本当に、本当にありがとう、ジョン!

2013-07-25 20:52:18 | ギター

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今朝の新聞を何気なく読んでいると、秋のコンサート広告の欄に「ジョン・ウイリアムス引退表明 最後の日本公演」の太いゴッシック体の文字がジョンの写真の上に有るのを発見した。
実際、内心驚いてはいた。でも、なぜか「じぇじぇじぇ!」とはならなかった。
いつもこういう時に発してしまう独り言の「えっ!」は出なかった。
「そ~か~。そ~だよなぁ~」としみじみとしばらくその広告を眺めていた。確か1941年生まれの僕のアイドルは、いつの間にか70歳を過ぎていた。

小学5年の終わりにギターを始めて中学生になった僕がCBSソニー・ファミリークラブのレコードBOXに釘付けになったのも、新聞広告だった。本来、大人でも少し思い切らないと買えない値段だった贅沢なものを、よく母は買ってくれたものだと思う。
豪華なボックス入りの11枚のレコードの内容はほとんどがジョンによる演奏のクラシックギターの主要なレパートリー。聞いた事の無いギタリストのアルバムもなぜか2、3枚含まれているのがその当時はすごく残念だったけど、とにかくこれらのレコードを聴いた、聴いた...。俗にいう「擦り切れる」ほど。実際は幸い擦り切れずに今も手元に大切にしてあるけど。その頃はこのボックスセットが僕の「全世界」だったと言っても良いくらい。その頃僕には他に大した思い出もないくらいだ。

大人になってからもしばらくはジョンの実演には出会う機会が無かった。彼も一時、クラシックと少し距離を置いて、「スカイ」とかいうバンドを結成して活動していたりしたから...。それはそれで別に悪くはないんだけれど...。
その活動が一段落して(気が済んで)クラシックギタリストとして本当に久々に来日した時の事は忘れられない思い出だ。
今まで、レコードの中でしか出会え無かったジョンが、「動いた!」「弾いた!」そしてなんと、「しゃべった!!」僕は興奮のあまり少し、泣いた。異性のアイドルに夢中になる人の気持ちが理解できる様になったのはその時からだ。演奏もレコードで聴くよりずっと良かった。日本でも既に彼の後に続く事になる若手のギタリスト達が活躍していたが、やっぱりジョンは別格。「<ギターのプリンス>はもはやキング」と言われたのもこの頃だったと思う。

しばらく考えた。聴きに行こうか、行くまいか...。大方行く方に傾いていたけど、すぐには決断できなかったのは正直「もし、ジョンが思った以上に衰えていて、過去の様な演奏とはかけ離れていたらどうしよう」という思いが有ったからだ。
非常に高いレベルのプロ意識を持っているジョンの事だからそんな事は絶対無いと思うけど、万が一そうだったらきっと少し悲しいし寂しい...。
それでも良いや、行こう。お別れと、感謝の気持ちを込めた拍手をしに...。
平日なので、仕事中の妻にメールで確認をとった後電話で堂々とS席を予約した。
手に入ったのは既に後ろの方で決して良い席ではないが、生まれて初めてお目にかかれた日もかなり遠くからだったのでかえって良かったかな。僕なんかには雲の上の人。遠い存在の憧れの人なんだから...。

想像だけど、きっと最後のアンコールを聴き終えた後、満員のすみだトリフォニーがオール・スタンディング・オベーションになる...いや、なってほしい。一人じゃ恥ずかしくてとても出来ないけど、両隣と後ろの人が立ったら自分だけ座って涙ぐんでいるいるのはかえって不自然な訳だから、それじゃ僕も...となるだろう。
そしたらここぞとばかり拍手しよう。痛くなるほど手を叩こう。万感の思いを込めて...。

写真はさいたまスタジオのレッスン室のデスクトップ。最近は新旧機材を活用してパソコンの音源を聴く事も増えた。