ミケ猫の菌星探査機(きのこ日誌)

全力で飛んでく・きのこブログ

アミガサタケ・オフ 傘の色の違いを考える2

2021-04-23 21:59:51 | 日記

 

(続き)

 

さて、と。

この前の記事で大事なところに触れるだけ触れて、逃げました(To be continue …

あの子実層の薄片を透過光で見て、色がついている黒いモノが何なのかを考えてみましょう

です、です。

 

子嚢が並んでいる部分の色の黒い部分を拡大したものです

色のついた菌糸には隔壁が見られますね

 

軽くカバーガラスの上から押して、菌糸どうしをバラバラにしました

 

傘の色の濃いアミガサタケの子実層を見ると

ほとんどこの色のついた隔壁のある菌糸が並んでいたことがわかりました

 

これ…子嚢じゃないんじゃないかな?

最近、文献のこと他、色々なことを教えてもらってお世話になっている方がMycosienceに書かれた

Sarea resinae 否 Tromera resinae の論文を読ませてもらったときに見た

(Hashimoto et al. (2021) Revision of Xylonaceae (Xylonales, Xylonomycetes) to include Sarea and Tromera.)

Tromeraの断面の写真や図が頭に焼き付いてて、それを思い出したんです

 

あの論文では未熟な個体の子実層の中にはparaphysoid(側糸様体)が詰まってた

そして胞子ができる子嚢は、成熟と共にぎゅうぎゅうに並んだparaphysoidの合間に割り込むように

下から伸びて膨らんでくる様子が描かれていた

あの図けっこう自分なりにはショックだったんです、いやすごく面白かった

どうしても学名が変わる、となると名前や系統関係ばっかり目が行きがちになるけど、

あれこそ生き物としての姿だと思ったんです

 

今回、アミガサタケの子実層の中の黒い菌糸が成熟とともにどうなるのか…

そう、だんだん消失していったんです

 

 

子嚢に隔壁なんてありません

だから未熟な子実層は子嚢ではない、黒い菌糸で埋め尽くされていたってことなんです

ただこれがparaphysoidかどうかは、わたしが調べたくらいじゃ情報が出てきませんでした

 

胞子ができている=子嚢なんですけど、子実層がその子嚢で埋め尽くされる頃には

もともと未熟な子実層を埋め尽くしていた黒い菌糸はだんだんなくなっていってた

要は、これがアミガサタケの傘が成熟すると色が薄くなっていく原因だった

つまり未熟な子実層に黒い菌糸があるアミガサタケのグループは

傘の色の違いで種を分けるのは危険だということになると思います

 

あえて未熟な子実層に黒い菌糸があるグループ、と書きました

そう、未熟でも子実層に黒い菌糸がないやつがいるんです

これはたぶん、別種と言い切っていいんじゃないかな

傘の網の様子も、もともとは色の濃かったやつが成熟して色が薄くなったやつとそっくりで

検鏡しないで区別するのであれば、個体集団として成熟過程を追う必要があります

 

↓↓↓ こいつ、検鏡したら未熟でした。。。

 

 

 

いろいろ観察してわかって楽しかったヽ(´▽`)/

それもこれも同じ日に本当に遠方まで、あちらこちらに案内していただいて

いろいろな場所で採集したアミガサタケを横に並べて観察できたことに端を発しています

心から感謝しています

もちろん、ふだんから不勉強で技術力不足の自分に発破をかけてくださっている方にも感謝しています

 

 

これがすこしでもこれからの菌類観察の役に立ててもらえたら幸いです

ではアミガサタケ・オフの報告、これまでなり。

 

 

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アミガサタケ・オフ 傘の色の違いを考える1

2021-04-22 13:31:13 | 日記

 

さて、と。

ここではアミガサタケ、とひとまとめで書いていますが

今回はアミガサタケという1種のキノコのことを指しているわけではなく

「スミレ」のようにスミレといってもタチツボスミレやアケボノスミレなどを

ひっくるめてスミレと呼んでいる、~の仲間という意味で使っています

ちなみにひっくるめて使っている言葉、例えば「シメジ」はシメジという和名のキノコは存在しませんが

「スミレ」「アミガサタケ」という和名の植物やキノコは存在します

 

↓ これが和名「スミレ」というスミレ

 

今回、当方はトガリアミガサタケと呼ばれている黒いアミガサタケばかり生えるので

色の薄いアミガサタケの生育地を実際に目にするために案内していただきました

(ご報告までに時間が経ってしまいました、すみません)

しかし、隣県のアミガサタケも色がこちらより薄いとは言え

案内していただいた場所によって、けっこう色の濃さに違いがありました

種間における差なのか、地域差なのか、はたまた成長の段階で変わっていくのか

大まかな外形は個体群によってそこまで差があるように感じなかったのですが

色は個体群によって気になるほどの差があったのは確かです

 

色の濃い方はこんなんやら…

 

色の薄い方はこんなんやら・・・

 

 

そこでさらに菌糸の形態や状態などの微細構造を、顕微鏡で検鏡して

色の違いが微細構造上の何に由来しているのかを確認してみることにしました

 

アミガサタケの傘の部分の断面です

表面に近い方に柵状に並んだ構造が見えると思います

まずより色の濃かった方の断面を見てみましょう ↓

 

 

 

↑ 下の方の写真を見ると、透明の棒が見えます

これが子嚢っていう中で胞子ができる袋です

断面の全体が黒いわけではないですね、子嚢が並んでいる層の一部が黒くなっています

で別の色のアミガサタケを見てみると、

 

 

↑ こっちのほうが色が薄いですね

色の濃い方と薄い方、どっちが成熟していると思います?

色の薄い方を見ると袋の中に小さな粒つぶが見えるのですが、色の濃い方はほぼ粒つぶがないです

これはどういうことかというと、

色の薄い方がより成熟が進んでいて、胞子が出来始めているんです

ということは、未熟なときには子実層に黒いモノがあって

成熟してくるとその黒いモノが無くなっていくんだってことだとわかってきました

 

ではその「黒いモノ」ってなんだろう?ってことですよね

このままではよくわからないので、次はカバーグラスをかけて液体でマウントしてから

下から光を当てて透過光で見てみましょう

もちろん今までの写真は上から光を当てて観察したものです

 

(2に続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

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アミガサタケ・オフ 続き2 本題ちょっと前

2021-04-17 17:06:17 | 日記

すみません、順番がおかしいのはわかっています

この次に来る記事を理解してもらうためにぜひ読んでいてもらいたい情報を書きました

アミガサタケをもうちょっと深く知ってもらうための、超基礎知識のきのこ学ですわ

 

 

さて、と。

本題ちょっと前でございます、ここからもっとわけワカメになっていきます

きれいな写真や人気きのこネタ投稿はツイッターの方で色々な方が上げているので

そっちをおすすめします

 

 

どこから話せばいいんだ?

ほらキノコって植物でしょ←ここ突っ込むところですよ

だから愛を結んだキノコが胞子を作って種のように増えていくんですよね、素敵!

とガチで目をキラキラさせた女子会風奥様に同意を求められて

JKに迫られたおっさんのようにうろたえたことがあります(おっさんは妄想

 

 

遺伝子の拡散方法の一つに、物理的に移動し、定着と拡散を繰り返す方法があります

で、拡散するために遺伝物質を含んだ菌糸を風に乗るサイズに縮めたり

虫の内臓に収まるサイズに縮めたもの、つまりそれがキノコの胞子ってことになります

胞子のでき方・中身は様々なんす、目的だけ知っておいてもらえればと思います(知ってるか

 

 

赤の他人同士の遺伝子を2個以上菌糸の中にもつことができるきのこをつくるタイプの菌類は

自分の中で必要な時に核融合して減数分裂して、きのこという傘や茶碗などを使って胞子を撒きます

そのときに胞子を菌糸の枝の先につけるやつと、袋の中で胞子をつくるやつと

大きくその2大勢力がきのこ界を席巻しております(あえてきのこ界と言っています、分類用語ではない

 

 

袋タイプ(棒状のものが子嚢) アミガサタケ属

 

先に胞子を付けるもの(角がついているのが担子器) ベニタケ属

 

 

で、アミガサタケは2大勢力の「袋」の方なんです

縦長の袋の中に胞子が8個入っています

きのこは胞子ができる場所なので、図鑑にはとくに顕微鏡で成熟した子嚢・胞子が図鑑に載っています

でもきのこは菌類という生き物なので、

顕微鏡でほかの色々な場所の菌糸などを見るともっと生きている姿を確認できます

またきのこも赤ちゃんからお年寄りまで生き物としての姿はたくさんある、

図鑑を見て同定するという作業だけが顕微鏡の役割ではないんです

 

 

そう思って顕微鏡を持っていらっしゃるかたは、ぜひ色々見てください

 

 

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アミガサタケ・オフ 続き1 前置き

2021-04-16 10:54:25 | 日記

 

 

 

菌類学、とくに分類ついての研究は

植物分類学で言うところのAPGシリーズが出てくる前の段階にあって

下位・上位の階級に関わらず、激しく混乱していることが明らかになってきた段階にある

クロンキスト以前のエングラーから直接APGに乗り込んでいる感じ

ただAPG-Ⅰの段階ですらない

その中でも高位の分類階級については子実体の形態形質の分類への用いられ方を見ていると

明らかに大昔に植物学の端っこに菌類学が置かれていたことに由来する弊害が

足をひっぱった跡が所々に見受けられる

未だに亡霊の様に古い研究家さんの間などにそういう空気が残っているが

菌類学でも研究に携わる方の年齢も科学思想も世代交代が確実に進んでいる

昔の偉い研究者を称えるのはその努力であって盲目に中身を称えるものではない

いま菌類学の研究は足場を失ったのではない、自由を手に入れたのだ

たぶんつかの間の自由だ、精一杯菌類学に携わる方々が大暴れするところを見てみたい

 

ややこしいことを書きました

さて、と。

 

 

アミガサタケなんですけどね。。。やっぱり混乱しているんです

菌類全般の分類学に言える混乱状況を前置きとして説明したくて上のことを書いたんです

で、キノコの名前でとくに和名については

初めて記載された時や新産種として国内で発見された時に

学名や標本に紐付けされてるのは容易に想像がつくかと思うのですが

上で説明したように大混乱時代の菌類分類学なので

和名に紐づけされた学名のキノコは日本では産出されないことがわかったり

学名のついたキノコが実はコンプレックス(複数種混ざってる)だったことがわかったけれど

登録されたタイプ標本がばらばらにした種のどれなのか後から確認しても不明な場合もあるのですが

(タイプの状態が悪い・そもそもタイプがどっかいっちゃった)

和名はどこに紐づけされているのか(学名?タイプ標本?)は決まっておらず

その時々の自由なので、和名が何を指しているのか混乱しまくっています

 

アミガサタケも分子解析の結果、図鑑に載っている種の数以上に

かなり多くの区別できる種がありそうだということがわかってきています

ここではこの前採集したアミガサタケや、自宅で標本にしていたアミガサタケを細かく観察して

肉眼で確認できる外見の違いが何から由来するのか

さらに微細構造を確認して追求してみようと思います

 

(続く)

 

 

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2021 アミガサタケ・オフ

2021-04-15 09:46:16 | 日記

ほんとうにツイッターというのは書きにくい

いいねがあまりないのにアナリティクスをみるとひえっと思うほど見られてて

数千人というたくさんの人を前にしているという自覚が生まれてガチガチに固まってしまう

このまえ、すごい方々にキノコを見るために某所を案内していただいたんですけど

すごく面白かったんですね、で、ツイッターでそれを表現しようとしたんですけど

みなさんの、案内してくださった方への関心が高すぎてあそこで書けんのですわい

ここならゆるりと書ける(見てる人少ないからね)

長文は駄文と某皇室婚約者の方が叩かれていましたが、わたしも駄文書きなので許してください

 

 

案内していただいたのは、最近更新がない神顕微鏡使いのんびりおけら日記のGajinさんと

神絵師特殊自然マスターの爆裂暴走列車oso的キノコ写真図鑑のosoさん

osoさんのサイト、サイト名が何なのかはっきりとよくわかんないんす

ただサイトのタブに「遅スギル」とでてくるので、のんびりした方なのかと思っていたら

わたしがもたもたしていると「あーっ、遅すぎる!!」とosoさんから怒られる

あ、そっちの遅スギルなんだ、ただひとつだけこそっと言わせてください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

osoさん、サイトTOPにサイト名つけてください

 

あーすっきりした。さて、と。

ここら辺(といっても山4つ分くらいの広範囲の話でっせ)はアミガサタケが元々すごく少なくて

形態にもほとんど幅がない、最初は多少丸みを帯びるものの成熟すると先の方から尖ってくる、

トガリアミガサタケというグループに入れても問題ない形状のものばかりだ

 

地元のアミガサタケの仲間↓

 

なのでイエローとグルーピングされているアミガサタケの仲間にすごくあこがれがあった

アミガサタケとは黒いものだという自分の脳みそへの刷り込みを解消したい

で見せてもらいましたがな、これ

 

 

かわいいいいいぃいいいいいい!!!

昔アミガサタケが気持ち悪くて触れなかった自分が懐かしい、いやでも黒は未だに苦手

それもこれも、地元のやつが真っ黒でぐわっとでかくてゴミ捨て場やトイレの近くによく出るからだ

今回もラストちかくで見せてもらったトガリは不法投棄されたゴミが散乱した場所にあった

 

 

写真を撮るときにいっしょに写ってるゴミに場所が特定できるものはないかなど

osoさんからチェック、否アドバイスを受ける

osoさんもあいつどんくさいし、ポカせんやろうかとハラハラしてはるんやろうな

しょうもない自己顕示欲の結果、生育地をダメにしてしまう結果に繋がることだけは避けなきゃ

 

でも、ね、迫力があるでしょトガリアミガサタケ

汚い環境のところのものほど手のひら超えの大きなサイズがゴロゴロあって、

高級感あふれるモリーユ(西洋の呼び名らしい)というイメージは全くない

でもまがいない剛健さがある、私にとってアミガサタケは男性的なそういうイメージだ

 

イエロー、少し赤みを帯びるんだね

 

アミガサタケは菌根菌か腐生菌か、という議論がある

菌根菌とは何か、腐生菌とは何か。桜の木の下に子実体が生えたら菌根菌だとだれが決めたのだろう?

元々菌根と菌根菌の菌糸の接点が見つかって、初めて菌根菌といえるのだ

腐生菌とは何か?菌糸が分解した木材などを炭素源にして菌糸を広げ子実体を作る菌だ

その事実をもって初めて科学としての証明になる

ただ自然環境下でなにが起こっているのかを見出すのは難しい

なので in vitro のもとで条件を極限まで絞って菌の能力を見極めるのだけれど

自然の中に存在する条件は正直億とあるといってもいい、複数の条件の掛け算が起こるからだ

 

 

でも桜の木の下にこの子が出てきたら、事実はこの下に眠ってる

法律や環境に問題なければここ掘れわんわん、なんせ菌根ならば肉眼で確認できるのだから

 

(続く)

 

 

 

 

最近続くと書いて続かせないことが多い。。。反省じゃ

 

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