明澄五術・南華密教ブログ (めいちょうごじゅつ・なんげみっきょうぶろぐ)

明澄五術・南華密教を根幹に据え、禅や道教など中国思想全般について、日本員林学会《東海金》掛川掌瑛が語ります。

密教秘伝 般若心経《空と疎外》 色即是空とは色と空は等しいという唯識論の考え方

2023年07月30日 | 仏教

以前の記事ですが、スマホで読み易く編集しました。

 

2021-07-19

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                                     序言

『西遊記』でおなじみの、玄奘三蔵法師は、7世紀、唐からインドに取経して、多くの経典を漢語訳し、なかでも、『般若心経』は、大乗仏典の精華と言うくらい名訳とされています。しかし、よく理解されているか、と言えば、実はあまりよく理解されていません。

なかでも、「色即是空、空即是色」という『般若心経』のなかの最も重要な文章は、最も有名であるにも関わらず、理解される、というには程遠いのが現状です。

 なかには、「色即是空」は正しいが「空即是色」は間違い、などと、頓珍漢なことを言い出す人たちも現れましたが、『般若心経』を信奉してきたはずの、日本の仏教者たちは、満足な批判を加えることさえできません。

十八世紀、ドイツの哲学者ヘーゲルは「理性的なものは現実的なものであり。現実的なものは理性的である」と述べました。この発言は当時から、批判されるばかりで、今でもあまり理解されていません。

ヘーゲルの言う「理性」は、仏教では「分別」と言いますが、ヘーゲルの言うような理想的なものとは捉えておらず、「分別」こそが「苦」の原因であるとします。

 「色即是空、空即是色」をヘーゲル風に言い換えると、「現実と見えるものは分別されたものであり、分別されたものは現実と見えるものである」ということになります。つまり、自分が「分別」して「現実」と見えるものを、そのまま「現実」と思い込むから、「苦」が生ずるのです。

 2世紀、インドの仏教者、竜樹は、「一切は空である」と、述べましたが、本人も論じているように、「すべてが空」では、矛盾が生ずることがあります。 

 その点、「唯識」仏教(法相宗)の大家である玄奘三蔵訳『般若心経』では、「一切が空」とは言わず、「五蘊皆空」と述べており、竜樹のような矛盾が生じません。

 「唯識」レベルで書かれた経典である玄奘訳『般若心経』を「空」論のレベルで理解しようとすることには無理があり、最低でも「唯識」レベル、できれば「密教」のレベルで、つまりは「唯識」論を踏まえた上で、あらゆる知識を総動員して「緊密」に読み解くことが必要です。

「密教」の「密」とは、「緊密」のことであり、「秘密」という意味ではありません。

 『般若心経』の「空」は、ヘーゲルの「疎外」と似ていますが、むしろ、マルクスの「疎外」と等しいものであることを、本書をお読みいただければ、お解りいただけるかと思います。

 

  2021年 辛丑               掛川東海金

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「色即是空」は正しいが、「空即是色」は間違い・・・?

 

『般若心経』について、2007年ごろから、上のような不可解な主張が登場し、その後もこれに追随する主張が一部で行われており、反論はほとんどみかけません。

言い出した人は、スリランカ初期仏教の長老であり、日本でスリランカ仏教を布教されているアルボムッレ・スマナサーラという僧侶で、2007年に『般若心経は間違い?』(宝島社新書)という本を出されました。

スマナサーラ氏は、これ以前にも『仏弟子の世間話』(玄侑宗久・アルボムッレ・スマナサーラ・サンガ新書)という本のなかで「色即是空」は正しいが「空即是色は間違い」と述べておられます。

日本では、岩波文庫の中村元さんの訳も含めて、「色」は「物質的現象」、「空」は「実体がない」と解釈されていますから、なるほど「物質的現象」と「実体がない(もの)」では完全にイコールとは言えません。

ところが、漢文で「○○即××」というのは「○○は××に含まれる」、という意味ではなく、むしろ「○○と××は同じものである」という意味ですから、「色」と「空」が完全にイコールではない、ということになれば、「空即是色」が成り立たないのは勿論ですが、「色即是空」もまた成り立たないということになります。

 スマナサーラ氏は、「リンゴは果物である」は正しいが、「果物はリンゴである」とは言えないので、「色即是空」は正しいが、「空即是色」は間違っていると主張しています。

「リンゴは果物である」というのは、日本語としては問題のない表現ですが、それは日本語の持つ曖昧性に依存するもので、正しく英語にしてみると、必ずしもそうとは言えません。


 Apple is a fruit.
 リンゴは(ある一種類の)果物である。
 
 日本語で「リンゴは果物である」というのは、「リンゴ=果物」なのか「リンゴはある一種類の果物」なのか曖昧なのですが、何となく常識的に、「ある一種類の」というところを省略しても意味が通じてしまいます。
 ところが、「色即是空」というのは「色=空」という意味であり、「色=空」なら当然に「空=色」でなければなりません。 

 つまり、

「フルーツは果物である」というのが「色即是空」であり、

「果物はフルーツである」というのが「空即是色」にあたります。 

 

「色即是空、空即是色」という文言は、

 

「色」という概念は「空」という概念と同義である

 

という意味に捉えないと、『般若心経』(唐玄奘訳)を正しく理解することができません。

 

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 「照見五蘊皆空」は、「人間であること(自己と他者を分別すること)の五つの構成要素(苦の原因)は、すべて空であることを、明らかにして見せてくださり」であり、

 観自在菩薩が新たに見た、というのではなく、衆生に対して明らかにした、という意味です。
 

 「度一切苦厄」は、「一切の苦しみや災難から人々を救うこととなりました」となります。
 この、二句を合わせた意味は、

「肉体と心によって自己と他者とを分別することが苦の原因であり、自在な心で、物事に囚われない認識を持つことができれば、あらゆる苦の原因から解放される」ということになります。

 「人間であること」とは、「自己」と「他者」を「分別」できる「認識」を持つことができる、つまり「自己」という「意識」を持っていることが「人間であること」です。
 「自己」という「意識」を持つことで「類」という概念や「他者」という概念を持つことができるようになり、逆に「他者」という概念によって「自己」という「意識」が生まれます。

 それまで、自分の「肉体」は、自然の一部であり、自然が自身の一部だったのですが、「自己」という「意識」の獲得とともに、自然は、自分の身体ではなく、巨大な「他者」に変化します。
 また同時に、自分以外の人間たちも、「他者」であり、かつ「同類」と「認識」するようになります。
 このように、人間が「自己」を獲得することを「疎外」または「自己疎外」と言います。


 人間が、自然から「疎外」され、「自己」を「疎外」し「他者」から「疎外」され、

ここから、すべての「苦しみ」が生まれます。
 「疎外」とはすなわち「苦」のことであり、「疎外」の原因は、人間に特有の、「自己」と「他者」という「認識」もしくは「意識」によるものです。
 つまり、「自己」と「他者」を「分別」するものは、「意識」であり、「意識」と「肉体」の集合体である「五蘊」こそは、「苦」の原因ということができます。
 そして、「五蘊」が「空」であるということは、人間が「現象」として「認識」できるものは、すべて「肉体」と「意識」によって生じる「関係」という「認識」であり、人間の「苦」とは、すべて「関係」でしかありません。 
  
 つまり「苦」とは「空」であり、「関係」でしかないと知ることによって、本質的な「苦」の原因を取り除くことができます。

 

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代表掛川掌瑛(東海金)       

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