「すいませーん、遅れましたぁ。」
「おつかれーぃ!」
いつもの稽古場にちょっと遅れて入り、更衣室に素早く入る。仕事の疲れをすべて下ろすように大きなトランクバックの重みをダイレクトに地面に伝える。カーテン越しにスピーカーからの曲が聞こえてくる。
「花の名」だ。
友人の結婚式で幸せそうに二人が踊ってたっけ…。歌詞はじっくり聞いたことはないがいいメロディーだ…なんだろう…気持ちが揺らぐ。温かい気持ちになる。
いつしか僕は違う場所にいた。
ひたすら長い一本道。そこにいたのは僕一人ではない。むしろ全人類がいた。というより、そこは世界のすべてだった。みんな同じ方向に歩いている。何を考えているのだろう…。いや、何も考えていないから歩けるのだろう。
ちょっと路肩に寄って、意外にもこのどこともとれない不思議な世界に落ち着いた心で対応できている。
たまには振り返れってことかな…。
僕の人生はまさにこの道とは違うことを発見してから始まった。僕は多くの人とは違った。よく見れば違うという人はたくさんいるのだが、気がついたときには自分の中で大問題になっていた。
小学校、中学校に上がるにつれて僕はみんなと同じように同じ道を歩けなくなった。いつしかそれは我慢という言葉に変わった。
当然のように歩いている。だから同じように歩け。生まれたところがそこなら、そういう風に歩け。なんで?だってそれが普通だから。
普通ってなんだ?みんなと同じってなんだ?僕はうそつかなきゃいけないのか?
全人類が歩く道。でもその全人類って本当に全員?
さっきよりも路肩からみる風景は多様化していた。息切れして座っている人。周りをずっと伺っている人。後ろを振り返りたいけど、我慢している人。
僕はすべてを理解した。僕の力を使えってことだね。僕の仕事を見せてやろう。
僕は右手をチョークにして、新しく道路を描いた。しかも一本ではなく何本も。
満面の笑みで僕はみんなにこう言った。
「もう我慢しなくていいよ。自分のまま、歩きたい道を歩こう。」
すると、さっきまで無音に近かった世界が一気に慌ただしくなり、無表情の人々はみんな僕に微笑んだ。
これが、僕の仕事。
意識が遠くなり、やっと稽古場の僕に戻れた。
大好きな場所。みんなが個性を出す場所。輝く時間。
「さてと、遅れた分、取り戻して楽しむぞー!」
自分なじんだシューズをはき、トレードマークのTシャツに着替える。色はもちろん、あの色。
「花の名」の曲はちょうどサビの部分だ。
「あなただけに聞こえる歌がある」
「僕だけに歌える歌がある」
(30歳からのハローワーク 赤の章)
「おつかれーぃ!」
いつもの稽古場にちょっと遅れて入り、更衣室に素早く入る。仕事の疲れをすべて下ろすように大きなトランクバックの重みをダイレクトに地面に伝える。カーテン越しにスピーカーからの曲が聞こえてくる。
「花の名」だ。
友人の結婚式で幸せそうに二人が踊ってたっけ…。歌詞はじっくり聞いたことはないがいいメロディーだ…なんだろう…気持ちが揺らぐ。温かい気持ちになる。
いつしか僕は違う場所にいた。
ひたすら長い一本道。そこにいたのは僕一人ではない。むしろ全人類がいた。というより、そこは世界のすべてだった。みんな同じ方向に歩いている。何を考えているのだろう…。いや、何も考えていないから歩けるのだろう。
ちょっと路肩に寄って、意外にもこのどこともとれない不思議な世界に落ち着いた心で対応できている。
たまには振り返れってことかな…。
僕の人生はまさにこの道とは違うことを発見してから始まった。僕は多くの人とは違った。よく見れば違うという人はたくさんいるのだが、気がついたときには自分の中で大問題になっていた。
小学校、中学校に上がるにつれて僕はみんなと同じように同じ道を歩けなくなった。いつしかそれは我慢という言葉に変わった。
当然のように歩いている。だから同じように歩け。生まれたところがそこなら、そういう風に歩け。なんで?だってそれが普通だから。
普通ってなんだ?みんなと同じってなんだ?僕はうそつかなきゃいけないのか?
全人類が歩く道。でもその全人類って本当に全員?
さっきよりも路肩からみる風景は多様化していた。息切れして座っている人。周りをずっと伺っている人。後ろを振り返りたいけど、我慢している人。
僕はすべてを理解した。僕の力を使えってことだね。僕の仕事を見せてやろう。
僕は右手をチョークにして、新しく道路を描いた。しかも一本ではなく何本も。
満面の笑みで僕はみんなにこう言った。
「もう我慢しなくていいよ。自分のまま、歩きたい道を歩こう。」
すると、さっきまで無音に近かった世界が一気に慌ただしくなり、無表情の人々はみんな僕に微笑んだ。
これが、僕の仕事。
意識が遠くなり、やっと稽古場の僕に戻れた。
大好きな場所。みんなが個性を出す場所。輝く時間。
「さてと、遅れた分、取り戻して楽しむぞー!」
自分なじんだシューズをはき、トレードマークのTシャツに着替える。色はもちろん、あの色。
「花の名」の曲はちょうどサビの部分だ。
「あなただけに聞こえる歌がある」
「僕だけに歌える歌がある」
(30歳からのハローワーク 赤の章)
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