YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

大陸横断に成功~オーストラリア大陸横断ヒッチの旅

2022-03-27 10:27:17 | 「YOSHIの果てしない旅」 第11章 オーストラリアの旅
・昭和44年4月3日(木)曇り(大陸横断に成功)
 今朝、狭い車の中で寝た所為か、腰が痛かった。今日中にシドニーへ着けるのか否か、それが問題であった。と言うのも車の中で寝るのは、いささか嫌になって来たからのだ。
 この辺り(バーク)まで来ると2時間に1台、或は1時間に1台の割でしか走っていない、と言う事はなかった。お蔭さまで順次6台の車に時間を費やさず乗せてもらった。中でも記憶に残ったのは、Girilambone(ジリランボーン)~Nyngan(ナインガン)間を乗った車であった。このドライバーの名は、Mr. Steve Payton(ペイトンさん)と言って朝鮮戦争に従軍し、日本にも行った事のある人だった。叉、彼は日本語をほんの少し話せた。そんな彼からお昼を御馳走になってしまった。貧乏人根性だから奢ってくれる人は大歓迎で大好きであった。だから記憶にも残った。
 そしてDubbo(ダッボ)には、午後2時頃、着いてしまった。乗せてくれたドライバーはガソリン・スタンドで私を降ろし、その彼は「ステーションにいればシドニーへ行く車が来るから。」と言って去っていった。オーストラリアでは、列車が停車する所だけが駅ではないのだ。ガソリン・スタンドの事を「ステーション」、或は「サービス・ステーション」、若しくは「ペトロ・ステーション」とも言っていた。
 ガソリン・スタンドで待っていられないので歩き出した、その時であった。私のリックに日の丸で覆っていた旗を見たのか、乗用車が私の脇に停車し、「貴方は日本人でしょう。シドニーへ行くのですか。」と言って、向こうから話し掛けてきた。
「ハイ、そうです。シドニーへ行くのですが、お願いします。」と言ってその車に乗せて貰った。車は豪華感漂う高級車で、乗り心地も今までで最高であった。そんな車を運転する奥様の名前はMrs. D.Cok(カックさん)、顔立ち、育ちの良い上品な方でした。私は、奥様の旦那さんは上流階級、若しくは政府高官の方と思った。奥様は私や自分の子供にも丁寧な、そして心を通わせる言葉で話された。その1例の言葉として、普通は自分の子供や目下・同僚には「Pardon」であるが、奥様は「I beg your pardon」と言って、丁寧な言い方をした。そんな奥様であるから、綺麗な洋服を着た同乗の3人のお嬢さん(高校生と中学生2人)も可愛いし、また育ちの良さも感じた。ご主人は別の車に男のお子様3人を乗せて、7人家族で一緒にドライブ旅行しているとの事で、何とも羨ましい話であった。奥様は私に対してとても気を使ってくれて、又リンゴや途中の店に寄ってフィッシュ・アンド・チップス等を御馳走してくれた。乗り心地の良い豪華な車での楽しいドライブは、ダッボからシドニーまで長い距離(420km程)を感じなかった。
 途中、この車がOrange(オレンジ)と言う町を過ぎて、山岳地帯(大分水嶺山脈にブルー・マウンテンズ国立公園がある)に入ったら、下り方面へ行く車で道路は渋滞になって来た。あれ程空いていた道路が如何して急に混雑して来たのか、不思議で仕方がなかった。だからその理由を奥様に聞いた。
「明日から4日間、〝イースターで休み〟(3月~4月、春分後最初の満月後の日曜日がイースター。その前の金曜日がグッド・フライデー、月曜日がイースター・マンデーで、この4日間はイースター休日)に入るので、シドニー市民は国立公園で過ごすの。」と奥様。
「こんなに車が郊外に来てしまっては、シドニーの都会から車がなくなってしまうね。」と私。
「地方の人が車でシドニーに遊びに来るので、そうでもないのです。」と奥様。
それにしても、何とした事であろうか。休日の為4日間休みと言う事で、私は何にも用が足せないのであった。何の為に急ぎ旅をして来たのか。2度と経験出来ないので、誘われた時にカンガルー狩りに行けば良かった。或はスコットさん宅で、もう少しゆとりを持って出立すべきであった等々、後悔した。 
 いずれにしましても、「奥さん」と気軽に言えない程、品位・品格ある御婦人にシドニーの郊外まで乗せて頂いた。郊外から電車に乗ってシドニーの中心に遣って来た。乗った電車は奇麗ではなく、車内も薄暗かった。信じられないが、電車のドアを開けっ放しで走っていた。車外へ転げ落ちる危険があるのに、構わないのか。日本では見受けられないが、女性の駅員もいた。ともかく私は無事にシドニーに着いた。シドニーで一番古い、そして賑やかな通りGeorge Street(ジョージ・ストリート)の東隣のPitt-St(ピット・ストリート)にある、YMCA(宿泊料金一泊2ドル25セント)に夕方、辿り着いた。
 今日のヒッチ距離は482マイル(771km)で、今まで一番長いヒッチ距離となった。ダーウィン~シドニー間2,554マイル(4,086km)を8日間で横断したのでした。10日以上はかかると思ったが、予定より2日以上早かった。それにしてもヒッチで野宿しながら、何にもない広大な砂漠・土漠地帯の大陸を横断し、無事にシドニーに到着した事が何より良かった。この様に私のヒッチ・ハイクを助けてくれたのは、オーストラリア人気質のお陰かもしれません。私を乗せてくれたドライバーの皆さん、本当に有難うございました。


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