つづき
鎮魂の町の微笑み冬帽子 あちゃこ
〇(卯平)町(街ではない)全体が鎮魂であることから3.11や昨年の1.01が先ず浮かんでくる。揚句からそこにお住まいの好々爺の姿。こうして未来に向けて人々は前進する。
歳晩や受胎告知の文届く 卯平
〇(楊子)うちの嫁が重なりました。少子化のおり、めでたいことです。
〇(アダー女)年末に娘さんかお嫁さんのご懐妊の嬉しい知らせがラインに入ったのでしょうか?めでたい新年を迎えられた事でしょうね。
夕暮れの解放される花八つ手 まきえっと
山眠る雲にも山が出来て居り ちせい
〇(アダー女)地上の山だけでなく、寒空の雲も眠っているように見える冬本番!
◯(道人)もの思いに耽ってぼんやりと冬の山と雲の容を見ているような感覚がいい。モノクロの世界。
〇(あき子)実在の山と雲の山が並んでいる景に、冬の重みを感じます。
〇(春生)構図がおもしろい。見える句です。
共学化に抗う生徒片時雨 アゼリア
〇(春生)こんな時代に私も生きてきました。
枯野行く海援隊の歌真似て 卯平
〇(餡子)海援隊!とても昔のように思えます。
◎(藤三彩)年末の武田鉄矢・海援隊なら西田敏行の「もしもピアノが弾けたなら」かな
〇(ちせい)歌を覚えれば心が豊かになります。枯野に希望が。
枯草を踏む枯草の風となる あちゃこ
◯ (アゼリア) 枯草のリフレインが効いていると思います。
〇(楊子)そういうふうに受け入れたいです。
◎(珠子)あの枯草の写真からイメージしたものが、一番私に近い句です。
〇(幹夫)素敵なリフレインだ。
〇(まきえっと)「枯草」の繰り返しが効果的です。
〇(仙翁)なかなか面白い表現でしょうか。
◯(道人)「踏み」ではなく「踏む」と軽く切れているのが「枯草」のリフレイン効果を引き出している。
〇(春生)「枯草の風となる」が詩的。
◎(ちせい)風となった主体は自分全体で枯草を感じられるようになったのだと思うのです。或いは句作者が枯草を踏む事によって生じた、感じた風が自分の外に強く感じられたのでしょう。
◎(宙虫)不思議なリズムに戸惑っているうちに風になってしまう。何かをなくしているような。
枯葎滅びの和音を踏んで行く ちせい
〇(楊子)ドミソではない短調の和音が聞こえます。
◎(アダー女)葎は棘があったりして痛い。「滅びの和音」って淋しそうですね。老年期の人生を表現しているとしたら言い得て妙だと思います。個人的には全く然りと思う一方で、今年はあるがまま、好きに生きて見たいものだと思ったりして、考えさせられる一句でした。
〇(あちゃこ)音に着目して私も作句しました。滅びの和音になるほどと感心。中八音なので、語順をかえては?
〇(めたもん)中七「滅びの和音」がいいですね。 それを上手く無理なく生かす上五、下五の詠みも巧みだと思います。
〇(宙虫)滅びの和音が面白い。ただ、「枯」と「滅び」の重複感がもったいないなとも思う。
電線の空を細切れ年の暮 まきえっと
〇(仙翁)空を細切れ、面白いですね。
また一つ齢重ねて花八手 道人
◎(アネモネ)ははは!また重ねちゃいました!
◎(瞳人)八手の花というのは、その、さりげなさがいいのです
枯れすすきキラキラ風のホログラム めたもん
〇(仙翁)すすきの原がキラキラ、面白いですね。
◯(道人)枯れすすきとホログラムの取合せに惹かれた。「キラキラ風」は多少きになるが。
温室の隣果てなき枯野原 仙翁
◎(泉)意味深な俳句だと思います。
大枯野走るバイクの砂煙 春生
〇(幹夫)大きな景「大枯野」の中、颯爽と砂煙を立てながらバイクが走る。
冬青空シルバーパスは期限付き カンナ
〇(餡子)残念ながら、千葉県には電車やバスのシルバーパスは無いのです。東京都が羨ましい。
〇(アネモネ)季語が何となく面白い。
〇(泉)何となくユーモラスな俳句だと思います。
〇(藤三彩)シルバーパスの区切りの時には納税者用の年間費を払っています
〇(卯平)なんやかや言っても高齢者には期限付の無料券でも羨ましい。さすが東京だ。「寒晴や」であれば下五の「期限付き」がより生きるだろう。
極月や畑の風聞き枯れを聞き アネモネ
〇(珠子)忙中閑あり。どんなに忙しくても野や畑を過る風音を聞く余裕を持つ…詩人。
〇(あちゃこ)下五の枯れを聞くに共感。わたしなら聴くと書くかな?
〇(あき子)聞きのリフレインに揺れを感じました。枯れを聞きが極月を際立たせている。
看板のかわらぬ町の寒雀 宙虫
〇(餡子)いいですねえ。ホッとしますね。
〇(瞳人)さみしいです、そこがまたいいのです
〇(まきえっと)看板が変わらない安心感と不安感かな。
◎(仙翁)変わらぬ町、変わってゆく街、それぞれですね。
〇(めたもん)昔からの街にいる寒雀。 改めて、寒雀ってそうだよねと気づかせてくれる句。 そして、寒雀は人といっしょに住んでいることにも。
〇(卯平)町だから「看板のかわらぬ」が生きる。街では「看板のかわらぬ」の景はピンボケだろう。寒雀も上五中七を支えている。但し中七「変わらぬ町や」であればではあるが。
枯れ草の奥で暖取る者は誰 アダー女
花八つ手きれいな爪の父だった 珠子
◎(道人)取合せに、忘れかけていた父子の交流の感性を揺さぶられた。
◯ (アゼリア)ドラマがありそうです。病気がちで知的な人物像が浮かんできます。
◎(楊子)この意外な発想にまいりました。母の爪ではなく父の爪というところがいいです。
〇(カンナ)取り合わせが上手いと思います。
◎(幹夫)お父さんへの憧憬が詠まれており大いに共感を覚えた。
◎(卯平)柩に横たわる父の姿。肉体労働の手ではない。おそらく職人や若しくは歌舞伎役者としての矜持のまま生涯をお過ごしになったのであろう。花八手でその生涯を語っている。迷わず特選
〇(宙虫)父の爪がきれいと言う目線はなかなか出てこない。
花八つ手水をもらひに蔵の町 幹夫
花八手ぽんとあやつの誕生花 瞳人
暮の市仏具神器を積み上げて 楊子
〇(泉)滅多に使わないのに、仏具神器は欠かせない。
〇(アネモネ)そんな年の市ありそうです。
〇(ちせい)仏具神器と暮の市がよく合っていると思いました。
花八つ手家族写真の並び順 あき子
〇(まきえっと)「花八つ手」の句が結構ありましたが、「家族写真」から感じる小さな幸せと合っている感じがしました。
〇(楊子)座布団は床の間と上座として自然と順番があります。写真なら真ん中が父や祖父でしょう。庭に花八手があるということは旧家の集まりでしょう。
◎(あちゃこ)色々な想像が膨らみます。家族の歴史を語る集合写真は、年毎に変わりゆくのでしょう。逝く人もあり、新しき人の顔もあり。何気なさに深さを感じる一句。
◯ (アゼリア)家族の力関係が反映しそうです。
〇(卯平)如何にも新年の句だ。どんな並び順で家族写真を撮ったのか。その答えは「花八つ手」。それなりに長寿の方を敬った並び方だったであろう。
花八手九人で送る小さき葬 アゼリア
◎(餡子)私も大晦日にお葬式がありました。導師が尼僧でした。初めてですがよいお話でした。
〇(カンナ)取り合わせが良いと思います。
〇(幹夫)実際的に詠まれており共感を覚えた。
〇(あちゃこ)家族葬が増える昨今。九人の顔ぶれを想像しました。
〇(あき子)九人の見送る小さき葬に、花八手のさり気なさが優しい。
〇(藤三彩)亡くなった方のお歳がわからないが犬猫でもあるまいか
〇(春生)季語「花八手」の質素な感じと小さいお葬式が共鳴し合っています。
(選外)(卯平)いただきたかった句。中七「九人で送る」で十分に葬の「小さき」は伝わるだろう。「小さき」に代わる語彙があれば選候補。その語彙はこの現場にいた詠み手しか得る事が出来ないだろう。
大晦日土産どっさり夜行バス 泉
〇(瞳人)待っている人の笑顔が目に浮かびます
〇(アネモネ)出稼ぎ帰りでしょうか!
〇(カンナ)土産を抱えて帰省でしょうか?
〇(藤三彩)都会から田舎の実家へ。何をそんなに持ってゆくのだろうか
駅前の一杯飲み屋冬灯し 餡子
〇(藤三彩)ちょっと一息ついて、今年は居抜きの新たな珈琲店で女性店員とお話をしました。
今月の写真
自分の周辺の12月の景色でした・・・
※この句会は「麦」の句会のひとつとなっています。
麦の会のブログはこちら!
広島は急に寒くなってきました。明日は大雪になるかも知れません。広島では珍しい寒さです。青森県などの豪雪を見ていると、全くの別世界です。私には豪雪地帯の俳句は詠めない、と痛感しました。