(続き)
さて、と。
この前の記事で大事なところに触れるだけ触れて、逃げました(To be continue …
あの子実層の薄片を透過光で見て、色がついている黒いモノが何なのかを考えてみましょう
です、です。
子嚢が並んでいる部分の色の黒い部分を拡大したものです
色のついた菌糸には隔壁が見られますね
軽くカバーガラスの上から押して、菌糸どうしをバラバラにしました
傘の色の濃いアミガサタケの子実層を見ると
ほとんどこの色のついた隔壁のある菌糸が並んでいたことがわかりました
これ…子嚢じゃないんじゃないかな?
最近、文献のこと他、色々なことを教えてもらってお世話になっている方がMycosienceに書かれた
Sarea resinae 否 Tromera resinae の論文を読ませてもらったときに見た
(Hashimoto et al. (2021) Revision of Xylonaceae (Xylonales, Xylonomycetes) to include Sarea and Tromera.)
Tromeraの断面の写真や図が頭に焼き付いてて、それを思い出したんです
あの論文では未熟な個体の子実層の中にはparaphysoid(側糸様体)が詰まってた
そして胞子ができる子嚢は、成熟と共にぎゅうぎゅうに並んだparaphysoidの合間に割り込むように
下から伸びて膨らんでくる様子が描かれていた
あの図けっこう自分なりにはショックだったんです、いやすごく面白かった
どうしても学名が変わる、となると名前や系統関係ばっかり目が行きがちになるけど、
あれこそ生き物としての姿だと思ったんです
今回、アミガサタケの子実層の中の黒い菌糸が成熟とともにどうなるのか…
そう、だんだん消失していったんです
子嚢に隔壁なんてありません
だから未熟な子実層は子嚢ではない、黒い菌糸で埋め尽くされていたってことなんです
ただこれがparaphysoidかどうかは、わたしが調べたくらいじゃ情報が出てきませんでした
胞子ができている=子嚢なんですけど、子実層がその子嚢で埋め尽くされる頃には
もともと未熟な子実層を埋め尽くしていた黒い菌糸はだんだんなくなっていってた
要は、これがアミガサタケの傘が成熟すると色が薄くなっていく原因だった
つまり未熟な子実層に黒い菌糸があるアミガサタケのグループは
傘の色の違いで種を分けるのは危険だということになると思います
あえて未熟な子実層に黒い菌糸があるグループ、と書きました
そう、未熟でも子実層に黒い菌糸がないやつがいるんです
これはたぶん、別種と言い切っていいんじゃないかな
傘の網の様子も、もともとは色の濃かったやつが成熟して色が薄くなったやつとそっくりで
検鏡しないで区別するのであれば、個体集団として成熟過程を追う必要があります
↓↓↓ こいつ、検鏡したら未熟でした。。。
いろいろ観察してわかって楽しかったヽ(´▽`)/
それもこれも同じ日に本当に遠方まで、あちらこちらに案内していただいて
いろいろな場所で採集したアミガサタケを横に並べて観察できたことに端を発しています
心から感謝しています
もちろん、ふだんから不勉強で技術力不足の自分に発破をかけてくださっている方にも感謝しています
これがすこしでもこれからの菌類観察の役に立ててもらえたら幸いです
ではアミガサタケ・オフの報告、これまでなり。