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絵本の楽屋   by 夏野いばら

「ゼラルダと人喰い鬼」 トミー・ウンゲラー:作 田村隆一・麻生久美:訳 評論社

少女が、人喰い鬼をものにするまで ~テロリストを愛する方法!?~

腹をすかせた人喰い鬼が、今まさに子どもを食べようとしている場面から、この物語は始まる。絵本にR指定があるとしたら、のっけから、ギリギリの線、あるいは越えちゃってるかも…。

しかし、原題は「ゼラルダ鬼 」("Zeralda's Ogre")。作者は、タイトルですでに、鬼がやがてはゼラルダのものになることを、明示している。

でも、どうすれば、少女は人喰い鬼に喰われずにすむのか? さらには、人喰い鬼をものにすることができるのか?

究極のテロリストに、無垢な少女が勝てたとしたら、それは奇跡である。しかし、奇跡が奇跡として成立するために、そこには、小さな偶然と、いくつもの必然の連なりがある。この物語には、それらが、きちんと描かれている。

ハラハラ、ドキドキのストーリーを読み終えたあとで、もう一度、最初から、たどり直してみてください。 結局のところ、ゼラルダは人喰い鬼に対して何をしたのか? なぜ、それができたのか? 

作者は、聖書の中で最も有名な愛のたとえ話、「善きサマリヤ人のたとえ」を、どれくらい意識していたのかなぁ…?? ヨーロッパ生まれのウンゲラーさんが、知らなかったはずはないこの物語を、聖書の中にご確認ください。五分で読めます。

合わせて読みたい聖書 新約聖書 ルカによる福音書10章25節~37節

とにかく…どちらも、絶品! おいしい物語です。

 

 

 

 

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