起こす 宙虫
○(まきえっと)街の殺意ってどんなことを言うんでしょうか?
◎(仙翁)怖い句だが、確かに夕焼けは血の色に見えるかも。
○(敏)「街の殺意」って、かの森友学園の校庭に埋まっている「悪意」のようなものでしょうか。それにしても一句に「殺意」を持ち込むなんて! ス・ゴ・イ
○(泉)「街の殺意」という表現が、強烈な印象です。
(選外)(道人)殺伐とした景を切り取って、世の中を風刺しているようだ。
二月尽く築山はまだ八合目 敏
〇(道人)「築山」と捉えた感性が素晴らしい。深読みすれば「築山」は人間の象徴であり、まだまだ先は長い、と作者自身に言い聞かせているようでもある。
〇(春生)「築山はまだ八合目」がうまいですね。
○(アネモネ)そりゃあ大変。新年度前に完成に急がなければ・・・。
春昼のバックミラーにブルドーザ 幹夫
○(珠子)バックミラーに映るのが、永日の男ではなく春昼のブルドーザ。こちらは昼休み中のブルドーザかもしれません。
土の山笑ふ朝日か夕日かと ちせい
〇(瓦すずめ)なぜ朝日か夕日かわからないのか。不思議。でも、朝日か夕日か分からなくなって笑うくらい、おおらかな山なんだろうなあ、という気がしました。
夜釣する場所を決めたり春夕焼 春生
〇 (多実生) 最善を尽します。釣り師は場所選びが決め手の様です。
◎(藤三彩)ちぬ(黒鯛)釣りは堤防より意外と人の駐車場が当たり場だったりする
掘削の地響き花の種を買う 珠子
○(ちせい)季語は「花の種」。掘削、地響きなど、俳句を高めている、内容を高めていると思いました。
〇(道人)「地響き」と「花の種」取り合わせが佳い。
○(まきえっと)掘削から「花の種」への展開が面白いです。
○(敏)まさに異物な物同士の「二物衝撃」!
〇(仙翁)機械で乱暴に土を掘り起こす、小さく掘って花の種を植える。
〇(瓦すずめ)ブルドーザーの音を聞きながら、花の種を買う。自然を自由にする人間の業を感じました。
〇(春生)面白い取り合わせですね。
○(アネモネ)掘削の後は花の公園。いまから種撒くとすると夏にお披露目。
○(あちゃこ)変わりゆくものと変わらぬものと。春の一景として共感。
◯ (アゼリア)地響きすごいですよね。花の種を買うが素敵です。
〇(藤三彩)外はともかく我は吾のマイペースで花を愉しむ対比がおかしい
○(幹夫)面白い連想の俳句だと思いました。
◎(宙虫)花の種がいいです。どんな環境でも未来を楽しみたい。
遺跡出て工事中断春夕焼 餡子
○(まきえっと) 無残にも遺跡が破壊される世の中になってしまいました
〇(春生)想像力を駆使した句だと思いました。
早春やホテルを見ながら暗唱す ちせい
春の暮恐竜雲の湧き立ちぬ 泉
(選外)(道人)「恐竜雲」とは面白い。大きな景です。
ダンプカーの上の昼飯鳥帰る 珠子
〇(瞳人)美味そうですね
◎(春生)工事現場の様子が見事に捉えられています。
○(アネモネ)工事は大変だろうけれど昼飯時の長閑さが伝わってきます。
〇 (多実生) 仕事場での昼食は色々な想像が出来ますがダンプカーは寒さが凌げて最高でしょうね。
〇(ルカ)景が浮かびます。
◯ (アゼリア) 高いところで、空を見ながらとる昼食ー良い気分転換になりそうですね。
○(餡子)今。問題になっている工事現場が大阪にありますね。摩訶不思議なことが、現実にあるんですね。
○(泉)現実にダンプカーの上で、昼飯を食べている感じがします。
啓蟄の虫ブルドーザーと対峙せり アゼリア
◎(敏)虫はあたかも、ゴジラに立ち向かう非力な人間のようです。
〇(瓦すずめ)虫がブルドーザーと対峙している様子が好きです。
◎(あちゃこ)新しい感覚。対比が絶妙です。
〇(藤三彩)みみずやおけらの春眠をじゃましたのは人でした
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。現実に有りそうですね。
(選外)(道人)一寸の虫にも五分の魂ですね。俳諧味あり。
母の背を追うて三月はぐれ雲 あちゃこ
〇(道人)「負う」ではなく「追う」に叙情あり。季語も良い。
〇(瞳人)そういう雲って、誰のこと
○(餡子)三枚の写真から、ここまでドラマを作るのには色々な感慨をとおりぬけてきたのでしょうね。
〇(宙虫)田舎芝居に出てきそうなシチュエーションです。
人も雲も西へ西へと春夕焼 道人
〇(春生)リフレーンが効果的で、リズムの良い句ですね。
○(アネモネ)いっぷくの絵ですね。茜色に染まった春の雲の色合いがいいですね。
○(餡子)東へ東へ都市一極集中。春夕焼だけは、どこでもいっしょ。
読み止しを連れて上厠の春一ト日 瞳人
車止め春鴨通す鄙の道 アゼリア
○(ちせい)季語は「春鴨」。微笑ましく、且つユーモラスだと思いました。「鄙の道」にも風格を感じました。
〇(瞳人)まだ子連れには早そうな
○(敏)鄙人の優しさが出ていますね。
○(あちゃこ)優しさに心がほっこりします。
冴返る壁一枚の内と外 ルカ
〇(仙翁)外も内も寒いのか、外は寒いが内は暖かいのか。
〇 (多実生) 内と外では天国と地獄。
◎(珠子)工事現場の一枚の壁の内と外。「冴返る」の季語ひとつで締めるとは。写真がないとわかりにくいかもしれませんが。
〇(藤三彩)今年のキーワードは「壁」になりそう。万里の長城も維持困難、さてメキ
シコ国境の壁は長続きするのだろうか
◎(泉)トランプ大統領の「メキシコ国境の壁」を思い出しました。
自動車で世界一周風光る まきえっと
〇(道人)この写真詠で「世界一周」とは、発想のスケールが大きい。
○(餡子)今、まさに故郷をあとにして出発の景。気を付けて行っていらっしゃい!
工事場に盛土積み上げ彼岸前 アネモネ
削られし山に夕焼け水温む 仙翁
○(ちせい)季語は「水温む」。人間の開発に対して、自然の泰然自若さが対置されているようで興味深い句でした。
〇 (多実生) わが故郷も幾つもの山が砕石で削られていま
○(アネモネ)秩父の武甲山を想像しました。水温むが山の痛々しさを慰めています。
○(珠子)ニンゲンに削られて削られて、なおニンゲンのために芽吹くのでしょう。
○(幹夫)水温むが佳き景で詠まれていると思いました。
〇(宙虫)自然はどんな形になっても自然。人間は随分こわしてきたけれど。
春塵を越えてロボットコンテスト 瓦すずめ
○(あちゃこ)写真からは跳べない私。ロボットコンテストは、関心があってたまにみます。目標は優勝⁈
◎(餡子)この景すべてが大きな架空の景色。そこで働く人たちも模型。車の中から、意のままに動かしている。おもしろいはっそうですね。
★★★
毎月毎回たくさんの参加ありがとうございます。
写真吟行俳句楽しんでいただけているでしょうか?
苦労なさっている方もいるようですが、それもまた楽しです。
きっと。
では、まきえっとさんの告知を待ちましょう。
また、来月の景色を見つけに出かけてきます。
宙虫さんの写真吟行は、非常に面白いと思います。方法論として新鮮であり、興味深いと思います。いろいろな発想が湧いて来るのですが、俳句にするのは、なかなか難しい。この様な視覚的なものを提供されると、大変面白いと思います。宙虫さんには、ご苦労な事ですが・・・。
皆さんの発想、楽しみです。