つづき
不条理も自然体なる秋桜 多実生
○(泉)「不条理」と思うのは、人間だけでしょう。
○(卯平)秋桜から不条理を導くのは常套的かも知れない。しかし、秋桜が醸す不条理は自然体であると言う詠み手の断定は解らないでもない。同時に「不条理」と「自然体」と言う同質の言葉の重みが平凡な句になってはいないだろうか。
暮の秋養殖棚の眠る海 まきえっと
〇(藤三彩)豊かな海の幸が眠っているのだな
〇(あき子)暮れの秋に「眠る海」の静けさがこころに残ります。
◎(楊子)養殖棚とは発想が新しい。真珠養殖か牡蠣の養殖か。
○(餡子)静かに静かに海の中で稚貝を育てている様子が、伝わって来ます。眠るが良いですね。
〇(めたもん)下五「眠る」がいいと思います。生命を蔵しゆったり静かに暮れる秋の海です。
〇(ちせい)貝や牡蛎、海の資源がうごめく。「眠る」資源。暮れの秋の寂しげな感じ。
◯ (アゼリア) 思いもつきませんでした。養殖頑張って頂いて魚介もう少し値下げして頂きたいです。
コスモスや宇宙と名付けし人しのぶ 瞳人
◎(泉)言われてみれば、誰が「宇宙」と命名したのでしょうか?
◎(あき子)季語のコスモスから斬新な発想。漢字文化の恩恵に浴しているのを実感します。
天性は三択以外天高し 楊子
立ち話コスモスうすく微笑みぬ あき子
○(幹夫)会話する二人の微笑み、コスモスの微笑み・・・素敵な光景だ。
〇(カンナ)コスモスが主語と思われますが、コスモスが微笑んだとは? 不思議な句。
〇(めたもん)「コスモスうすく微笑みぬ」が効(聞?)いています。立ち話の中身は知りたいような、知りたくないような。
コスモスの墓標岸辺の校舎跡 あちゃこ
○(幹夫)コスモスを墓標ととらえた感性がいい。
◯(道人)この墓標は廃校となった小学校か中学校に対する心の墓標だろう。コスモスには色んな思い出がありそうだ。
〇(春生)子どもの声であふれていた昔が偲ばれます。
〇(カンナ)誰の墓でしょう? 想像が広がります。
黄落や一朶の雲を追う遠目 珠子
◎(藤三彩)『坂の上の雲』司馬遼太郎氏の登場人物が一朶(いちだ)の雲を目指して坂をのぼり先へと歩み続けようと語る。ということか、
〇(まきえっと)「坂の上の雲」のドラマを思い出しました。
秋高し潮目を裂いて船の水脈 餡子
◎(幹夫)取り合わせに共感。大きな景が詠まれている。
〇(藤三彩)漁船は大漁を目指して出港する気分が読める
◎(アネモネ)写生の目が行き届いていると思いました。
○(あちゃこ)河口の写真を上手く詠みあげていると思います。
〇(珠子)正確には「潮目を裂くように」かもしれませんが、「潮目を裂く」に惹かれました。
〇(仙翁)空と海の様子がよく分かります。
〇 (多実生)海の潮目と船の航跡のあやを注視されました。
◎(まきえっと)「潮目を裂いて」がいいですね。
〇(ちせい)レジャー船なのか、観光船なのか。「裂いて」に勢いがあります。
◯ (アゼリア)確かに三枚の写真でこの水脈が、私には一番印象的でした。色々考えましたができませんでした。
出奔の漁船に載する秋思かな 卯平
◎(瞳人)どんな愁思かなあ
〇(藤三彩)出奔(しゅっぽん)する漁船?何か不安な様子。
倒れ伏しさらに泡立草曲がり ちせい
〇(仙翁)そんな泡立ち草がありそうですね。
鰯干す岬にひとつ漁師小屋 アゼリア
〇(珠子)旅先で幾度か見かけた景でもあります。船橋漁港の近くでは、大量のホンビノス貝(多分)を洗っているのが見られます。
〇(あき子)写真から、よくここまでの発想ができるものですね、新鮮です。
〇(春生)漁村の雰囲気が出ました。
◎(カンナ)映像が浮かびます。よくできた句だと思います。
◎(仙翁)昔からの営みの景色が見えます。
〇(宙虫)海のくらしが伝わる。
紅葉ツアー二十年後はありません カンナ
◯(道人)下十ニの措辞が中々。地球温暖化や少子高齢化の急速な進展に対する警鐘かと。
○(餡子)そうかも知れません。有って欲しいですが。こういう俳句の形があってもいいかなと・・・。
除草する人なく高齢泡立ち草 藤三彩
泡立草新幹線を覗き込む 春生
○(あちゃこ)視点を変えると確かに。ノッポの泡立草。
○(幹夫)背高泡立草の特性がよく詠まれている。「覗き込む」が佳い。
◎(道人)泡立草が通り過ぎる新幹線を覗き込むとは、俳諧味あり。自然の生命力と文明の利器の対比がとても良い。利便性のみ追求する文明に対する批判も内在している。
〇(めたもん)低いところを走る新幹線。大きな黄色い頭をもたげるように咲く泡立草。覗き込んでいるようにも見えますね。
〇(まきえっと)「覗き込む」がぴったりの伸び方です。
行く秋の青にとけゆく空と海 道人
◎(珠子)碧と蒼が青に溶けてゆくのでしょう。もうしばらく留まっていてほしい秋。
○(卯平)類似感はあるが素直に観賞出来る。「逝く秋や青にとけゆく宙と海」では詠み手はどう観賞するだろうか。
行き掛けに手を触れてみむ秋桜 幹夫
〇(瞳人)ここにこそ潜む愁思かな、で
〇 (多実生) 何気なく触れてみたくなります。
今月の写真・・・福岡県大牟田市の諏訪公園及びその周辺の光景
では、まきえっとさんからの次回告知をお待ちください。
広島はまだまだ暑い日々が続いています。本当に今年の暑さは異常です。秋を飛ばして冬になりそうです。秋の澄み切った青空と、コスモスは美しいですね。今回も美しい写真をありがとうございます。