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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「なまえのないねこ」                           竹下文子:文 町田尚子:絵 小峰書店

仔猫と名前と、聖書

何とも印象的な瞳の仔猫。この子には「名前がまだない」わけですね…。
ものすごくシンプルなストーリーを、力のある絵が、ぐいぐいと引っ張っていく絵本です。

これ以上の説明をすると、ネタバレになってしまう!!
以下、またしても、苦肉の策の「作文」です。

子どもの頃、弟が、捨て猫を拾ってきました。
一生懸命、兄弟げんかもしながら、みんなで名前を考えました。
「ぴっち」という名前をつけました。
小さいけれど、とても元気の良い仔猫だったのです。

その子にぴったりの名前を考える、というのは、情を移す・情の移る行為でした。
そして、つけた名前で呼び、相手がそれに振り向いてくれた時の嬉しさ!
それは私の、その仔猫に対する「所有・支配」が完成した瞬間でした。

聖書の中にも、神様が人間に、
わざわざ新しい名前をつけてくれる場面が出てきます。
完全に神様の「所有・支配」とされた、その証拠として、新しい名前が与えられるのです。
アブラムはアブラハム、サライはサラ、
ヤコブはイスラエル、サウロはパウロに、なりました。

「わたしはあなたの名を呼んだ。
あなたは、わたしのもの」 (旧約聖書・イザヤ書43章1節)
これは、神様がイスラエルの民に向かって言われた言葉です。

そんな聖書の言葉を頭の片隅において、
聖書の「せ」の字も出てこない、この絵本を味わって頂けたら幸いです。

いや、探せば、「せ」の字はある…(笑)。




















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