父母なくも姉待つ里や栗ごはん アゼリア
〇(春生)故郷はやはりいいですね。おいしいお姉さまの栗御飯が待っています。
○(幹夫)率直に詠まれており好感です。
秋の雲尻に手が来て驚愕す ちせい
ブレーキは木通まぶしく割れたから 宙虫
〇(楊子)ブレーキ音が聞こえたような。出会いは突然やってくる。
◯(道人)意味は追わず。言葉に光を感じる。
(選外)(藤三彩)あけびの実の紫は慎ましやかな色、その実の中も薄紫。ゴーヤが割れた激赤には驚きますが。
いい旅になるぞでっかい鰯雲 珠子
◎(アネモネ)ほんと、いい旅になりそう。
〇 (多実生) 鰯雲は秋晴れです。良い旅の保証です。
○(敏)秋を象徴する鰯雲、それをふり仰ぎながらの旅。「でっかい」に良い旅路への期待が弾む。
〇(まきえっと)これだけ鰯雲がきれいだといい旅になりそうです。言い切ったところがよいですね。
○(幹夫)壮大な鰯雲!
〇(宙虫)解放感いっぱいでここちいい。
カーナビの無機質な声鰯雲 まきえっと
○(ルカ)季語が効いています。
○(餡子)カーナビは助かりますが、律儀すぎるというか、しつこいというか、人間的ではないですね。鰯雲との取り合せがいいですね。
〇(春生)カーナビからの感情のない声が聞えるようです。
〇(宙虫)鰯雲までの距離間がいい。
(選外)(卯平)説明してしまっているのでは。カーナビと無機質な声は一緒。 そこを工夫して次の次元へ高めるのが俳句では。
止まらない消費増税秋冷線 藤三彩
○(泉)個人消費は長期的に低迷する、と思います。
下校児のハミング続く鰯雲 春生
〇 (多実生) 鰯雲と下校の解放感、ハミングも自然にでます。
○(敏)楽しそうなハミングが聞こえてきました。
○(餡子)登校は元気がありませんが、下校はハミングしながらスキップで弾んでいます。
〇(まきえっと)小学生に流行っている歌ってどんな曲だろう。
○(ちせい)季語は「鰯雲」。ハミングが雲まで届いて居る様な。
阿蘇路とやどこから見ても鰯雲 道人
○(あちゃこ)阿蘇をぐるりと一周した旅の清々しさを思い出しました。地震後の南阿蘇の痛ましさも。鰯雲は全てを知っている。
〇(藤三彩)外輪山の展望所から見る阿蘇の広大な光景は何も遮るものがない。また行きたいな。
鱗雲真北にどんと男体山 多実生
〇(藤三彩)全国にいくつか男体山の名が付く山があるらしい。日光から見る男体山の紅葉もそろそろ始まるか。
〇(春生)具体的に「男体山」が出ていたのが句の存在感を持たせた。
登校は一旦停止鰯雲 卯平
鰯雲ビルが切り取る大都会 泉
○(ルカ)無機質な感じがよく出ています。
○(敏)大都会に林立する巨大なビル群。そのビルの海の上空を泳ぐように漂う鰯雲。立体的な構図が鮮やか。
○(仙翁)空を分断する都会のビル、その通りですね。
〇(楊子)都会の空を的確に表現している。鰯雲の穏やかさとバランスをとっている。
◯(アゼリア)雲も夕焼けも花火もビルに邪魔されて残念なことがあります。
◯(道人)福永耕二の「新宿ははるかなる墓碑鳥渡る」の詩情を無機質にしたような渇いた句。
〇(宙虫)大都会とベタに置いたところがなんとかくいい。
少年の透けゆく荒野鰯雲 ルカ
○(仙翁)透けゆく、不思議な光景ですが、ありそうです・
◎(まきえっと)少年の透けゆく荒野という表現が良いですね。
○(ちせい)季語は「鰯雲」。透き通るような天高き秋の空。
手鏡の向うは黄落の狂喜 楊子
◯(卯平)黄落の狂喜と言う措辞に共感。正にそれは狂気に通じる。何故なら上五の手鏡が「をんな」の執念を感じるからだ。特選を迷った句。
サイドミラーに路映し込む秋麗 敏
背中押す母さんの声鰯雲 あちゃこ
○(泉)迷った時に、一歩を踏み出す勇気。母さんが背中を押してくれます。
◯(卯平)何と甘えた作者か。マゾコンからの脱出を祈る。しかしその関係から脱出を試みている作者の心情(鰯雲と言う措辞がそれを表している)はまさに青春時代の己ではあるが。
〇 (多実生) 秋の空と母の後押し、やる気満々になります。
〇(珠子)どんよりした背に「行ってらっしゃい!車に気を付けてね!」母は偉大です。
○(ちせい)季語は「鰯雲」。秋声、秋思など他の季語も思い浮かびました。
薄化粧ルームミラーに映す秋 幹夫
○(ルカ)秋を感じます。
○(仙翁)どことなく、寂しい気もします。
現世は去り行く残るいわし雲 仙翁
○(あちゃこ)鰯雲には、心寂しさを誘われます。この一瞬も去っていく。去り行くと言い切る形が句を引き締めて効果的。
○(幹夫)季語「鰯雲」が創造的に写生されていて共感です。中句は「去りゆき残る」の方がリズムが揃うと思います。
足取りの重き通学いわし雲 餡子
〇 (多実生) これから登校、足取りは重い筈、でも気分は秋の空。
〇(春生)こういう時もありますね。
◎(ちせい)季語は「いわし雲」。何らかの詩的異化が感じられ秀句と思いました。
(選外)(道人)悩み多き通学路。「いわし雲」に救われます。
県木の栃の街路樹秋兆す 多実生
○(あちゃこ)我が県の木は槇。マロニエを県木と表現することでその土地ならではの限定した秋が想像されます。栃餅また食べたいな。
(選外)(藤三彩)栃木県の県木だから「栃の木」。栃の木は落葉高木ででかくなるのです。街路樹に適さないのでは。園芸品種は別ですが。栃の実となると営林所の方も県内ではほとんど見ないと言われています。とちのみ餅が懐かしい。
秋声を聴けり無人の歩道橋 ルカ
○(あちゃこ)歩道橋を利用する人を見なくなりましたね。歩道橋から見える秋に心が惹かれます。
○(敏)人通りの絶えた歩道橋に吹く風を、秋の声と聴いた作者の鋭敏な感性に感心。
〇(珠子)やっと秋風か、昔は子供たちの声でにぎわったものだがなあ…と鉄骨が思う。
○(仙翁)秋の声を聞いている、そんな空の様子ですね。
◎(餡子)歩道橋が辛い歳になってきました。誰も使わない歩道橋を秋風だけが通り抜けていきます。
〇(まきえっと)秋声はやはり虫の声でしょうか?それとも・・・
◯(アゼリア)歩道橋の上で秋声に耳を澄ますのも良いですよね。
◎(宙虫)無人と秋声がからみあって見えてくる景色がある。
バックミラーの中を駆け抜く秋の色 餡子
◯(卯平)予定調和をぬけていないが、この写真であればこれもありか。
〇(楊子)車の小さなミラーですが季節の移り変わりが正直に写る。
◯(アゼリア)黄金色が美しいです。
(選外)道人)バックミラーに次々と映り行く景に、秋色を感じるとは、気持ちのいい句。
ゆっくりと行こう鰯雲西へ 道人
秋の空バックミラーに離れたり 幹夫
次々と変わる信号小鳥来る まきえっと
○(敏)一句全体で秋の季語「色鳥」を想起しました。
〇(楊子)機械的な色の変化と小鳥のすばしっこい動きと色の取り合わせがいい。
彼の世へのステップ陸橋秋彼岸 敏
〇 (多実生) 寄る年で階段はきつい。彼の世へのステップは一足毎です。
うろこ雲どれかが弓を持つ天使 宙虫
◎(ルカ)うろこ雲を見上げていると、色んな事を想像します。この発想も詩的。
◎(あちゃこ)交通事故からの連想で死神が覗く…の句を考えましたが、出さなくて良かった!弓を持つ天使とは!発想の豊かさに脱帽です。
○(泉)童話の世界の様です。
〇(珠子)あのふわふわの鱗雲のどれかが天使に違いない、だれの胸に矢を射るつもりなのだろうか・・・でしょうか。私にこの句についてゆける想像力が欲しい。
◎(仙翁)弓を持つ天使、いると思います。
〇(藤三彩)恋のキューピッドが雲間から誰を狙っているのでしょう。
爽やかや舗道を渡る子の会釈 春生
○(泉)会釈は気持ちが良いですね。
◎ (多実生) 児童の登下校時に補助員へ感謝を込めた挨拶や会釈、まさに爽やかです。
○(餡子)爽やかなシーンですね。
〇(藤三彩)横断歩道に黄色い旗を持ったおばさんはいない。「止まってくれてありがとう」なんて今の子にあるのかな。
〇(まきえっと)爽やかと子の会釈がいいですね。
◯(道人)季語「爽やかや」の模範のような句。
◎(幹夫)児童の純粋無垢な景が詠まれる。
○(ちせい)季語は「爽やか」。舗道を爽気が漂って居る。
この道に涙を捨てた虫の秋 あちゃこ
◯(卯平)涙を捨てたのは当然として作者。それも今では思い出になっている。
秋の日が私の尻を輝かす ちせい
歩道橋を登る老人秋暑し 泉
○(ルカ)歩道橋は老人にとっては便利で不便。
○(アネモネ)「登る」がいいですね。
〇(楊子)老人と言ってしまいましたが、それがかえって秋暑しと響いている。
◎(春生)いかにも暑そうです。「歩道橋」は特にこんな感じです。。
○(幹夫)残暑、老人にとって歩道橋は渡るのではなく登るものなのですね。
紙洗剤残りにアクセル九月尽 藤三彩
鯖雲やバックミラーを歩く人 仙翁
○(ルカ)中七の「を」がいいと思います。
○(アネモネ)「バックミラーを歩く」が上手い。
〇(珠子)赤信号で停車中。おっとそこは横断歩道じゃないよ!
〇(道人)「バックミラーを歩く人」とは中々言えない。
〇(宙虫)小さな世界が不思議な感覚。
停まるたびサイドミラーに留まる秋 珠子
○(アネモネ)なるほど、得心です。
◎(敏)走行時と停車時に見る秋風景の違い。動画と静止画の違い、映画と写真の違いといったところでしょうか。
○(仙翁)停まる、留まる、いい表現ですね。
◎(楊子)留まるが効いている。信号停止のたびに秋を見つけてしてしまう。
〇(まきえっと)「留まる秋」がいいですね。
◯(アゼリア)こんな風に考えたら赤信号も楽しくなりそうです。
〇(道人)停車の度にサイドミラーに映る点景を「秋」と言い留めたのが佳い。
〇(春生)サイドミラーから見る秋もいいものです。
秋の雲私のあとについてきな 卯平
○(あちゃこ)あとについてきな!の言葉に連なる言葉を色々考えてみました。楽しい連想でした。ちょっとずるい一句です!
〇(珠子)私はだれ?誰を誘ってるの?ともかくこの自信にはついていってしまいそう。
カーラジオから越路吹雪や秋深む アゼリア
○(アネモネ)「秋深む」が効いてます。
◎(泉)ここで越路吹雪ですか。秋と良くマッチする、と思います。
◯(卯平)これが中島みゆきであれば季語は異なる。サントワマミーが聞こえてくる。秋のしみじみした空気を共感する。
○(餡子)越路吹雪は大人のイメージ。何を聴いているのでしょうか。「愛の讃歌」かしら。
〇(藤三彩)降り積む落葉よ枯葉よのシャンソンに季語が効いている。コーちゃんの「ろくでなし」はカラオケの定番でした。
○(ちせい)季語は「秋深し」。越路吹雪と言う安定感。仲秋が感じられます。
ひつじぐも神学校へ行くという 楊子
○(アネモネ)意志明確でいいですね。
○(泉)迷える「ひつじ」でしたか?何となく納得です。
◎(卯平)ひつじが一匹、ひつじが二匹と数えると眠りに付くとか(一度試したが益々目が冴えてきた)。ひつじと神学校とはこれは絶妙だ。これが教会ではつまらない。まさに神学校がここではひつじぐも(このひらがな表記が見事)との距離感を絶妙としている。秀句。
◎(珠子)例えば、孫が神学校に進学すると聞い日の空。または、ひつじ雲の一匹が「お〜い、今日は神学校あたりまで遊びにいこうぜ」と仲間を誘っているような空。余計な言葉のない軽さと清々しさ。
◎(藤三彩)いわし雲と言わず「ひつじぐも」から「迷える子羊」の連想に。若者は牧師にならず、少子高齢化は中高年からの転職者に教会は頼む。
◯(アゼリア)神学校への希望者が減っているとか。残念に思っていました。ミッションスクールだったので牧師さんに皆憧れていました。信者でなくとも道を説く人は魅力的でした。
◎(道人)豊かな発想と取合せの妙。
〇(宙虫)神学校、小説や映画などでいろんなドラマが生まれているなーと考えた。
今日は大型の台風が来ている様ですが、広島は案外と平穏です。関東地方が大変な様ですね。それにしても、毎週のように台風が来るので、ラグビーW杯は気の毒ですね。東京オリンピックの時も、さぞかし暑いことでしょう。